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レガリアス・カード~真白の乙女は七彩の夢を見る~  作者: ほっとけぇき
青の章:悩める少女よ、その心で自由を描け

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第20話 その意思の名は【自由】≪side 美緒≫

≪美緒視点≫

「はぁ、はぁ。なんとか撒けた」


 結芽を背負いながらなんとか、さっきの場所まで戻って来たけど、もうすでにへとへとだ。

 もう何も考えずに倒れこみたい。


 でも、まだやらなくちゃいけないことがある。


「あのクルイモノは、どこにいる?」


 結界が内側から破られた感じはしないし、誰かの動く気配もない。


 もしかして、まだ眠っているのかな?

 それが一番いいけど、目覚めていてさっきまでの穏やかさが消え失せていたとしたら。


 考えるだけでも背筋が凍る。


「早く見つけないと。手遅れになる前に」


 とはいえ、私の体も限界に近い。

 こんな全身が泥の中に沈んだような状態のまま駆け付けたところで、足手まといになる。


 少し、休もう。もちろん、敵を警戒しながら、息を潜めて。


「そう言えば、これってどうやって解くのかな?」


 がむしゃらに動いてきたからすっかり忘れていたけど、これって武装よね?


 解かなきゃずっと霊力消費をしていることになる。

 このままじゃ、霊力切れで倒れること間違いなしだ。


 1回霊力の供給を止めてみるか。

 武装は多大な霊力を使うって言うし。


「ふぅ、なんとか解けたわ」


 武装を解くと私の手の中に、あの筆と一枚の青いカード。そして、結芽の日記帳が現れた。


 結芽の日記帳は元の白色に戻っているけど、この青いカードを見るのは初めてだ。

 日記帳の表紙と同じ模様が描かれているそれは、まだ仄かに熱を帯びている。


『――人間』


 ん?今、どこから声がした?

 結芽はまだ気絶しているし、喋れる人間は私一人だけ。


 低い男性の声なんてするはずがない。


『こっちだ。我はここにいる』


 カードが青く光ったかと思うと、青い霧が人の形を成し始めた?!


 え、こんなの結芽から聞いていない。

 

『ふむ、御子(みこ)は汝に伝えておらんのか。否、まだ知らぬのか』

 

 一人納得するように頷いたその霧は私を吟味するように見つめる。


 いったい彼は何をなにを考えている?そして、御子は結芽のことでいいのかな?


「あなたは一体誰なの?」

『我か?我は【青】の【レガリアス】だ。汝が手にしているそのカードに宿りしものだ』

「【レガリアス】?初めて聞いた」


 いや、正確に言えば結芽がたまに独り言で【レガリアス】と言っているのは聞いた。

 けど、それが何を指しているのかは知らなかった。


 自慢げに揺れていた光の影は自信なさげに小さくなる。

 

『簡単に言えば、我ら【レガリアス】はありとあらゆる意志を持って戦った全ての人たちの象徴だ』

「全ての人たちの象徴」


【レガリアス】って言葉から、何らかの象徴であることはなんとなく想像できる。

 まさか、その背後から『戦う』なんて重い言葉が出てくるとは思わなかったけど。


 でも、今の説明を聞いて腑に落ちた。

 背負うものが大きいからこそ、彼らを媒体にした武装はあそこまで強力なのだ。

 

『そうだ。故に、我らを扱うためには強靭な意志と肉体が必要になる』

「あなたの力を私が扱えたってことは、私はあなたを満足させられたってこと?」

『うーん、惜しい』

 

 彼はもう一度私を覗き込む。

 この行為に一体何の意味があるのだろうか。


 ジッと何かを見定められるように見られるのはあんまり好きじゃないのに。


『本来なら、もっと段階を踏んでから汝に扱わせようと思った。だが、御子がこのような状態だ。致し方なかったのだ』

「緊急事態だったからってことね」

『あぁ。別に今の汝でも扱えぬわけではない。ただ、迷いが見える』


 彼が私の何を見て、『迷い』だなんて言葉を出したのかは分からない。

 その言葉が胸にすとんと落ちてきたのは確かだ。


『我の司る意思は【自由】だ。【自由】なものに迷いなど不要であろう?』


 なんて無邪気で残酷な言葉なのだろう。でも、彼が言っていることは間違っていない。

 本当にそれだけなのかと言う疑問は心の中に残るけど。

 

『あくまでこれは我の答えだ。汝は汝で【自由】に関する答えを1つ見つけて来い』


 ――さすれば、汝は我を完全に扱えるようになるだろう。


 彼はそう一言告げて、空気の中に溶けていく。


「自由、か」


 私は自分自身が自由だなんて思えない。

 それなのに、どうして彼は私を選んで、期待しているのだろう。


 私よりも【自由】な人は何人だっているのに、私を選んだのはなぜ?


「みんなのところへ、行かなくちゃ」


 足を一歩踏み出したその瞬間、景色が反転した。


「ゴメンね、オネエサン」


 最後に聞こえた声は幼く、悲しみに震える。

 うっすらと開かれた視界で見えたクルイモノは、最初に会った時よりも

人の形をとっていた。


 去り行く彼の背に手を伸ばすことも叶わない。



 次に目を覚ますと、白い天井が見えた。多分、施設か病院のどちらかだろう。


 頭を動かしてみると、隣には結芽が穏やかな顔で眠っていた。


 あぁ、良かった。私たち無事に帰れたんだ。


「結芽……」


 私はこれから、どうすればいい?

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