人質と帰還者
がんがん!
・前回までのあらすじ
秀介は市(叶)と会話して自身の事を魔法で治療したか聞くがはぐらかされてしまう。「強いて挙げるなら自分の為」と言う市(叶)を見て、秀介の脳裏に何かがよぎる......
「......なぜあたしを助けた?」
一体、この質問を何回しただろうか。
民家で治療を受けること五日。手を引かれるがまま小谷への道中を三日。戸谷華香はなすがままに敵の本城へと足を踏み入れ、そして人質となった。
「優姫を悲しませないためだよ」
いつ聞いてもこの返事しかしないのは、黒木三郎。浅井家重臣、遠藤直経役だ。織田家の猛将、柴田勝家役の華香とは本来敵同士。いつ殺されてもおかしくなかったのに、彼はずっと華香の面倒をみていた。
姉川で、この少年が前田利家役である石山竜牙との一騎打ちした時のことである。
二人の武具がぶつかり合った瞬間、互いの有り余った力を引き金に爆発が起きた。
華香が辺りを認識できるようになるころには、優姫と竜牙の姿はなく、華香自身は足をねん挫し、そこら中に傷を負っていた。
爆風の影響により、近くには敵も味方もいなかった。
三郎が華香に接近して来たのはこのときである。
「君は優姫の親友だよね?」
彼の第一声がこれだった。
「あ、ああ」
華香がそう答える。すると三郎は無言で華香の目の前に歩み寄る。
「き、貴様。私をこのまま殺すか? 確かに、優姫とは戦わない約束をしたがお前とはしていな......」
己の死を悟った彼女は、未練と後悔に満ちた諦めの向上を綴り始める。しかし、その言葉は強制的に閉ざされた。
「静かにして。傷口が開いてはいけないからね」
寡黙にその一言を放って華香の肩に腕を回し、誰もいなくなった戦場跡をただひたすら歩き続けた。
三郎自身も傷だらけだったのに、華香を見捨てることはしなかった。
その献身的な態度に罪悪感を持ったからだろうか、華香はねん挫が治ってからも三郎と行動を共にし、ついには小谷にまで来てしまったというわけだ。
そして、今に至る。
「優姫と私は確かに親友だ。そして、あんたが優姫と幼馴染ってのも知っている。けど、敵である私にそこまでするか?」
「そりゃあ......うん、するよ。じゃあ、また来るね」
簡潔に答えて、三郎は無機質に踵を返してこの場を去った。
「っておい! なんかはぐらかされているようにしか見えねえぞ!」
華香は彼を呼び止めようと大声を上げるが効果はなかった。
「あいつが優姫の幼馴染だとは聞いていたが、だからって普通あそこまでするか?何か裏があるような気が......あー分かんねー!」
どんな時でも崩さない、自慢のポニーテールをブンブン振り回す華香。元々、人の心を読むのは得意ではないため、五里霧中の状態である。
雨漏りもせず、意外に豪華な食事の来る牢屋の中で、華香はただ悶々と考える日々を送っていた。
「あの女性が来てもうすぐ一週間になるが、どうする気なんだ? 一体全体」
さて、ここは秀介の部屋。三郎の帰還についても秀介の復活と共に極秘事項となったため、二人は人目を避けてここで共同生活をしている。
秀介は三郎の摩訶不思議な行動についてを余りにも昼間が退屈なので質問をする。
「えーと、優姫が帰って来たら会わせるつもりだったんですが......」
あの爆発のあと、三郎は周囲半径二百メートルをくまなく歩き、優姫の死体がなかったことを確認している。近々優姫も小谷に帰って来ると考え、このような行動をとったのだ。
「いつまで放置しとく気だ? 現代での人間関係を家老たちは知らないんだぞ」
この時代の人間である者にとって、華香はただの敵方の有力武将。人質にしたなら、どのような処置にするべきか決めるべきなのに、三郎の頼みでずっと保留状態なのだ。それを不満に思っている家老がいると秀介は話しているのだ。
「僕たちが表舞台に戻るまで待ってもらえませんかね?」
「あと二週間か!? あー、頭痛くなる。聞くんじゃなかった......」
「す、すみません......」
苦笑いの三郎。しかし、秀介はその顔を見ようとしない。
今夜は仕事の日。夜に備えて仮眠を始めたのだ。
三郎も生きてました!それじゃ次はっといいたいとこですが、ちょっと秀介を働かせます。
しばしお待ちを
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里見レイ




