北から南
意地ですね。
「父上!」
小谷の城下。全速力で駆け寄る騎馬たちの先頭にいる秀介は自分の帰還を前当主に告げる。
「長政、よく戻ったな。既に包囲網の大名方はお主の伝言通り各領地に戻られたぞ」
「そうですか。良かった......」
一瞬安堵した表情をする秀介。
「ったく、お前もなかなかのお人好しなのかもな。さて、雑賀の連中だが、この城の南方で我らが手勢とぶつかっている。急ぎ応援に行ってくれ」
「畏まりました。父上の補佐をするために高虎は城に残します」
「そうしてもらえると助かる。なにせ、避難してきた民どものせいで未だ城下の混乱が収まらぬからな」
「では、私は早速!」
秀介は手綱を引っ張り、南へと駆け出していく。
「殿、私も!」
彼の隣にいた叶は、秀介の後をすぐに追いかける。満腹も、叶の馬に乗っている。
「父上、茶々子も! ほら、行きますよ直経殿!」
久政の後ろに隠れていたのだろうか、彼の後ろから茶々子が飛び出して三郎の馬に乗る。
「は、はいっ!」
茶々子に言われるがままになった三郎は、大慌てで先行する二人を追うこととなった。
「......頼んだぞ」
「大丈夫ですよ。長政様はお強い方ですから」
久政のつぶやきに返事をしたのは留守番の高虎だ。
「まあ、無理して欲しくないとは思いますけど」
「......」
高虎が追加で言ったこの言葉は、若干久政の表情を凍り付かせた。
「孫市様。浅井の本軍がまもなく到着するそうです」
「うい。皆に伝えとけ」
酒を片手に伝令に指示を出すこちらの青年。言わずもがな、雑賀衆首領、雑賀孫一である。
「なーに。恐れずとも俺たちは勝つ。今まで通り、浅井を火の海に叩きこめばいいんだよ」
「ははっ、流石は孫市様!」
伝令はありきたりの誉め言葉を投げかけて去っていった。
「ったく。次期総統殿も洒落たことをしたもんだ。やくざのボスを俺に任せるなんてよ」
伝令役が視界から消えた後、愚痴のような言葉を漏らす孫市。
「ま、いいか。この実験の成功の後、ボーナスたっぷり出るわけだし」
そう言って、孫市は空を仰ぐ。
「神代より王に仕える黒き鳥。それが俺、カラスなのさ」
上空を飛び交う同胞たちを眺めながら、男は悪魔の笑みをこぼした。
はい、新キャラを入れました。この話の大きな裏を知っている人物の一人になります。彼らと秀介は戦うことになるんですが、滅茶苦茶長くなりそうです。まあ、頑張ります。
里見レイ




