とある一夜の駆け引きの話
少し、毛色変わるかもしれません。
戦国時代に、夜更かしという言葉はほとんどない。灯りにお金がとてもかかるし、朝が午前四時くらいから始まるからだ。
そういうことで、日が沈んで間もなく、秀介は布団に入った。
いつもなら、そのまま爆睡なのだが、今回ばかりはそうはいかない。なぜなら
「起きてますか、秀介様?」
「ああ、まだな......」
秀介より右に一メートルのところで女子が寝ている、厳密にいうと寝ようとしているからである。
「年齢=恋人いない歴」の秀介にとって、この状況は、戦の最中より緊張する。思えば、夫婦として一カ月少々過ごしたわけだが、今までこのようなことは無かったのだ。
「......秀介様、起きてますか?」
「ああ」
一体、このやり取りを何往復したのだろう。これでは、いつまでたっても寝付けないではないか。
明日は織田との大規模戦闘の日である。ここで大将が寝不足というわけにはいかない。
秀介は必死に対策を練り上げ、ついに根本的なことを思い出した。
「仕方ないな、ってか元からこうすれば良かった」
ここで、彼はある決断をする。
突然、むくっと起き上がる秀介。一度、布団からはい出る。
「しゅ、秀介様!!?」
大きく動揺する叶。まあ、無理もない。二人とも、年頃なのだから。
「よっこいせ!」
秀介、そのまま叶に覆いかぶさる......のではなく自分の布団をずらし始める。
ズズズズズズ......
部屋の隅っこに布団を動かし、
「それじゃ、おやすみ」
と再び布団に潜り込む。
元々、二人の布団が隣り合わせだったのは、勝手に高虎が設置したからである。それが原因で眠れないのなら、布団を離せばいいだけなのだ。
「あ、えーと......」
叶、なんと言えばいいのかわからない。まあ、「変なことされると思った」というわけではないが、「心拍数が上がった」なんて言えないだろう。
「しゅ、秀介様?」
叶、小声ながらもまた秀介に声をかける。
「......」
返事は、ない。
「もう少し、近くで」
今度は、叶が布団からはい出る。
「秀介様?」
また声をかける。返事なし。
「狸寝入りじゃない、よね?」
一人の女性として、警戒心をまだ弱めない叶。さらに近寄り、先ほどより音量を上げる。
「秀介様ー?」
返事は、全く来ない。
「ならば、寝顔、また見ようかな......」
そう呟き、大胆に秀介の顔を覗き込む叶。
「......やっぱり、かわいい」
そう言って、にんまりする叶。
以前、見たときと、まんま変わらない寝顔に満足する。
「私も寝ーよお」
こうして、叶は布団に戻る。そんなことを、秀介は知る由もなかった。本当に、即爆睡したのである。
なんと申しましょうか、甘くない甘さを出したつもりです。不器用や鈍感というより、理性的な思考ゆえに、秀介は叶を微妙に振り回します。ま、不器用なのは確かですけど。
里見レイ




