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日本にダンジョンが現れた!  作者: 赤野用介
第一巻 日本にダンジョンが現れた
3/74

03話 日常への回帰

 衝撃のゴールデンウィークが明け、次郎は普段通りに学校へ登校した。

 自転車を漕ぐ速度は体感的に上がっていたが、それ以外に変わった点は一切無い。


「おはー」

「ジロオハ」

「ジロオハハ」


 クラスに入って挨拶すると、友人の中川と北村から挨拶が返ってきた。他にも何人か、手を軽く挙げて挨拶してくる。

 次郎の通う三山町には中学校が一校しか無い。

 クラス数も各学年に一つずつだ。

 次郎たち二年生は、男子一〇人と女子八人。

 それが小学一年生から続いている。

 そんな状態でもグループが形成されるのは人の性だろうか。小さいクラスは、さらに小さな複数の集団に分かれている。

 ちなみに中川と北村は、次郎と合せて三馬鹿トリオである。


「ジロー、休み中にどこ行った?」

「ジローならテレビで見ただろう。選手とコーチ時代を合わせたら、野球界生活がついに半世紀に達したらしいぞ。すげぇな次郎。ビックな男だぜ」

「それはイチローで、俺じゃなくて兄貴と同じ名前。ちなみにゴールデンウィークは、前半に一泊の温泉旅行に行ってきた」


 話を振ってきたのが中川で、わざとボケてるのが北村だ。

 基本的には二人ともボケ役だと次郎は信じており、三人ともボケだというのが周囲の評価である。


「ほう、熱海ですかな。それとも別府ですかな」

「そういや別府温泉って、エロ温泉らしいぞ」

「えっ、マジで!?」

「おう。まずはコンパニオンを呼ぶ時に、ソフトかハードかを選びます」

「「…………ゴクリ」」


 三馬鹿は妄想街道に向けて、勢い良く自転車のペダルを漕ぎ始めた。

 ちなみに次郎が泊まったのは、日本海に浮かぶように建てられた有名な温泉宿だ。

 部屋まで料理を運ぶ仲居への心付けが必須となる相応の部屋であり、そこでは三人が期待するような特殊なコンパニオンと遭遇する機会は無い……はずである。

 温泉旅行は、次郎の祖父が提案して父が乗った。

 母は宿内の店舗で専用の枕を作成して貰い、シャンプーとコンディショナーとボディーソープをお取り寄せにして、存分に満喫していた。

 兄は帰宅後に、ネット通販で同じメーカーの一〇リットル入り格安シャンプー、コンディショナー、ボディーソープを発見し、母に伝えて一悶着起こしていた。

 そんな大人たちの旅行に、次郎は家族の義務として連れて行かれただけである。

 話のネタになった以上、まったくの無駄にはならなかったが。

 やがて三馬鹿の妄想が一段落した後、次郎は自分の席へ移動して机の上に鞄を乗せ、中から教科書とノートを取り出し、次々と机の中に放り込み始める。

 すると次郎から遅れて、次の生徒が教室に入ってきた。


「おはよう」

「おう、おはは」


 声を掛けてきたのは、ツインテールが特徴的な次郎の幼馴染み、地家じけ美也みやだった。

 小学一年生から一クラスしかない環境では、同級生全員が幼馴染みと言える。

 だが美也はその中にあっても、次郎と家が向かいというエリート幼馴染みである。

 最も二人の家は、都会人が想像するお向かいさんとは少し異なる。

 何しろ渓谷を挟んでいるのだ。

 次郎の家は、古くからある山の集落だ。

 そして美也の家は、団塊の世代ジュニアと呼ばれる祖父母の子供時代に切り開かれた、バブル期の新興住宅地の一つである。

 そのため渓谷を隔てた旧家と新興住宅地との間には、田舎ならではの下らない確執があった。

 旧家の古めかしい人々曰く、彼らは苦難を分かち合ってきた仲間ではないらしい。

