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使命の槍と宿命の刀  作者: 里見レイ
心理

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諸刃の密談

久々の叶さんです。

・前回までのあらすじ

秀介はついに昏睡状態から目を覚ました。高虎に家中での方針を命令した後、妻の市(叶)を秘密裏に呼び出す。

「長政様、市でございます......」


「入れ......」


 市は辺りを見渡し、誰もいないことを確認してから、さっと秀介の部屋に入る。まるで愛人の動作だが、二人は形の上ではちゃんとした夫婦である。


「お目覚めになられたのですね。それはよかったです」


 作法に則った礼をする市。

 彼女の本名は成川叶というが、秀介にはまだ明かしていない。そのため、浅井長政の妻、お市の方として振舞っている。


「お前のおかげらしいな。高虎から聞いた。礼を言う」


 秀介は、一応彼女に本名を明かしているが、以前の出来事より彼女が敵になるかもしれないと考え、あくまで他人行儀。


「して、私にこんな秘密を知らせてまでここにお呼びになった理由とは?」


 本題を切り出す市。

 秀介は今のところ、姉川で死んだことになっている。この超極秘事項を知っているのは、当主代理をしている長政の父の久政、家老衆の「海赤雨の三将」、側近の高虎、そして市だけである。

 そして、市、即ち叶は秀介が自分を危険視していることを知っている。なぜこのような事実を伝えてまで、また平行線の話をしなければならないのかが分からない。


「ああ、それはだな......」


 秀介、ゆっくりと口を開く。


「お前、魔法使えるのか?」



「高虎から聞きましたよね? あれは『南蛮医術』だって」


「俺も現代人だ。この時代にそんなのあるはずがない」


 少しの間をおいて、問答を再開する二人。さっきより互いの気迫が激しくなっている。


「魔法のほうがありえないのでは?」


「俺が殺されかけたのは竹中半兵衛によるテレポート。信じがたいが、この時代に魔法は存在する」


「私がどんな魔法を使ったのです?」


「治癒魔法。少なくとも俺にはつかっただろ?」


「その根拠は?」


「高虎だ。彼はお前が一瞬で俺の傷を癒したことを見ている」


「根拠としては、薄くありません?」


「確かにな。だからここに呼んだ。確かめたかったからな」


「いったい何を確かめるのです?」


 一問即答の会話が続く。秀介は、もう少し思い切った発言を繰り出す。


「お前がなぜ俺に治癒魔法を使ったか。ひたすら意見が対立しているのに、なぜ俺を救ったかだ」


 互いが対立しているのは紛れもない事実。ただ、それぞれが直接言うことは今までなかった。


「......そうですね」


 市、少し表情に変化が現れる。それは、すべてを分かった上でなお知らないふりをするかのような顔だった。

 そして、いきなり立ち上がる。


「あなたの言うことはよく分かりませんが、強いて言うなら、自分のためですかね」


 そう言うや否や、秀介の返事を待たずに部屋の外へと出て行ってしまう市。その姿を眉間にしわを寄せながら見る秀介。


「その表情、以前にもどこかで見たことがあるような......」


記憶の糸を手繰り寄せ、一年前で一旦停止する。


「あいつ、もしかして......」


 市の、成川叶の考えていることを、長政、井田秀介は理解することは出来なかった。

 しかし、秀介は彼女の周りにいたであろう人物に対して一つの仮説を導くことはできそうだった。

戦はまだ先です。しばらく人間関係を深めます。

お手数でなければ、ブックマークと評価の程宜しくお願します。

里見レイ

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