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龍人転生~苦労の絶えない異世界道中~  作者: 白玉蛙
四章 アシュトルス
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武力国家ベクトリール

  ベクトリールまでの旅路は順調であった。

  道中で遭遇した魔物を狩猟し、途中で立ち寄った村で補給をしたりといった具合で2日が経過し、今日の昼頃には到着するだろうという所まで進んでいた。


  ただひとつだけ問題があった。やることが限られていたので、とても暇な事だ。

  文字の勉強をしようとしても馬車の揺れですぐにライムが酔って(スライムも酔う事が分かった)しまうし、代わり映えしない岩山ばかりの道を眺めてもこれといって発見はない。


  しかし、そんな退屈な馬車での移動も、今は幾分(いくぶん)かマシになった。



「……で、ここらの岩は夜中にきれぇに光るんで、俺達商人は『(しるべ)の岩道』って呼んでるんでさぁ」


「へぇ、この岩が……採掘とかされないの?」


「夜光岩ってぇんだけどよ、この辺の気候じゃなきゃあただの岩なんで、誰も見向きもしないのよ」


  俺と会話しているこの男性は商人で、道中に偶然出会って行動を共にしているのだ。

  荷物を牽引している馬車を護衛の冒険者に預けて自身の馬車に俺とライムを呼んで、色々と教えてくれたり今までの行商先の出来事を話してくれるので、結構良い暇潰しになっている。


「ファル、これひかルノ?」


「そうらしいよ。今度は夜に通りたいね」


「おっと、それはやめといた方が良いぜ」


  あぶねぇからよ、と軽く警告した商人のオッサン。

  なんでもここ最近、この辺では夜になると色々と奇妙な現象が起こるようになったらしく、夜中にここを移動するのは危険らしい。


「その奇妙な現象って?」


「それがよく分からないみてぇで、冒険者が夜に此処を通って異形の怪物になって帰ってきたとか、食料が急に意思を持って動き出したとか、とにかく色々変な事が起こってるって話らしいぜぇ。夜までに抜けられるように時間を合わせなきゃいけねぇもんで、無駄に時間が掛かっちまったぜ」


  話を聞くにその冒険者は兎頭(・・)の獣人になってしまったらしく、今はベクトリールに保護されているのだとか。

  ……なにそれ怖い。


「いつ頃からなの? それが起こったのって」


「本当に最近、4日くれぇ前からそんな話を聞くようになったなぁ。ベクトリールがアシュトルスに戦争を仕掛けたって話なんで、物資がいるだろう今を狙って出発した直後にこんな話が入ってきたんだよな、迷惑な話だぜ」


「4日前……」


  丁度ベクトリールがアシュトルスに使者を送れば、大体それくらいの日数になるな、と謎の引っ掛かりを覚えた。


「ん? なんかあったんで?」


「……いや、夜にこの岩が光ってるのを見れないで残念だなぁ、と」


「カカカッ! そりゃあ気の毒なこった! 本当にきれぇだからなぁあれは」


  面白そうにそう言う。性格悪いな……。


「ところで、坊っちゃんはなんで今みてぇな時期にベクトリールに?」


「え? ああうん、少し前までアシュトルスにいたんだけど、戦争がどうのって話を聞いて、父さんが「少しでも安全な方に」って事でこっちの国まで」


「亡命かぁ……それはご苦労なこったなぁ」


  今、俺達は馬車を引いてる兵士を父親という事にしている。

  流石に「アシュトルスの使者です」なんて馬鹿正直にいえないしね。その辺は予め口裏を合わせている。




  そんなこんなで当たり障りのない会話(暇潰し)をしていると、岩山に混じって巨大な人工物が姿を表してきた。

  岩山と岩山の真ん中にそびえ立つ『扉』だ。


「おっ、見えてきたみてぇだ。あの扉の先がベクトリールだ」


「……山と同じようなサイズの扉って、初めて見たな」


  流石は異世界としか言いようがない。




  関所の前までやってきた俺達は、通行証を持っていて一足早く入国する事となった商人と別れを告げていた。


「此処で会ったのもなんかの縁だ、良い宿を紹介してやるぜ?」


「だ、大丈夫……母さんがベクトリールにいるから、そこでお世話になるんだ」


  厚意で言ってくれた事なのだろうが、俺達は今日中に戻る予定なので理由を付けて断った。

  しかしこの兵士が父親だとしたら、俺の母親(仮)はどんな人物になるのだろうか?