 クラスに小集団が形成されるように、大人の社会にもグループが形成されたのだ。

 やがて少子化によって町内行事が一纏めにされると確執も薄れていき、次郎の父世代には随分とマシになったそうだが、次郎から見ても未だ隔たりは残っている。


 だが次郎と美也の場合は、最初から確執や隔意とは無縁だった。

 その理由の最たるは、互いの祖母同士の仲が良かった事だ。

 祖母たちは田舎に嫁いだ同士で助け合いの精神が発生したらしく、周囲の確執をものともしないどころか、むしろ積極的に仲の良さを見せつけた。

 その延長で、育児が長男に偏った次郎の母や、半ば育児放棄だった美也の母に変わって同い年の末孫同士を引き合わせて一緒に遊ばせたり、片方が一纏めに預かったりもしてきた。

 結果として次郎たちは、祖母二人と同い年の兄妹という家族のような関係に至っている。

 そんな幼少時から植え付けられた二人の同族意識は、三年前に次郎の祖母が他界した後も健在だった。


「次郎くん。校門に入るところで、凄く肩が下がっていたよ」

「午後は、アンニュイでマンダムなんだよ」

「まだ朝だよ。早く元に戻る」

「へいへい」


 美也は名前こそ猫の鳴き声っぽいが、性格は犬に近い。

 次郎に対する美也の行動は、自らリードを咥えて寄ってきて「そろそろお散歩の時間だけど、どうしようか。用事はちゃんと終わってる? 体調とか大丈夫?」と心配してくれる中型犬に似ている。

 本人に言うと確実に怒らるので、心の中で思っているだけだが。

 但し美也の場合、群れの線引きに関しては狼よりもシビアだ。

 田舎の出自や家柄至上主義が性格的に合わなかった事や、両親が育児放棄気味だった事も有り、箱庭の内側に祖母たちと次郎を入れている他は、基本的に他の群れとして一定の距離を取っている。

 学年一位という成績から真面目な子だと色眼鏡で見られがちだが、次郎から見れば、単に学力が高いだけで他は周囲と何ら変わりなく、普通に喜怒哀楽を外に隠しているだけの幼馴染みという感覚だ。


「それと、はいこれ。お兄ちゃんから」

「おー、サンキュー!」


 差し出されたのは、次郎が預けていたUSBだった。

 その中には、美也の兄である恭也が見繕った無料公開されている「お勧めネット小説」や「ウェブ漫画」のデータが入っている。

 何故これほど沢山の小説が、インターネット上に無料で公開されているのか次郎には解せないが、恭也が探した作品はどれも次郎の趣味に合致しており、いつも有り難く読ませてもらっていた。


「じゃあこれ、次のUSB。恭也さんによろしく」

「その時間を一時間だけでも英語に向ければ、すぐに成績が上がるよ?」

「英語に向けるのだけは有り得ないな」


 次郎の総合成績は、クラスで中ほどだ。

 但し、好き嫌いで教科ごとの点数には極端な偏りがある。その悪い方の代表格が英語で、切っ掛けは小学生の時に起った西日本大震災だった。

 平時から治安が良好で、外国人への気遣いもあり、地震多発国ゆえに高い防災が施され、極めつけに南海トラフを震源とする巨大地震が事前に想定されていた日本ですら、各地の行政機能は崩壊していた。

 震災後に取り上げられたニュースでは、被災した外国人が言葉の壁で保護を受けられずに苦労する姿が何度も取り上げられた。

 それを見た次郎は、自分が海外で被災した場合はどうなるのかと恐れた。

 結果として次郎は、日本語の通じない海外へ出る気を失った。よって、今後の人生において全く訪れる予定の無い英語を習得する気になれなくないのだ。

 一方で自らの関心事には、それしか目に映らないかの如き集中力を見せる。差し当たっての関心事は、当然ながらこの洞窟内に纏わる全事項についてだった。次郎は英語の話題を聞き流すべく、鞄の中から徐ろにお土産を取り出した。


