朝の心理戦
翌朝、いつものように早く起きることのできた秀介。いつものように夜着から平服に着替える。
同じ部屋に女性がいることなどお構いなし、寝ていれば別に問題ないのである。
「さてと、朝食はおにぎりかな?」
そう呟きながら、呑気に槍の手入れを始める秀介。
昨日は子供の相手や作戦会議などで時間がなかったため、戦当日にしなければいけなくなった。
それから、約十分後。
「よし、腕慣らししておくか!」
ブンブン!
武将たるもの日ごろの鍛錬を怠るべからず。意識不明だった時期を除き、毎日彼は槍を振っていた。
元々の運動神経は良くない秀介ではあるが、こうしているうちに一般武将並みには槍を扱えるようになったのだ。
「うむ、腹減った。高虎! 朝食はまだか? ってあ、しまった。あいつもう武将なんだった」
いつもの癖で、高虎に朝食をねだる秀介だったが、既に彼はそういう雑用係ではなかった。
「えーと、満腹! 朝食はあるか?」
代わりに側近に就任した幼子、満腹を呼ぶが返事なし。
「今、何時なんだ?」
秀介、もしかしたら、とんでもなく早い時間に起きてしまったのかと心配になる。
現在は、八月。朝日は早いので、日の光で目が覚めたからって活動時間とは限らない。
「誰かが起こしに来るまで、寝るか」
そう考え、再び布団に入る秀介。一応、目をつぶってみるが、ちっとも眠れない。
(どうしようかな......)
と、うだうだ考えているそのとき。
「うーん、朝かしら......」
部屋の中央で、女の声が聞こえる。妻役の叶が目を覚ましたのだろう。
「さて、着替えないとってあ! 秀介様がいるんだっけ!」
叶、秀介の存在を今頃認識する。
(人が狸寝入りして目をつぶっている間にさっさと着替えろ!)
一体、誰が「早起きは三文の徳」と言ったのだろうか。今の秀介には損でしかない。
下手なことして叶の怒りを買ってしまっては、今後の人間関係に大きな支障が出るのだ。
「秀介様、寝ているかしら?」
そのような言葉とともに、叶の近寄る気配を感じる秀介。
(女の勘か。めんどくせえ......)
秀介、これなら、外を出歩いとけばよかったと後悔する。戦の前だというのに、精神がすり減ってしまうではないか。
(ど、どうすればいい? 強引に寝るか? 今起きたふりをするか? それともいっそのこと正直にすでに起きていたことを話してしゃざいするべきなのだろうか。いやしかし......)
「ふふ、着替え終わりましたよ。秀介様」
秀介が色々と頭の中で国際会議をしている間に、叶がそう宣言する。
(どうする、俺ー!?)
国際会議、再び。
結局、そこからさらに待つこと数分。
「うう、おはよう......」
秀介、精いっぱいの演技で今起きたばかりだと見せかける。しかし。
「秀介様、ずっと起きていらっしゃいましたよね? 着替えが完了してますもん」
叶にあっさり見破られる。
「あ、えーと。下心は一切なくてだな、仮眠を取ろうとしても寝れなくて......」
秀介、精いっぱいの弁明。ただでさえ、よく分からない関係なのだ、こじらせるわけにはいかない。
「分かってますよ。あなたの気持ちくらい」
そっと微笑む叶。今までにない、優しい笑顔だ。
「......怒ってる?」
営業スマイルだと思い、確認する秀介。
「ふう、秀介様は......」
なぜか呆れたようなため息をつく叶。そのまま、ふすまに手をかける。
「行きますよ。朝ごはん食べに行きましょう」
「あ、ああ」
よく分からないが、秀介もそれに従い立ち上がる。
「あ、ちなみに」
叶、まだ言いたいことがあるらしい。
「あなたが可愛いことを知っているのは、私だけだからですからね」
「? かわいい......」
秀介、首をかしげる。
本当に、叶については分からないことだらけな秀介だった。
次こそ、出陣します!! なんか、ネタ思いついて書きまくってしまいました。些細な事より二人の
関係を表現できないかなあと思ったものでして。不器用以上に、秀介は自分を信じていないんですよ、はい。
里見レイ




