松野晴彦の計画
「何かお伝えすることはありますか?」
「......ないね。彼女には今まで通り大人しくしていてもらいたいよ」
ところ戻って、信長の私室。竜牙の姿は既になく、リョウと晴彦が会話をしている。
「別に、伝令役なんて定期的にやるものではないよ。まあ、様子を伝えてくれるのは助かるけど」
先ほどと若干表情が違うリョウ。笑顔ではないということに違いはない。しかし、真剣というより面倒なオーラを出しているのだ。
「あの人の考えていることは全くもって理解できない。性格と方針があまりにも噛み合っていないんだ。じわじわと背筋から締め付けられるような息苦しさを感じる。だから、君も必要以上に任務をこなそうとしないで距離を取ったほうがいいよ」
他にないほどの憂鬱さを醸すリョウ。
「ご安心を。身の程はわきまえていますので」
対照的に、晴彦はスマイル全開だ。
「まあ、君のおかげで僕が不快にならなくて済んでいる。感謝するよ、松野」
「はい! 先輩に褒められて光栄でーす!! それじゃ、行ってきマース!!!」
晴彦は、ルンルン気分で部屋を出る。それを見届け、ため息をつくリョウ。
「彼女のことも、松野のこともさっぱり分からないな。まあ、今まで僕の周りが恵まれていただけか」
リョウはそう独り言を漏らし、愛用の刀の手入れを始める。親友が戻ってくるまでの時間潰しだ。
「奥方様、光秀にございます」
「待っていましたよ。お入りください」
ここはリョウの部屋からほぼ対角線上にある大きな個室。晴彦は周囲に気を配りながら入っていく。
「あのお方からの伝言は?」
「今まで通り、ここで安静にしていただきたいとのことです」
「そう、相変わらず冷たいのですね」
奥方と呼ばれた少女は微笑みを絶やさず感想を言う。その微笑みは無機質であり儚げだ。
「それで、例の案件はどうなってますか?」
少女はここに来て話題を切り替える。
「おおむね了承と返事が来ました。細かな領土配分については事が済んでから話し合いたいそうです」
「そうですね。実力行使で騙し討つ機会が両方にあるということですか」
「おそらく。彼らは自分たちの強さを過信しているようです。使者たちによると、鉄砲の質はこちらの織田家の方が上だそうです。自分も一度視察に行って確かめておきたいと思います」
リョウたちと話していたときと違い、打って変わった真剣な目をして意見する晴彦。
「信長様には、内緒のままですよね?」
「もちろん。あの人に話をすればたちまち反対されてしまいますからね。自分と奥方様の秘密です」
「良かったわ。さすがね」
少女の微笑みが強くなる。若干、華やかさが増したと言うべきだろう。
「そうそう。作戦成功の暁には、あの約束、守っていただけますね?」
「ええ。それが奥方様のお望みですから......」
少女の問いに、晴彦は今までにない笑顔で答える。
二人の心理は、誰にも読めない。
はい、新キャラ二人がメインの話になりました。織田がノホホンと進むわけないですよね! はい、主人公の秀介と同レベルの修羅場が待っています。
楽しみの方は、ぜひお楽しみに!
里見レイ