「まあまあ。それよりもお代官様、黄金色のお菓子で御座います」

「…………何それ?」

「旅行に行ったからお土産。恭也さんと二人で一箱だけどな」

「うーん、ありがとう」


 兄と二人分と言われた美也は渋々受け取って、自分の鞄に仕舞い込んだ。

 こういう旅行のお土産に関しては、完全に次郎が渡す側で、美也が受け取る側になる。

 美也の父は、サラリーマンとして都会で八年働いた後、結婚と共に山中県に移り住んで農業に参入した。そして経営に失敗して借金を背負いながら、零細農家と零細サラリーマンの二足のわらじを履いている。

 しかも農家経営が傾いていた頃から、安酒に走って肝臓を悪くしており、零細サラリーマンも人並み以下の能力しか出せていない。

 母がパートで家計を助け、近所に住む祖母の支援も得て、ようやく借金を返済しながらギリギリの生活が成り立っているところだ。

 そんな家庭の事情によって、美也は家族旅行に行く余裕など一切無い。

 昔は素直にお土産を受け取っていた美也も、やがて次郎から受け取るばかりの状況に不公平を感じて、遠慮するようになった。

 その頃から次郎は、幼馴染みにお土産を渡す際には受け取りを断られないように、USBを預けてお願いも加えると言った小技を使うようになった。


「何処に行ってきたの?」

「日出づる処より、日没する処へ」

「中国?」


 いきなり突拍子も無い言い回しをしても会話のキャッチボールが成立する辺り、二人は流石に幼馴染みであった。


「いや、石川県の温泉」

「確かに西よね。それで、どんなところだったの?」

「マジで海に日が沈んでいった。空の雲が真っ赤だった」

「動画とか撮った?」

「おう」


 次郎は鞄から携帯端末を取り出して、動画を再生しようとした。

 二〇四二年現在、一部の携帯端末は複数人で同時にTV電話すら可能な機能を備えるに至っている。

 一方でガラパゴス携帯、略してガラケーと呼ばれる製品も高齢者を中心に一部で根強い人気があり、未だ絶滅には至っていない。


「学校で出さないの」

「うい」


 美也の一言で、次郎の携帯端末は鞄に出戻りをする。


「旅行には皆で行ってきたの?」

「ああ、爺ちゃんが皆連れて行った」

「そっか。良かったね」


 美也に安堵の表情が浮かんだ。

 亡くなった次郎の祖母は、美也にとって一番内側の線に入る存在だった。

 そのため、その配偶者である次郎の祖父については、美也なりに多少は気にしていたのだ。そして家族旅行に誘うような精神状態であることに安心したのだ。


「そろそろ先生来るわね。直ぐに中間テストだから、ちゃんと勉強しないとダメよ」

「ういうい」


 次郎は放課後に向かう予定の洞窟で半分くらい上の空になりつつも、残り半分くらいは美也の言葉通り真面目に授業を受けた。

 体育の時間だけは手を抜いたが、それは他のクラスメイトも同罪である。ゴールデンウィーク翌日にグラウンドを走れというのは、あまりに酷な話だろう。


 やがて放課後になった次郎は、真っ直ぐ帰宅する事にした。

 部活は陸上部だが、入部の理由は小学生の頃に障害物競走で速いと褒められ調子に乗っただけだ。次郎より速い陸上部員は後輩にすら複数おり、大会での活躍は期待されていない。そのため、無理に練習をしなくても良い立場である。