「そおけぇ。ま、寝る場所があんなら問題ねぇけどよ」


「ありがとう。おかげで道中の退屈しのぎになったよ」


「俺も丁度話し相手が欲しかった所だったから、お互い様ってやつさぁ」


  じゃあな、と俺を自身の馬車から降ろして別れを告げた旅商人。好い人だったな。




「では、辺りで宿を取りましょう。ベクトリール城へは明日向かいますので」


  入国の手続きをするために馬車を降りた兵士が、商人を見送っていた俺に声を掛ける。


「今日行っちゃえば良いんじゃないの?」


「そうもいきません。長旅で疲れてますでしょうし、この状態(旅装束)で城へ入るのはあまり宜しくありません。明日、正装で向かいましょう」


「そういう事なら」


  さっきあの商人に宿を紹介してもらえば良かったなぁ、と若干後悔しつつ兵士に従ってベクトリールの巨大な門をくぐり抜けた。





「……結構広いんだね」


「大国ですからね」


  ベクトリールに入った俺が街の広さに感嘆の声を洩らしていると、入国手続きを終えた兵士が色々と紹介してくれた。


  ここは大昔、山をも越える巨体を有していたと言われていた七星龍の一角『土塞龍 ベヒモス』の巣穴だったと言い伝えられており、当時の小貴族……初代ベクトリール王がこの場所を防衛都市として開拓したのが始まりなんだとか。


  この街の特産品は近くで採れる豊富な鉱石と近くの活火山によって湧き出る温泉で、純粋な観光客も多いらしい。

  ちなみにベクトリールはこの大陸でも群を抜いて戦争の多い国らしく、こんな戦争前だというのに人々が多いのは、この国が今のところ敗戦無しという強国なので「たかが小国との戦争で、いちいち神経を尖らせる必要は無い」という余裕から来るものなんだとか。

