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使命の槍と宿命の刀  作者: 里見レイ
坂本

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いよいよ進軍

お待たせしました。ようやく出陣です。

 こうして、ようやく朝ご飯にありつけた秀介。予想通りのおにぎりである。

 まあ、普通、戦の前に赤飯とかを食べる者などいないだろうが。


「さて、ようやく出陣かあ、長かった......」


 朝食後、鎧を身に着けながら一息漏らす秀介。


「はて、まだ朝ですぞ。父上」


 戦支度を手伝いながら首をかしげる満腹。その思考回路は、八歳とは思えない。


「まあ、昨日から色々あったのでな。人間関係というものは、戦以上に面倒なのだよ」


 まるで世代交代の波に飲み込まれた歴戦の老将みたいだが、秀介はまだ十七歳である。


「戦前にため息とは不吉ですぞ」


 満腹、彼は秀介の守役か何かだろうか。妙に達観している。


「へいへい」


 もう、何も言えない秀介だった。



 浅井軍が宇佐山城へと進軍を開始したのは、現代でいうところの朝六時。

 秀介は実のところ三時に起きたので、家臣たち大急ぎで準備を整えたのだ。


「宇佐山城への奇襲は可能か?」


 秀介、近くにいる高虎に問う。結局、高虎は武将になっても、行軍時は前のように秀介の傍についている。


「この進軍速度だと、おそらく織田も手勢を整えて迎え撃ってくるでしょう」


 高虎は、秀介以上に戦慣れしているので、非常に頼りになる。


「どのへんになりそうか?」


「宇佐山城の北にある平野あたりかと思われます」


「平野はどこまで北に延びてる?」


「三里ほどです」


「なるほどなあ......」


 考え込む秀介。力ずくで織田と戦うつもりはないのだ。


「よし、平野のかなり北側に陣を取れ! 万全な状態で織田を迎撃する」


「よき策かと」


 頭を下げる高虎。戦とは、待っている方が楽なのである。


「満腹! 皆に今のことを伝えよ!!」


「かしこまりました父上!!!」


 秀介の馬の後ろに乗っていた満腹がピョンと飛び降り、走っていく。


「父上、茶々子は何をすればよいですか?」


 それを見て、秀介の馬の前に乗っている茶々子が尋ねる。彼女は通常叶のところにいるのだが、今日は秀介にべったりである。


「うーん。今のところないな」


 茶々子の頭をなでながら答える秀介。正直、奇襲されたら彼女を守り切れる自信がないので、叶のところに戻ってほしいと考えている。


「せんぱ、じゃなくて長政様。いよいよですね」


 いつも秀介の傍にいる男、三郎がいきなり話しかけてくる。


「なかや、員昌が心配か?」


 一手先を読んで返事する秀介。三郎が意味もなく話しかけてくるのは、心配事があるからと相場が決まっているのだ。そしてそれは、行方不明の中山優姫のことだろう。


「ま、まあ。それはほぼ諦めてますけど」


 俯く三郎。幼馴染以外に心配事があるのかと少し驚く秀介。


「んじゃ、あの人質か? やれやれ、お前もお人よしなんだから」


 現在小谷に捕らえている柴田勝家役の少女、戸谷華香。三郎は、毎日説得工作をしに行っていた。優姫でなければ、おそらくそれだろう。


「この戦が終われば彼女も処刑だろうな。ま、織田が滅びれば話は変わるかもしれないが」


 あくまでも、淡々としている秀介。彼女が後輩の親友だとしても情けをかけるつもりはない。


「どうなんでしょうね......」


 一方、表情の暗い三郎。幼馴染の親友以外の捉え方が頭を支配しつつあるのだが、彼の理性はそれを認めようとしていない。


 さて、いよいよ始まる。後に「坂本決戦」と呼ばれる超大規模戦闘が......

なんか、三郎の登場がすごく久々な気がします。優姫とか華香とか、皆さんには忘れ去られているのかなあと思い、解説文っぽくしました。

里見レイ

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