 美也に言伝を頼むと確実に捕まるため、それ以外の人物に依頼する。


「ナカさん、キタムー、悪いけど部活休んで先に帰るわ」

「どうしたジロー。今日こそはお前の最速の走りを見せてくれるんじゃないのか」


 帰宅を告げた次郎に、中川からお約束のセリフが返ってくる。

 次郎の名前は、堂下どうした次郎じろうである。どうしたジローとは、次郎のフルネームと問い掛けを重ねた、小学生以来の使い古しのオヤジギャグだ。


「いや、エロ温泉のせいで足腰が立たない」

「ジローえろっ」

「うひょ、お大事になー」


 アホ二人は満面の笑みを浮かべ、両手を叩いて喜びを体現しながら次郎を解放した。自由を得た次郎は、鞄に教科書を詰め込むと、素早くドアへと駆けて行く。

 去り際に美也が嗜めるような表情を向けていたが、次郎は軽く手を振ってそのまま教室を後にした。


 部活動に熱心な他校の生徒は、部活に所属しながら帰宅する光景を奇妙に思うかも知れない。

 しかし三山中学校には、それを許容せざるを得ない特殊な事情が存在する。

 その特殊な事情とは、全学年を合わせて六〇人に満たない生徒数だ。

 部活の最低所属人数は五人だが、サッカー部や野球部などは五人では活動出来ない。サッカーが流行って男子の半数がサッカー部に入った時には、野球部が廃部に追い込まれた。そしてサッカーが廃れると、今度はサッカー部も廃部した。

 そんな調子で所属人数に偏りが生まれる度に廃部が続いた結果、今や残っているのはバスケ部、バレー部、陸上部、美術部の四種類だけである。

 こうなると生徒側には、部活動に対する自由選択の余地が無い。

 そのため部活に所属する義務はあるものの、活動は強制しないという妥協案が採られた。次郎が比較的すんなり帰れる所以である。


 足腰が立たないと言い訳した割には軽やかなベダル漕ぎで、次郎は自宅へと辿り着いた。レベルとやる気が合わさった結果、中川が言った最速の走りが実現出来た可能性もある。

 惜しむらくは、その立会人が皆無だった事だろう。もっとも次郎の関心は、既に洞窟へ向いている。

 洞窟内へ持っていく物は、昨日のうちに見繕っておいた。

 壊れかけたナタの代わりに選んだのは魚用の投網と電動ドリル、それと解体用ナイフだ。他にもLEDランタンとLED懐中電灯は持っていく。

 投網はかなり古い物で、家族の誰も使っているのを見た事が無い。飛び回るコウモリを捕獲すべく、蔵の肥やしになっていたのを引っ張り出した。

 電動ドリルは、次郎の父が昔使っていた旧型だ。使い勝手が悪くなって子供用に払い下げられたので、壊れようが無くなろうが文句は言われない。それでも投網に絡め取られたコウモリの頭部に穴を空けるくらいは出来ると思われたため、持っていく事にした。

 解体用ナイフは、祖父が沢山持っている熊用の品だ。猟銃や今使っているナイフは鍵付きの金庫にしまわれているが、古いナイフは十数本くらい纏めて一つの箱に入れられて蔵に放り込まれている。一~二本減ったところで、気付かないと思われた。

 なおナイフは、コウモリの体内にある緑の小石を取り出すために用意したものだ。護身用としても使えるだろう。

 そのように、次郎の家には様々なものがあった。その中で持ち出しても発覚せず、重くなりすぎないものを選び、洞窟へと向かった。

 時刻は一六時を少し回ったところである。

 夕食の一九時くらいに帰宅する場合、コウモリ狩りに費やせるのは二時間半くらいだろうか。あまり不審がられないためにも、早めに切り上げた方が良いかもしれない。土日なら半日は使えるため、深入りするのは休日となる。

 そのように考えているうちに、目的地に辿り着いた。

 昨日までと全く変わらず、車三台ほどが並んで入れるくらいの大穴がポッカリと開いている。綺麗に整った段差と、奥へと続く灰色の床。明らかに不自然な建造物である。

 次郎は段差を超えて坂道の半ばまで進んだ後、ランタンのスイッチを入れて、未知なる洞窟の内部を科学技術の粋で照らし出した。


「……うげっ」


 暗闇から浮かび上がった光景に、次郎は驚きの声を漏らさずにはいられなかった。

 原因は、三日前に倒した最初の巨大コウモリの死骸だ。翼が折れて内臓を破壊されたコウモリは、杉山に放置すれば虫や蟻の餌になるのが本来の末路だろう。

 しかし二日前に見た死骸は、無視などに襲われる事無く、代わりに仄かに光る灰色の半透明の液体に包まれていた。また周囲に飛び散った血も、同様に発光する小さな灰色の液体に覆われていた。