  ……うちらの国は存亡が懸かってるってのに。


「よく知ってるんだね」


「……仕事柄様々な都市へ行きますので」


「それもそうか」

「そウカ~」



  今にも音楽が聞こえてきそうな街の賑やかな雰囲気につられて俺の歩みも軽いものへと変わっていく。

  アシュトルスとはまた違う良さがあっていいな。


「危ないからあんまり走るなよ~」


「んっ!」


  元気な返事を返したは良いが、移動の速度は全く変わらないライム。

  見たことのないようなものが殆どだし、仕方ないっちゃ仕方ないんだけどね。


「しかし本当に広いな。前世の都会の道路みたいだ」


『幅三メートル以下の馬車ならば一度に四台は通れます』


「凄いな……っと、こんな所に銭湯っぽい建物が」


  赤い花と青い花が別々に飾られた扉が二つある建物を発見した。煙突らしきものも見当たるので、間違いないだろう。


『その建物内から硫黄の成分が漏れ出ております』


「よし、絶対後で入ってやる。お~いライム~! そろそろ戻るぞー」


「んー」


  ほくほく顔で戻ってきたライム。手には飲み物の入った容器が握られていた。


「もらったの?」


「ん! っッビスっテ(翻訳:サービスだって)」


  喉を鳴らして旨そうに飲むライムを見て空腹を覚えた俺。

  ……温泉は飯食ってからだな。


「では行きましょうか」


  再び俺とライムが馬車に乗ったのを確認して馬を進めた兵士。

  きゅるる……と、ファルの(はら)()が真昼の城下町に響き渡った。






「……高そうな宿だね」


「かなり質の良い場所を選びましたので」


  前世の下手な宿泊施設よりも遥かに豪勢な宿を前に俺の歩みが止まった。

  後ろに続く兵士が不思議そうな顔をしている。


「?、入らないのですか?」


「いや……入りたいのはやまやまなんだけど、高級な宿って事で俺の体が入るのを躊躇してるんだよね……」


「はあ……」


  だって仕方なくね? 前世じゃあ民宿なのに財布を覗いてうんうん唸ってた人間だぜ? 俺は。

貧乏性な俺からしたら、こんな前世でも海外セレブが住みそうな建築物、入るのも躊躇(ためら)ってしまう。

  どうしても「本当に入っても平気なのかな?」とかいう感じで体がいうことを聞かないんだよ。


  ……とは言ったものの、気持ちの問題だから別に普通に入れるんだけどね。




「飯も付くってのがまた良いな」


  宿(という名のホテル)に入って暫くすると、肉をふんだんに使用した料理が運ばれてきた。香辛料を使った料理に食欲を刺激される。


「……街の宿で食事の無い所なんてあるのでしょうか?」


「え、普通はあるの?」


「えっ?」


  マジかよコイツ……みたいな目を向けられてしまった。

  違うの? だって俺が昔行ってた所なんてみんな泊めるだけだったし、飯なんて近場のコンビニで買ってたし……異世界の方がその辺のサービスは良いって事なのか?


「と、取り敢えず戴こうよ」


「……そうですね」


「ファルみずー!」






「よし、じゃあ行くか、風呂に」


  昼食にしては些か豪勢過ぎた料理に満足感を得た俺は、兼ねてから予定していた風呂へ入るべく、先程発見した温泉施設へと歩き出した。


「ふろ?」


「温泉ともいうね」


「……んセン?」


「お湯に入る所だよ」


「おゆ……」


「……とにかく行こう!」


「んっ!」





「……と、勢いで来たは良いけど……」


  何度か道に迷いつつもルシアナビで無事目的地へ到着便した俺は、ここに来てとある重大な事を思い出してしまった。


「ファル?」


「俺……女だったんだよな」


  どうしようか、俺的には男風呂に入りたい。しかし、肉体的な関係で女風呂に入らなければならない……別にありっちゃありだけどさ。


「……また入れないのですか? 一つ言っておきますが、先程の宿もこの国では言うほど高級なものでもありませんよ?」


「ええと……一つ質問しても良い?」


「なんなりと」


  これだけはしっかりと聞いておかなければならない。俺は兵士にひとつだけ質問をした。


「男が女の風呂に入るのと同じように、女が男の風呂に入るのもアウトだよね? ……仮に子供だとしても」


「ですね。この国は特に湯の規則が厳しいです」


  これは国から不純性を消し去ろうというベクトリールの王の考えによって取り決められているみたく、その辺の法は前世以上に厳しいらしい。


「しかし、何故そんな事を?」


「いやはは……男湯に入れる可能性が消え去ったなぁ、と……」


「え? ファル殿は男の入る湯で合っているは……えっ?」


  とある考えに至ったのだろう兵士は、信じられないものを見るような目で俺の体を見た。


「まさか……」


「その『まさか』ってのは多分合ってるよ」


「ファル殿は、女……なのですか?」


「隠してた訳ではないけど、うん」


  何で性別が変化したのかは一切分からないけどね。

  少し前に一度、その手の事をディメアに聞いてみたのだ。しかし、神龍であるディメアには『性別』というものが元から存在しなかったらしく、何故俺が女として生まれ変わったかの答えを持ち合わせてはいなかったのである。


「とてもそうは見えないのですが……」


「昔からこんな性格だからね」


  前世が男だったもんだから仕方ないでしょ。


「……」


  無言で俺を見つめてくる兵士に、俺は何なのだろうかと首を傾げた。


「ん? ……ッ!?」


「本当に無い゛っ!?」


  ほんの一瞬だけ両足が地面から離れた兵士が、腹を抑えて悶絶する。俺が鳩尾にボディーブローを叩き込んだのだ。


「っにすんだよ気持ち悪い!」


「うぐ……う、嘘かどうかを証明するために……」


  何も言わずに人の股を触ってきたこの変態にせめてもの慈悲をと、殴る箇所を鳩尾にしてやった。

  あぁ気持ち悪かった……。


「次やったら二つの内一つが木っ端微塵になると思えよな」


「ごほっ……二度としません」







  と、そんな事が入り口で起きたが、兵士と分かれて異世界風銭湯へと足を踏み込んだ。

  そして早速――。


「ちょっと良いかしら坊や?」


(やっぱり止められるよな……)


