策士と戦士と狂戦士
華香は、目を開いたまま絶望の表情をしていた。自慢のポニーテールも艶が失われ、干し草のように枯れた肌となっている。
「どういう、ことだ......」
三郎、気を失いそうになるのを何とか堪え、陸に問いただす。
「見ての通りだ。俺が戸谷を助けに小谷まで飛んで行ったら、自分の槍で自害していたんだよ」
淡々と、残酷な事実を告げる陸。しかし、彼の眼は少しうれしそうだ。
「あ、そうそう。お前にこんな書置きをしてたぞ」
一枚の紙を三郎に投げる陸。宙に浮いた紙を捕まえ、恐る恐る内容に目を落とす三郎。
そこには、いびつな字で
『お前に槍を向けることも、お前と槍を振るうこともあたしにはできない。ごめん。せめてあたしを』
と書いてあった。おそらく、遺書なのだろう。
「......」
何も言うことができない三郎。自分が華香を追い詰めてしまったのかと罪悪感を覚える。
「ま、敵は殺すのが浅井のやり方だろ?最終的にこいつは死んでたんだし、気にすることないさ」
軽蔑な口調で追撃をかける陸。三郎の動揺を楽しんでいるようだ。
「黒木君......」
歩、さすがに心配になり三郎を気遣う。
「速水。いくら何でも強引じゃねえか?」
竜牙、陸に非難の言葉をかける。一騎打ちの最中に持ってくる話ではないと言いたいのだ。
「石山、勝負はやるかやられるか。死にたくなければやるしかないんだぞ」
陸、声のトーンを落として反論。彼は秀介たち浅井勢より戦国に、いや殺し合いの世界に染まっているのだ。
「雷光寺、石山。三対一で叩き潰すぞ! 奴さえ殺せば井田は両腕を失ったようなもの。浅井との勝負に一気にけりがつくからな」
首元の具合を確認した後、包丁を構える陸。自身の手で三郎の息の根を止める気なのだろう。
「......断る」
竜牙、首を横に振る。彼はあくまで、一騎打ちの末に三郎を討ち取りたいのだ。
「俺も反対だね。黒木君は武将として十分に価値がある。殺すなんてもったいないよ」
歩はもとより殺す気などないのだ。浅井を犠牲少な目で降伏させるのが目的なのだから。
「ふう。お前ら甘いんだから」
包丁をクルクル回してため息をつく陸。一人でも戦う気満々らしい。
「黒木三郎。お前の首、もらい受けるぞ」
殺気を全身から放出し、宣戦布告をする陸。
「お前を、絶対に、許さない......」
その返事として、殺気ではなく狂気を出す三郎。恐怖より怒りが完全に勝っている。
「アアアアアアアアアアアア......!!!」
狂戦士、再び。この地が血に染まることを回避することは、不可能であろう。
四人の会話は、書いてて疲れますね。立場や考えが全員バラバラなものですから。
里見レイ




