開かれた傷口
これは、太一と露子が吉樹の所に来る半日前のことである。
「ということで、今年の年貢は平年並みという結論に至りました。つまり、このまま軍備の拡大を進めると武田家は破産する可能性が出てくるということです」
ため息交じりで内藤昌豊役の九度山あいるが支出の報告をする。太一は耳が痛そうな表情をする。
「第一、他の家臣の皆様からも不満の声がかなり増えているんですよ。『御館様は、我らの事など気にもかけて下さらない』と」
続けざまに耳の痛い情報を伝えるあいる。見ると、彼女は完全に疲れ切っている。
「あ、あいる? お前、寝ているのか? 見るからにやつれているではないか」
山県昌影役の小渕沙恵が身を乗り出して心配する。
「睡眠以上に、人間関係に疲れたようだな。それは私たちにも責任がある。何しろ、この時代の家臣団への対応をすべて押し付けてしまったのだからな」
馬場信春役の京羅美樹が済まなそうになる。
「まあ、それが私の仕事ですので......」
あいるは苦笑いで答える。ただ、やはり見るからに彼女は既に限界を超えた疲れ具合だ。
「......やはり、お前には荷が重かったのかもしれんな」
珍しく、太一までフォローに回る。
「はは、太一様にまで心配されるとは。私もまだまだですね。これでは、茂様に合わせる顔がございません......」
「ちょ、あいる! そのお方の名前を出すのは......」
露子が突如反応をする。どうやら、あいるは禁句を言ってしまったようだ。
「いいんだよ、露子。俺が武田信玄として召喚された時点で、これは強制的に思い出される。あいるが副将の内藤昌豊役ならなおさらな」
「私も、なぜ私が山県昌景なのか恨みを覚えまする。これは、主家の下原家を冒涜するかのような配役設定で......」
沙恵も太一に大きく同情している。いや、太一以上に怒っている。
「この摩訶不思議な現象において、何か仕組まれたとしたらある意味納得がいきますな。そこに私たちの召喚された意味があるとするならば、それは......」
美樹もつられて口を開く。いつもと違い、顔には焦りの表情が浮かんでいる。
「このままでは、終わらない。ということですね」
露子が予言めいた発言をする。そして、その発言は彼女の天性の知性は大抵的を得ているのだ。姉川後の秀介の復活をピタリと当てたように......
「お、お館様ー!!!」
そして、露子の予感に正解を告げるべく、静寂を切り裂いたのは一人の使用人の悲鳴。
「よ、黄泉の国の軍勢が、城を取り囲んでおりまするー!!!」
「はっ!?」
「えっ!?」
『......』
一同は、何が起こったことを理解していない。しかし、彼らにとって最悪の出来事が起こるということは、既に太一は理解していた。
すみません。五人書くとなると思ったより字数が増えてしまいました。次に戦闘シーンを入れたいので、ここで終わりにしました。明日投稿できるよう、頑張ります。
里見レイ