  湯上がりなのだろう、濡れた髪を巻き上げた女性が俺に声を掛けてきた。


「悪いけど男の子はこっちには入れないの。今回は見なかった事にしてあげるから、もう一つの入り口から入ってね」


  管理人に見つかる前にと注意をしてくれたのだろう。

  ……俺だってできることなら男湯に入りたいよ。


「……一応女、だよ」


「本当かしら?」


  女性に疑惑の視線を向けられた……。分かった、分かりましたよ! 脱げばいいんでしょ脱げば!


  ヤケクソになった俺は衣服を全て脱ぎ捨てた。当然だが周囲に他の人がいない事は確認済みである。

  仮に他の誰かが見てたら、間違いなく俺は自殺してる。


「あら、本当だったのね……。もう私ったら嫌ね、人を見た目で判断しちゃって。ごめんなさい」


「……うん、分かってもらえて良かったよ」


  そんなやり取りを合計二回、この後連続で行ったファルであった。





「わぁ! ファル! みずいっパイ!」


「あ、こらライム! 走っちゃ駄目だから!」


  初めて見る温泉に、常に高めのテンションが更に上昇したライム。無性のライムには念のためにタオルを巻かせている。

  全く、他の人の迷惑になったら怒るからな。


  はしゃぐライムを微笑ましそうに見るおば……比較的高年層の方々に軽く頭を下げて、走り回るライムを追い掛けた。


「元気ねぇ、小さい頃の息子を思い出すわぁ」


「な、なんか……すいません」


「いいのよ別に。妹さんの面倒を見るなんて、エラいわねぇ」


「あ、あはは……」


  ……早く湯に浸かるか帰るかしたい。


  ただでさえ初めての女風呂なのに、ライムがはしゃぐんで周囲から注目を集めているのだ。赤面なんてもんじゃない。

  出来る限り周囲を見ずにライムを追い、捕獲した。


「はい捕まえた。……人がいるんだし静かにしろよな」


「う~……」


  捕獲したライムの体を軽く洗ってやり、先に温泉に入れさせた。突然ながら入る際はタオルを外して、である。

  俺? 俺は先に頭とか洗っちゃう派なんだよ。


「それじゃあ私達は出ましょうか」


「二人とも仲良くしてねぇ」


  一気に人が減り、温泉には俺とライム、それと俺達と同じ位のタイミングで入ってきた人だけとなった。



  さて、体の汚れも大方取れたし入るかな、とライムの入ってる方を振り向いて固まってしまった。




「ライム……いや、人違い……かな?」


「ん?」


  あ、この反応は間違いなくライムだ。


「……少し目を離した間に大きくなったなぁ」


  気持ちよさげに温泉に浸かっているライムが、顔つきから体つきまで、全てが成人女性のそれだと分かる姿になっていたのだ。

  え、何? スライムって温泉で急成長でもするの?


『湯の水分を吸って膨張したのでしょう。容姿の変化は……推測ですが恐らく膨張した分の堆積が【変体】した際の肉体に比例しているのでしょう』


(……つまり簡単にいうと?)


