利己的な魔法
「あ、あなた。秀介様に何をしたの!?」
叶は珍しく怒りを面に出してカラスに詰め寄る。
「まあ、一種の呪いだ。慢性的な疲労と突発的に発生する激痛、そして主要臓器の再生。これらが奴に襲い掛かることで死ぬことができずにずっと苦しみ続けることになる」
「そこまでして、秀介様を苦しめる理由は?」
「この男は戦国で他の連中とは違うメンタリティーを持っている。そして、それは負の感情により力へと変わる。面白い素材だと思うけどな」
「う......」
もはや問いただすまでもなく叶はカラスにこの上ない憎悪を向けている。
「まあ、お前がいるからこそではあるがな。お前の守るべき者を利己的に助ける魔法、実験魔法登録名『偏愛する女神』は井田秀介本人を助けはする。ただし、奴が守ろうとする他の者を躊躇なく殺していくのだからな」
「な、なんですって!?」
「そう。坂本での戦いでお前の兄と子飼いが強制的に入れ替わったあの魔法、それはお前が兄を守ろうとしたために発動されたのだよ。兄だけを救おうとしたからな」
「あれは、必然的に起きた出来事だった......?」
顔を凍り付かせる叶。これは、叶が自分の意志でリョウを助けて発を殺したことを意味する。
「さて、俺の仕事はあんたら二人を精神的に苦しめることのみ。さっさと撤退しますよ」
カラスは若干疲れた顔をして秀介と叶に背を向ける。
「ま、せいぜい死なずにがんばりなさいな。お前らは本当にいいサンプルなんだよ。人生観を変えないように自分の道を進みなされ」
こうして、謎の実験組織の人間カラスは森の奥へと消えていった。
「ごきげんよう、カラス。首尾はいかがかしら?」
「ったく、奴らと話し終えてすぐに通信とは。せっかちだなヒバリはよ」
「あら、だってこちらの軍備を進める目安になるのだもの。状況は、早めに確認しておくべきでしょ? それに、誰のおかげでこの密約が成功したと思っているのかしら?」
「まあ、これで下手にうちは滅ぼされない訳だからな。織田か浅井が全力で攻めてこられちゃ雑賀は速攻で敗北なわけだしよ」
「安心して。織田と雑賀の密約は万全よ。私が家老と執り行っているのだもの」
「へいへい。感謝してますよ」
面倒くさい表情で通信の相手に受け答えするカラス。
「じゃ、そっちにくさびを打ち込むのは任せたからな。俺はのんびり戦わせてもらうぞ」
「ええ。そのように、ね」
こうして、通信は切れた。
「ふう。相変わらず裏の読めねえ奴だな、あの女は......」
戦闘時よりも疲れた表情のするカラス。顔の見えない通信で助かったと安堵しているのだった。
どうも、叶もなかなか苦しみます。秀介と叶はこの作品の最後まで苦しみますね。一応シリーズモノを考えているので、他の作品、私の考えでは三作品目くらいまでは続きますね。
まあ、気長にやっていきます。
里見レイ




