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使命の槍と宿命の刀  作者: 里見レイ
転戦

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不気味な風

「吉樹、お前に秘密裏に会いたいって奴がいるぞ」


 雪と誠二が対本願寺の準備をしていた頃、日本アルプスを挟んで反対側でも動きがあった。

 遠江(静岡)では、徳川家康役の和田吉樹に榊原康政役の鈴木桜庭丸が知らせを持ってくる。


「桜庭丸、それはいったい誰なんだい?」


 一人で夜の分の枝豆を食べていた吉樹、親愛なる同級生の真剣な表情に尋常ならざる事態だと直感し、トーンを落として尋ねる。


「知っているが、知らない奴ってとこだな。まあ、会えば分かる」


 そう言って、桜庭丸は後ろに目配せする。


「家康様、こちらでございます」


 桜庭丸の指示で、一人の幼子が前に出る。その会いたいもののところに連れて行く係だ。


「桜庭丸。君は行かないのかい?」


「さあ、ここは当主様一人の方がいいと思っただけだが。それに、奴らが来たのを知っているのは俺たちだけ、ここで俺が同席したら他の家臣から妬まれるかもしれないだろ?」


 桜庭丸は、この夜の訪問者を非常に重要だとお考えているということだ。そんな大事な人に、家臣の中で自分だけ会うにはいかないと考えている。


「ここで、僕が許可を出したらどうする?」


「命令なら従う、許可なら辞退する。お前、松平全体を考えた上で命令しろよ」


 桜庭丸は、あくまで松平のことしか考えていない。


「ふっ、君が君自身以外のことを考えるようになるとは......」


 思いもよらぬ彼の変化に、吉樹は思わず笑みを溢した。


「ここが俺の居場所だって言ったのはお前だろ? この場所を守るためなら、そこにいる連中の気持ちも考えることは当たり前じゃないか」


 桜庭丸は真顔で答える。


「なら、なおさら君にも来てもらわないとね。僕一人でみんなの居場所を失うわけにはいかないからさ。特に、君は今や僕の知恵袋なんだし」


 一方の吉樹は、未だに微笑んでいる。


「わーたよ! お前がヘマしない様にちゃんと見張っといてやるから! ほら、さっさと行くぞ」


 桜庭丸は、遂に同行することに承諾した。そして、その人物のいる所にズカズカと歩き出す。


「ふふ。君は本当に自分の力を自覚していないんだね。君はもう、この松平の家でなくてはならない存在だというのにさ......」


 桜庭丸の後ろを追いながら、吉樹はこうつぶやいた。これは、松平の家臣団全員の総意である。


「さて、ここだ」


 吉樹の部屋から歩くこと数分、二人は浜松城(家康の居城)の南に位置する小さめの屋敷に着く。屋敷の扉を桜庭丸が開け、吉樹が先に入った。


「御機嫌よう、松平家康。いや、和田吉樹先輩」


「どうも。初めまして、でしたよね?」


 衣服の汚れた一組の少年少女が肩を並べて座っていた。しかし、少年の目からは恐ろしいぐらいの気迫があった。


「確かに、初めましてだね。ただ、お互いのことは十二分に承知しているんじゃないかな? 武田信玄の下原太一君、高坂昌信の春日部露子さん」


 驚きで若干眉を動かしたが、それ以上の動揺はせずに笑顔で挨拶を返す吉樹。


「早速だけど、君たちがここに来た理由を話してもらえるかな?」


「ええ、和田先輩。今となっては、頼れるのは我が校指折りの天才である貴方しかいませんので」


 唇を噛みながら、太一は話を始めた。

 そう。戦国に吹いた不気味な風は、召喚された者全員に試練を与えるのだった。

えっと、太一たちに何があったのかは次に書きます。何というか、そろそろ話しのペース上げないとなーて思いまして。松平と武田をまとめました。とにかく、地道に進めます。

里見レイ

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