亀裂際立つ出陣準備
「長政様! 私にも同行させてください!!!」
自室で満腹の手伝いで出陣支度をする秀介に、叶がお願いをする。
「いかん! たかが物の怪にお主の応援など兵は必要としておらんからな!」
「あなた様のお役に立ちたいのです!」
「それこそ不要だ! お主は城で民に声をかけ安心させていろ!!!」
前回と違い、秀介は頑なに断り続ける。加えて、叶と目を合わせようとしない。
「秀介様、私のことを恨むのは当然です。しかし、それでも私はあなたのお役に立ちたい! 捨石でも鉄砲玉としてでもいいから私を使って頂きたいのです! そうでなければ、私は......」
うつむく叶。意志は強いが、やはり引け目があるようだ。
「高虎! 妻を部屋まで下がらせろ。戦の足かせはないに越したことはないからな!」
叶を無視して追い払おうとする秀介。
「長政様、本当によろしいのですか?」
そばに控えていた高虎が再度確認する。
「いい。妻には織田に返していないだけ良しと思ってもらいたいな。まあ、今の役目は小姓の世話役か」
「父上! 発は父上と母上が幸せになることを願って死んだのですよね!? ならば、母上に冷たくするのは発の遺言を父上が踏みつけたということになりますぞ!!!」
秀介の鎧を着け終わった満腹が叫ぶ。普段はこのような会話に横槍を入れることはないが、今回ばかりは見るに耐えなかったのだろう。
「満腹。我はもうお前の父ではない。その資格などないのだからな。それに、我らにはお前の分からぬ複雑な事情すらある。故に、お前は死にたくなければ故郷に帰っても良いのだぞ」
「さ、されど......」
悲しげな表情をする秀介に、満腹は勢いを失う。
「さてと、支度は整ったな。それでは、満腹、高虎、行くとしよう。得体の知れない物の怪が相手ゆえ、織田との戦同様に気を引き締めるように」
秀介は話を切り上げ出発の合図をする。
「はい......」
「畏まりました......」
返事をする二人。
そして、秀介は叶の横をすり抜けて部屋の外へと出る。
「......長政、気をつけてな」
部屋の外にいたのは、長政の父久政。普段の厳格な顔ではなく、やや不安げな表情だ。
「父上、言ってまいります」
深々と頭を下げる秀介。言葉に抑揚はない。
その後、普段どおりの足取りで城に外へと向かった。
「秀介、様......」
彼の背中を穴が開くほど眺める叶。
一度開いた溝は、そう簡単には埋まらない。
次こそ物の怪出します。どんな戦闘になるかは不明ですけど。
里見レイ