 液体はコウモリの身体から出たものでは無く、洞窟内の床や壁などから染み出てきたと思われる。液体そのものは柔らかく、ナタの先端で突くとゼリー状の感触があった。

 そんな液体に包まれてから一日経った昨日は、コウモリの身体が随分と小さくなっていた。身体の水分を抜かれて干からびたかのような、そんな縮み型であった。

 そして現在、コウモリは皮膚や肉が溶けたのか、ゼリーの中で骨格模型になっていた。しかも完全骨格では無く、あの硬い骨格が指先から溶け始めている。


「洞窟内で死ぬと、溶かされるのか?」


 コウモリの死骸や糞尿が無い事に違和感を覚えていた次郎だったが、ゼリー状の物体が洞窟内の異物を溶かすのでは無いかと想像して、一先ず納得した。

 この物体は洞窟内の僅かな蛍光灯であり、異物に対する掃除機でもあるのだろう。

 非常に効率的であり、益々以て常識の通じない場所だった。


 次郎はゼリーを外見からスライムと名付け、そのまま放置を決め込んだ。

 半透明な身体の何処にも緑石を持たないスライムは、戯れるだけ時間の無駄だ。

 改めて段差の先にあった坂道を下り切り、蛍光スライムの灯りだけでは不充分な暗闇へと足を踏み入れた。そして左手で掲げたランタンに照らし出された世界を覗き込んだ。

 入り口を降り立った先から奥への道は、やや広がりを見せながら続いていた。

 目算だが横幅は車四台が通れるくらいで、高さは次郎の身長の三~四倍くらいだろう。まるで片道二車線の国道で、大型トラックも進めるトンネルくらいの大きさだ。

 これではまるで、都会にある駅の階段を降りたところで、駅の反対側へと伸びる巨大な地下道を目にした気分だ。

 駅の地下道との相違点は、天井に蛍光灯が無い事だろう。

 蛍光スライムはコウモリにとっては充分な灯りなのかも知れないが、次郎にとっては街灯も月明かりも無い夜道に等しく暗い。

 壁には非常ボタンが無く、AEDや消化器も見当たらない。

 携帯の電波すら届かず、道も曲線で奥まで見通せなくなっている。そしてコウモリが生息し、壁には蛍光消化スライムが溶け込んでいる。

 こんな駅の地下道が日本にあったら、その管理会社は炎上し、即日クレームの嵐に見舞われるはずだ。マスコミ辺りは社長の謝罪会見を要求するかも知れない。


 もっとも、現在唯一の利用者である次郎にクレームを入れるつもりが無いので、山の所有者である祖父は謝罪会見を開かずに済むだろう。

 それに次郎自身にも、これから大怪我をする予定は無い。

 失敗したのも初日だけで、それ以降は充分な心構えと装備で進んでおり、大きな怪我はしていない。今日も事前準備は怠っておらず、洞窟内を大胆かつ慎重に進んでいる。

 刹那、何かが降って来る気配を感じた次郎は、気合いと共に投網を投げ放った。


「おりゃああっ!」

「ギギイィ」


 大きく広がった投網の中心に、三匹ものコウモリが絡まった。

 羽ばたきを阻害されたコウモリたちは、洞窟の床へと引きずり落とされていく。


「ヤバい、ヤバいっ」


 投網でコウモリを捕まえすぎた次郎は、大慌てで電動ドリルのスイッチをオンにした。

 全員が攻撃特化の一族において比較的慎重派に属する次郎は、複数同時に襲い掛かってくるという想定外のコウモリ達に対し、ドリルの回転音を洞窟内に鳴り響かせながら、絡め取ったコウモリたちに襲い掛かっていった。

 堂下家が初代町長であった祖先を最後に、代々財産を減らしていくのも道理であった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なかなか独特な文章だと思います。執筆が2017年 12月01日 なので現代版ダンジョン小説としては先駈けになるのではないでしょうか?また、完結しているのが凄いです。 ゆっくり拝読したいと思…
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