何度目かの再出陣
さて、ここは所戻って小谷城。雑賀衆の謎の撤退により窮地を切り抜けた浅井軍だったが、城の中は今まで以上に修羅場となっていた。
「長政様! どうか無理をなさらないでください! 今の殿のお体では到底......」
「口が動くのなら問題はない! 輿に乗れば指示だって出せるし、我はまだ手足も動く。動くうちにまず雑賀を滅ぼし、その後織田を今度こそ滅ぼす! このままじゃ、民や家臣がどんどん死んでいっちまうからな!」
秀介を引き留めようとする高虎に対し、当の秀介は完全に戦支度を整えて廊下を歩いている。ただし、顔色はかなり悪い。
「奥方様の話によると、殿は雑賀孫一により呪いの鉄砲弾を受けたそうではないですか! その呪いの効果が切れていないにも関わらず雑賀と再戦など、自滅行為に他なりませんぞ!」
「早く雑賀をつぶすことで我の呪いも解ける! なら、積極策が妥当であろう! 内政の為の人員も割り振っている訳なのだぞ! 作戦に抜かりはないはずだ!」
顔色の悪さを吹き飛ばすような気迫で高虎の止めを押し切ろうとする秀介。
「それでもです!」
「なぜだ?」
「誰もがあなたの身を案じているからですよ!!!」
「......何故だ? 当主が国と民を守るために行動し、大名が天下に覇を唱える為に戦を起こすことの何がいけない? まさか、この期に及んで我が他大名と戦を起こすことに......」
「お話を聞いてください! 我々はあなた様、浅井長政様が度々の戦で体調を崩されることを心配しておるのです! 少しはご自分のことも大事にされてください!」
「我のことなど二の次だ! 今戦を起こし、雑賀を滅ぼした暁に民を安心させられるかどうか、そこしか大事ではないわ! 答えよ! 藤堂高虎、雑賀を滅ぼして得られる利益があるのか否かを!!」
「そ、それは......」
秀介のあまりにもの気迫に、たじろいてしまう高虎。肝が座った高虎が少し気圧されるほどまでに、今の秀介は怖かった。
「敵は滅ぼす、それだけだ。三時後に紀伊へ出陣を開始する。いいな?」
秀介は最後にそう締めくくった後、自分の部屋へと戻っていった。
そして、ここは秀介の部屋。彼の向かいには少年と少女が一人ずつ座っている。叶と三郎だ。
「......イメージは、出来る。若干の賭けではあるがな。カギを握っているのはお前だ、黒木」
「......僕が、都合よくバーサーカーになれると思っているんですか? 無理ですよ、先輩」
いつになく不満そうな声で秀介に反論する三郎。
「そうですよ。無謀な戦術を練るなんて秀介様らしくないです」
叶も横で同意する。
「お前ら、あのカラスの話を覚えているか? あいつは俺たちの動きを観察することが務めでチャンスがあったのに殺そうとしなかった。なぜか? 簡単だ。俺たち実験対象者にできる限り残ってもらい、より多くのデータを搾取するためだ。つまり、奴は俺たちがいくら攻撃をしても一騎打ちなら殺そうとしないはずだ」
「それだからって、私たち三人だけはさすがに無理があるのでは......」
「いや、浅井で実験対象者なのは俺たちだけ。他の者を連れて行ったら、奴はそいつを真っ先に殺す。時間を置いて奴らが本格的に浅井攻めを始めたら北近江は完全に地獄と化すだろう。その前に、民と他の家臣に被害が出ないうちに、俺たちでカラスをこの戦国から追い出す。手段なんて、選んでいる余裕などない」
「......」
「......」
「もはや、この状況ではお前らのみが頼りだ。いち早く天下を統一し、このふざけた実験を終わらせてやる。家臣や民をゲームのNPCと考えてはいけない。彼らが苦しむ前に、俺はこの戦国を地獄の折から開放する......」
秀介の目はいつになく冷酷で、いつになく狂気じみていた。この相反する二つの精神状態は、秀介を戦国の覇王へと押し上げようとしている。
えっと、まだ本命は出てきません。もう少ししたらカットを変えて、最終決戦用の動きを出したいですね。
里見レイ




