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レガリアス・カード~真白の乙女は七彩の夢を見る~  作者: ほっとけぇき
藍の章:静寂を抱くものよ、もう汝は孤独ではない

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第34話 萌黄と言う少女

新章開幕です☆ 今回の章はホラー色が強いかも?

「あ、あの……どちら様ですか?」


 学校が長期休みに入り、暇になった私は支部へ訪れた。

 そこまではよかったんだけど……。


 ソファに腰を掛ける少女には全く見覚えがない。

 薄めの金髪に黄緑色の瞳――こんなド派手な見た目忘れるはずがない。


 一体、この子は誰なんだ。


 声を掛けてみても一切答える様子がない。

 無視されちゃったかな?


「ん? あ、この支部の人?」


 肩をそっと叩くとやっと、パソコンで何かを打ち込んでいた少女は顔を上げる。

 私の存在に気づいた彼女は、ビクッと体を揺らす。


 あ、ただ作業に集中していただけか。

 それにしてもすさまじい集中力だとは思うけど。


 状況を上手く呑み込めていない彼女は周りを見渡す。


「はい。七草支部所属の千枝です」


「あなたが、あの……」


 何かを思い出すように、私の顔をじっと覗き込む。


 え?私、どこかで噂になっているの?

 思い当たる節がないわけじゃないけど、変な噂だったら嫌だな。


「ごめんなさい。いきなりまじまじと見てしまって」


「別に大丈夫ですよ」


「従兄弟があなたのことを話しているのを聞いて、ずっと気になっていた」


 あぁ、変な噂じゃなくてよかった。


 ……って、従兄弟? 一体誰?


「従兄弟って? それと、お名前は?」


「そうだった。自己紹介するの忘れてた。私、月ノ宮萌黄。従兄弟は朧里刹那っていうけど、知ってる?」

 

 なるほど。刹那さんの従兄弟って言われたら納得できる。

 目を凝らしてみると、顔立ちの系統がかなり似ている。


 まつ毛がバシバシ生えているのとか、口の形とかそっくり。


 しいて違うところがあるとすれば、刹那さんの方が全体的に鋭利な感じがする。

 ……やっぱり性別が違うからか。


「一緒に任務とかを行っているので、もちろん」


「よかった。……それにしても、聞いていた通りあなたいい人だね」


「私が、いい人?」

 

 彼女は嬉しそうに微笑むが、いきなりそんなことを言われても首を傾げることしかできない。


 美緒たちにもよく言われるけど、言うほど私優しいか?


「だって、他の人は私が名乗るとみんな目の色を変えるの」


 名前が原因?

 さっき、『月ノ宮萌黄』って名乗っていたわよね?


 確かにどこかで聞いたことがあるような……。

 でも、どこで聞いたかを覚えていない。


 一人で唸っていると、視界に彼女が使っているパソコンが目に入る。


 特徴的な月のマークが刻まれているそれは、日本でも有数な電機工業の『月ノ宮電機』のロゴだった気がする。

 

「もしかして、月ノ宮さんって『月ノ宮電機』と関係があるの?」


「うん。一応、そこの社長の子供」


 一応って、ノリが軽すぎる。

 ただ、なんとなくそう言いたくなるのもよく分かるな。


 私の家は普通の家だけど、同じクラスのちょっと裕福な家の子とか大変そうだもの。

 うわべだけを取り繕って、本人を見ずにお金のことしか見てない人が群がっているような気がする。


 そういえば、その子たちも『私や美緒はそういう目線を向けないから居心地がいい』って、言っていた気がする。


「まぁ、とりあえずよろしくね。多分、これから一緒に任務を行うことになるだろうし」


 握手するために手を差し出してみたけど、戸惑っているみたい。

 

 伸ばした手の前で、彼女は一瞬だけ動きを止めた。

 ……あ、もしかして、苦手だった?


「ご、ごめん。いきなり握手とか怖かった?」


「大丈夫。ただ、いつもみんな無理やり握る人が多かったから」


 なんじゃそりゃ。普通に考えてみて気持ち悪い。

 だって、知らない人がいきなり手を握るんだよ?普通に考えて怖い。


 月ノ宮さん、顔整っているしお金持ちだから、絶対によこしまな考えを持たれている。


「でも、よろしく。これからしばらくお世話になるね」


 そっと、指先だけだけど握り返される。


 これでひとまずは良いのだ。


「おー、結芽ちゃんもう来てたのか。長期休暇だって言うのに朝早いねぇ」


「久志さん、おはようございます。……って、その隈と大荷物どうしたんですか?」


 ドアの開く音に振り向くと、すっかり萎びれた様子の久志さんが、ドアを支えに立っていた。

 

 その後ろには見知らぬ女性が一人。

 綺麗めなスーツを着た彼女は、久志さんと同様くたびれていた。


 この大人たちにはいったい何があったのだろう?


「結芽ちゃんこそ、どうしてそんなに身軽なんだ」


「え? 今日、何か持って来るものあったんですか?!」


「メール、見てないのか」と目を丸くする久志さんの様子に、嫌な予感を覚える。


 携帯の画面を付けると、そこには『特殊任務について』と題された久志さんからのメールが……!


「すみません、全く見ておりませんでした」


「まぁ、正直早く来ていたからある意味助かったわ」


 彼は頭を掻きながら今度は月ノ宮さんの方を見る。


 彼女のことを認識してやっと目が覚めたのか、彼は後ろにのけぞる。


「驚いた。萌黄の嬢ちゃんが遅刻しないなんて……」


「久志さん。いささか失礼すぎません?」


 普通、こんなことを言われたら誰だってキレるでしょう……。


 その本題の彼女を見て見ると、別に怒っている様子は見られない。

 と言うよりも、しょぼんとうなだれている。


「今日は、兄さんに叩き起こされたから、早く来られたから否定しないよ」


 あ、遅刻癖があるのは本当なんだ。


 久志さんのあきれ具合から普段からもやっていそうだな、これは。


「まぁ、この短期間で仲良さそうで何よりだわ。なんせ、今回の任務は()()()()()()()()()で行うものだからな」


 え?

 それって、相当まずくないか。


 つまり、久志さんも加わるってことでしょ?

 わざわざ久志さんも加わらなくちゃいけない任務って、どんな任務?


「それに際するのと、今本部が緊張状態だからな。その避難も込めて、萌黄の嬢ちゃんは移動してきた」


「だから、仲良くな」と締めた久志さんは、仮眠を取ろうとソファに横たわる。


 待って、今だけは寝ないで。

 色々聞きたいことがあるんだけど?!


「あの、久志さん。それって本当に私たちの行う任務ですか?」


「それに関しては私から説明させてただきます」


 それまで無言を貫いていた女性が、言葉を紡ぐ。


 申し訳なさそうに俯いているってことは、この人が任務を持ってきたのかな?


「詳しいことは皆さまが揃ってからお話いたします。とりあえず端的に言えば、皆様にはある人の保護を行ってほしいのです」

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