坂本決戦、開幕
坂本の南、宇佐山城の北に位置するこの平野にて、浅井軍およそ三万九千と織田軍三万八千が対峙している。
ずいぶん前から陣を張っている浅井軍に対し、織田軍はつい先ほど到着したばかりだ。
「満腹、合図のほら貝を吹け!!」
「はい、父上!!」
ブオーーーーーー!!!
起用にほら貝を吹く満腹。高虎に教えられてから数日で習得した技だ。
「全軍、突撃!!!」
槍を構え、一気に駆け出す秀介。各部隊もそれに続く。
織田軍は迎撃態勢をすでにとっており、槍を上下に構えている。
「弓隊! 槍衾を崩せ!!」
秀介の指示に従い、織田の槍隊に矢の雨が降り注ぐ。
浅井の弓隊は、ついこの間増強された部隊、大半を義勇兵が占めている。
放てばいいだけという手軽さから、素人でもそれなりに扱うことができ、設備の金もかかりにくいことが利点である。
秀介がすぐに義勇兵を動員できたのも、「槍より弓」という古い戦国の風習を適応したためである。
「それ、一気に崩しにかかれ!!!」
織田の槍隊が動揺したところで、浅井は槍と騎馬で攻撃を開始。彼らは、根っからの足軽衆であり、戦慣れしている。
近接戦では、やはり経験値がものをいうのだ。
浅井の猛攻に、織田の第一陣はあっさりと崩れる。まあ、指揮官が有力家臣ではないのだろう。
「よーし、一気に叩き潰せー!!!」
そう言って、部隊に突撃を再び命令する秀介。その後、
「速水! いるのは分かっているんだ!! さっさと出てこい!!!」
と叫ぶ。
「でまかせかどうか分からないけど、仕留め損ねた獲物はちゃんと狩らないとね」
秀介の目の前に霧が現れ、消えたと思えばそこにいるのは包丁を持った少年。
他でもない、竹中半兵衛役の速水陸である。
周りが喧噪の中、二人の間には重々しい沈黙が流れていた......
「始まったようね」
浅井の陣の後方部で、叶は喧騒を確認する。
「発、母と一緒に行きますか?」
満腹と茶々子は秀介のもとにいるが、この次女だけは叶のそばを離れようとしなかった。
「行く」
間を置かずに答える発。そう言いながらいいながらも、手元を動かし続けている。
「じゃあ、確かめに行きましょう。お兄ちゃんがいるかどうか......」
叶はこっそりと陣を抜け出す。そばに高虎がいないから楽勝である。
彼女の戦いは、今始まった。
「前田利家ー! この遠藤直経と勝負しろー!!」
精一杯の声を出して戦場を馬で駆け巡る三郎。彼をこの場で倒さなければ、浅井軍に甚大な被害が出ることになるだろう。
「はっはっは! 槍の又左、いざ参る!!」
三郎の前に悠々と現れる超長槍使い、前田利家役の石山竜牙。その殺気は前回以上だ。
「狂戦士! ここがお前の墓場だ! 念仏を唱え果理奈への貢ぎ物を用意しておくのだな!!」
妹のことを口にする竜牙。すでに槍の穂先からは熱気を感じる。
「......」
三郎、静かに精神を集中させる。彼の演技力がここで確かめられるのだ。
姉川での一騎打ちが、今、再演されようとしている。
さあ、坂本決戦、開幕だ。
ようやく始まりました、坂本決戦。丁寧に書いていこうと思います。
里見レイ




