謎の魔力
「お濃!? こんな時間にどうしたんだ?」
リョウはすぐに返事をするが、若干声が上ずっている。
「そろそろ、あなた様の声が聞きたくなりまして」
「......それだけか?」
「あと、信長様の今後の戦について一言申し上げたいことがございます」
「今日はもう遅いぞ。明日時間があれば聞くでいいか?」
リョウは憂鬱な声を襖の向こうに投げかける。
「いいえ、今夜だけはあなた様と顔を突き合わせてお話がしとうございます」
「......少しだけだぞ」
「失礼いたします」
リョウが渋々ながらも許可を出したので、すぐに部屋に濃姫は入って来る。
「......ふふふ、いつ見ても素敵なお方ですね。信長様」
「お世辞はいらない。要件だけ話してくれ」
「これは、本気なんですけどねえ。ですが、信長様の為に早速話させていただきます。此度の長曾我部との戦いにおいて、私は有益な情報を持っております」
「......ほう?」
リョウは意外そうに眉を少しだけ動かす。てっきり、単純に主戦論を唱えられると思ったからだ。
「長曾我部家当主の元親は......二刀流剣士です」
「......二刀流?」
「はい。刀を二つ同時に操りながら......」
「いや! そうじゃなくて!!」
リョウは大声で濃姫の説明を遮る。
「ふふ。あなた様が私のことで熱くなるのは、これが初めてですね」
「あ、あのさ。もっと軍事に関連した情報はないの? 軍団同士で戦うわけだから、元親本人の戦闘スタイルを言われても......て。あっ」
カタカナを使ってしまい、思わず動揺してしまうリョウ。しかし、濃姫はさらに微笑んで
「いえいえ、この戦国では一騎打ちで全てが決まるのですよ。あなた様も、既に体験済みだと思いますが。 ねえ、成川リョウ様? 私の追い求めたお方......」
と言葉を続ける。彼女の笑みには謎めいた妖艶さが滲み出る。
「お、濃?」
「私のここでの名前はヒバリ。あなた様をこの実験の勝者へと導く、永久の伴侶でございます」
「ど、どういうことなの? 永遠の伴侶? っていうか、君は僕たちの時代の人間、ではなくてそのまた先の......」
「そう、私はあなた様のさらに百十年未来からやって来ました。そう。あなたを時を超えて手に入れるために......」
そう言って濃姫、いやヒバリはリョウの頬に手をかける。
「少し、お休みください。大丈夫。次お目覚めになられた時に貴方が目にするのは遥かに幸せになったリョウ様の将来ですので......」
「ひ、ヒバリ......」
天才である彼をはるかに凌駕する情報と、今までに味わったことの無い不思議な力により、リョウは五里霧中のまま眠りに落ちることとなった。
えっと。この濃姫、つまりヒバリは伏線を完全に回収されるのがこの「使槍」以降のシリーズ、もしかしたら最終章まで引きずると思われます。
ではなぜ、ここでそのシーンを書いたかと言いますと、リョウに一度出番をお休みしていただきたかったからです。歩と優姫が織田家のメインになりますので、そこのところ宜しくお願い致します。
後でリョウにも出番はありますので、そこはご安心ください。それでは。
里見レイ




