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第五話 見過ごせない

こちらは文をAIを使い、構成、キャラクター設定、舞台設定、話の原文、セリフの1部を私が作成しています。

 その夜。

 椿は珍しく寝つけなかった。

 エアコンの送風音だけが静かな部屋に響いている。

 時計を見る。

 午前一時を過ぎていた。

「……寝ないと。」

 そう思って目を閉じても、頭に浮かぶのは桜のことばかりだった。

 右足から踏み出したこと、

 近すぎる距離、

 髪をかき上げなかったこと、

 考えるほど、自分でも呆れてしまう。

 そんなことで人を疑うなんて、どうかしている。

「……疲れてるだけか。」

 洞窟の出来事が頭に残っているから、何でも結び付けてしまう。

 きっとそれだけだ。

 そう結論づけ、ようやく眠りについた。

 ◇

 翌朝。

「おはよう。」

 教室へ入ると、桜がいつもの席から手を振った。

「おはよう。」

 椿も短く返す。

 昨日までなら何も考えず隣へ行っていただろう。

 けれど今日は、一瞬だけ足が止まる。

 ――普通にしろ。

 心の中で自分に言い聞かせる。

 桜は何も悪くない。

 勝手に疑っているのは自分だ。

「何?」

「いや、眠そう。」

「ちょっと寝不足。」

「珍しいじゃん。」

 桜はそう言って笑った。

 その笑顔は、やっぱりいつもと変わらない。

 だからこそ椿は、自分が最低なことを考えている気分になった。

 昼休み。

 購買でパンを買い、教室へ戻る途中だった。

「あ。」

 廊下の先で、小柄な女子生徒がバランスを崩した。

 抱えていたプリントが床へ散らばる。

「あっ、ご、ごめん……!」

 女子生徒は慌ててしゃがみ込む。

 その瞬間。

 桜が駆け寄った。

「大丈夫?」

「あ、ありがとう。」

「俺も拾う。」

 二人でプリントを集め始める。

 その光景を見て、椿は少し安心した。

 困っている人を放っておけない。

 それは桜らしい。

 ……そう思った矢先だった。

 プリントを拾い終えた桜は、女子生徒へ笑顔を向ける。

「気を付けて。」

「うん!」

 女子生徒は何度も頭を下げ、廊下を走っていった。

「桜。」

「ん?」

「優しいな。」

「え?」

「相変わらず困ってる人助けてるから。」

「当たり前じゃん。」

 その返事も自然だった。

 なのに。

 椿の胸には、また小さな棘が刺さる。

 桜は優しい。

 昔からそうだ。

 でも今の「優しさ」は、どこか演技を見ているような感覚があった。

 相手が困っているから助けた。

 ではなく。

何が打算があるような

 そんな、一枚挟まっているような違和感。

「……。」

 自分でも意味が分からない。

 優しさに本物も偽物もあるわけがない。

 それでも。

 長年見てきた桜とは、ほんの少しだけ何かが違う。

 放課後。

 いつものように二人で校門を出る。

 歩き始めてすぐ、桜が何気なく口を開いた。

「椿。」

「ん?」

「昨日さ。」

 桜は少し笑って続ける。

「寝る前、俺のこと考えてた?」

 椿の足が止まった。

「……なんで?」

「なんとなく。」

 桜は悪びれもなく笑う。

「そんな気がした。」

 冗談。

 ただの軽口。

 そう受け取れば、それで終わる一言だった。

 なのに。

 椿の背中を、冷たいものがゆっくりと這い上がる。

 桜は昔から人の変化に敏感だった。

 でも、こんな言い方はしない。

 相手の心を探るような言葉は。

 言わない。

 桜は首を傾げた。

「椿?」

「……いや。」

 椿は無理に笑う。

「何でもない。」

 笑えたはずだった。

 けれど胸の奥では、昨日まで曖昧だった違和感が、少しずつ形を持ち始めていた。

 ――もし。

 本当に、桜じゃないとしたら。

 その考えはあまりにも馬鹿げていて、自分でも笑ってしまうほど現実離れしていた。

 だから椿は、その言葉を心の奥へ押し込める。

 まだ。

 まだ証拠は一つもないのだから。

基本的には、1週間以内に更新する予定です。

すこしでも気に入りましたら⭐をしてくださるとモチベになります!

お盆は毎日更新する予定です。

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