第三話 おかえり
こちらは文をAIを使い、構成、キャラクター設定、舞台設定、話の原文、セリフの1部を私が作成しています。
あの日から三日が過ぎた。
洞窟で起きた出来事は、不思議なほど話題にならなかった。学校が始まり、宿題があり、部活へ向かう生徒たちの声が校舎に響く。夏休み前と何も変わらない日常。変わったことがあるとすれば、椿が時々、あの洞窟のことを思い出すようになったくらいだった。
あの紙。裂ける音。
そして、最後に聞こえた笑い声。思い返すたびに現実味が薄れていく。暑さで疲れていただけだったのかもしれない。二人とも同じように聞こえたのなら、思い込みが重なっただけなのかもしれない。そう自分に言い聞かせることもできた。
だから椿は、それ以上考えないようにしていた。
しかし、その日の夕方。
桜は待ち合わせの時間になっても現れなかった。校門の前。腕時計の針は午後四時三十分を過ぎている。
「……珍しい。」
スマートフォンを取り出し、メッセージを送る。
『帰るぞ』
既読は付かない。十分待った。二十分待った。返信はない。
「何かあったのかな。」
電話を掛ける。呼び出し音だけが続き、やがて留守番電話へ切り替わった。桜が連絡もなく待ち合わせに来ない。そんなことは、ほとんど記憶になかった。椿は校門を離れ、自転車を走らせた。村の大通り。コンビニ。橋の近く。いつもの場所を探しても姿はない。日が沈み始める頃、桜の家へ向かった。インターホンを押す。しばらくして玄関が開き、桜の母親が顔を出した。
「あら、椿くん。」
「こんばんは。」
「桜ならまだ帰ってないのよ。」
「……え?」
「昼過ぎにちょっと出掛けるって言って、それっきり。」
椿は思わず時計を見る。午後六時四十分。もう外は薄暗い。
「連絡は?」
「電話も出ないの。」
桜の母親は困ったように笑った。
「そのうち帰ってくると思うんだけどね。」
その笑顔が、どこか無理をしているように見えた。椿は軽く頭を下げる。
「もし帰ったら、連絡もらえますか。」
「もちろん。」
家を出る。自転車にまたがったものの、すぐには漕ぎ出せなかった。嫌な予感が胸に広がる。理由は分からない。ただ、落ち着かなかった。
――まさか。
頭に浮かんだのは、山だった。
洞窟。
祠。
あの日。
椿はペダルを踏み込んだ。
夕暮れの山道を、一人で駆け上がる。
木々の隙間から吹く風は昼間より冷たく、蝉の声もどこか遠い。洞窟へ辿り着く頃には、空は藍色へ変わっていた。
「桜!」
呼び掛けても返事はない。
懐中電灯を照らしながら中へ入る。一本道を走る。息が切れる。祠のある広間へ飛び込んだ。
「……っ。」
誰もいない。祠も、そのままだ。ただ一つ。あの日見た紙の縄だけが、跡形もなく消えていた。椿はその場に立ち尽くす。
何が起きた。
何が起きている。
何も分からない。
その夜。桜は帰ってこなかった。村中が少しだけ騒ぎ始める。警察にも連絡が入り、大人たちは「山で遭難したのかもしれない」と話していた。椿だけは違う場所を見ていた。あの洞窟の奥。もう何も縛るものがなくなった、あの古い祠を。
そして翌朝。
教室の扉が開き、一人の男子生徒がいつも通り笑った。
「おはよう。」
聞き慣れた声だった。教室にいた何人かが一斉に振り向く。
「お、桜!」
「昨日どこ行ってたんだよ!」
「みんな心配してたぞ!」
桜は頭をかきながら、困ったように笑う。
「いやさ、秘密基地で昼寝してたら、そのまま寝ちゃって。」
教室が一瞬静まり返る。
「起きたらさ、次の日の三時だったんだよ。マジでびっくりしたわ。」
周りから笑いが起こる。
「いや寝すぎだろ!」
「どんだけ爆睡してんだよ!」
「だから電話も出なかったのか!」
「スマホ? 電池切れてた。」
桜は悪びれる様子もなく肩をすくめた。
「親にはめちゃくちゃ怒られたけど。」
「そりゃそうだろ!」
再び笑いが広がる。その場にいた誰もが、その話を信じた。
昔から桜はどこでも眠れる。授業中だろうと、バスの中だろうと、部室だろうと、気づけば寝息を立てていることも珍しくなかった。だからこそ、「秘密基地で寝過ごした」という話は、あまりにも桜らしく感じた。
椿を除いて。
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