『水を吸えばそれに伴って肉体が成長する(ように見える)という事です』


  どうやら俺達の肌がふやけるのと同じようなもので、風呂から出れば数分もしないうちに元に戻るんだとか。本当に面白い体してるな。


「上がりたくなったら早めに言うんだぞ」


「んー」


「っと、おぉ久し振り」


  ようやく風呂に浸かる事ができた俺は、丁度良いとはお世辞にも言えないが、疲れを取るには十分な温度の温泉に入って声を洩らした。

  こういう所って何十分でも入ってられるよな。


「……やっぱり風呂って良いな」

「イナー」


  そのままライムがギブアップをするまでの二十分間、とても有意義な時間を過ごせた。

  少し前まで起きていた事を忘れるには十分な位リラックスさせてもらったからね。




「ごめん、待った?」


  既に外で待っていた兵士に声を掛けた。温泉から上がる前、最後にライムの頭だけ洗ったのだが、それに思いの外時間が掛かってしまったのだ。


「……いえ、私もたった今出た所でしたので」


「なら良いや」


  風呂上がりで頭から湯気を出している俺達は、満足げに宿まで帰るのであった。


「『ねぇ、あの棒に肉を刺して焼いてるあれは何?』お、串焼きだ。食べる?(とはいっても俺が食べるんだけど)」


『勿論』


「……アシュトルスからの使者という事を忘れてはいませんか?」


「おっと……わ、忘れるわけ無いじゃないか(危なかった……)」






  宿に到着した頃には日もだいぶ傾いていた。

  ファル達と別れ、個室という事で用意された部屋に入って安堵の息を吐いた兵士。



  ……全く、冗談じゃない。


  これがベクトリール最強の暗部『幻霞闇影』の一人である幻のファルに対する感想であった。


  彼はマグナ王直々の命令によってアシュトルスに潜伏していたのだが、その時偶然入手した『ベクトリールに向かう使者は子供冒険者』という情報をもとにアシュトルスの兵士を装いベクトリールまでの案内役(ナビゲーター)をしていたのだ。


「……まさか子供冒険者が女だったとは」


  危険を侵してまで調べた甲斐があった、と苦笑気味に呟く幻。



  突然、周囲に霧が出現した。屋内にも関わらず……である。


「……どうだった?」


「どうだった? じゃないわよ。突然呼び出されて「風呂に入ってくれ」だなんて、忙しいこっちの身にもなりなさいよ」


「忙しいのはお互い様だろう」


  ぶつくさと幻に対して文句を言う彼女は幻の仲間の一人『霞』である。

  女湯に入れない幻は、念のために待機していた霞に監視を頼んだのだ。


「何か変わった事はあったか?」


「ええ。とはいっても子供冒険者にじゃれてる子の方だけれど。詳しい事はこれ読んで」


「助かる」


  そう言って羊皮紙から目を離した幻だったが、目の前に霞はいなかった。気付くと霧も晴れている。


「相変わらず仕事だけ終わらせてすぐ消える女だ」


  ポツリと呟いて羊皮紙に書かれた内容を確認する。


「……『子供冒険者と共に行動している少女の姿が変化、具体的には肉体の成長。湯から出て数分で元の姿に変化』……、ライムといったな。あの子供も監視を強めなければな」


  軽い痛みを訴え始めた頭を抑え、報告書へ簡単に書き写した。そしてそれを転移魔法で城まで飛ばして立ち上がる。


「さて、明日は子供冒険者を城まで案内か」


  羊皮紙に書かれた王の命令文を読み返して一人考えに(ふけ)る。


  王は一体何をお考えなのだろうか? 子供冒険者をどうするつもりなのだろうか? そう考えては「王がお決めになった事だ。我々はそれの従うのみ」という意思を持って無理矢理考えを飲み込んだ。


  全ては明日分かる事だ。私はそれまでを子供冒険者の案内役(ナビゲーター)としての使命を全うすればいい。

  そう結論付けてベッドに体を預けた幻。



  ……そう、全ては明日決まるのだ。

オマケ




丁度良いとはお世辞にも言えないが(ry



前世。


「うぅ、外は冷えるな……」


「久々に風呂にでも行く?」


「お、いいじゃん」


「よし決まり。じゃあたが「『汰雁(たがん)の湯』は無しだからな」なんでだよ」


「くっそ熱いからに決まってんだろ」


「あれが? 全然丁度良いくらいじゃね?」


「……48とか9度の熱湯を丁度良いとか言ってるお前の肌の神経、どうかしてるんじゃねえのか?」


「結構行ってる人もいるだろ」


「俺達よりも3倍近い年齢の方々以外にあの場所に行ってる人間なんて見た事ないからな」




『汰雁の湯』、私の実家の近くにある温泉の名前をもじったものです。50度近くあります。

かくいう私も、昔から入っていたので48度くらいなら平気なんですが。

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