第二十四話 いつもの放課後
こちらは文をAIを使い、構成、キャラクター設定、舞台設定、話の原文、セリフの1部を私が作成しています。
翌日。
昼休みが終わる頃には、椿はもう山のことしか考えていなかった。
猟師はいつまでいるのか。
別の入口はないのか。
白い蛇は無事なのか。
そんな考えが頭の中を巡り続ける。
放課後。
終礼が終わると、椿は鞄を持って立ち上がった。
「椿。」
桜?が声を掛ける。
椿は小さく息を吐いた。
「……何?」
「コンビニ寄ろ。」
「今日はいい。」
「じゃあ。」
桜?は少し考え、すぐに笑った。
「アイス奢る。」
「いらない。」
「ジュース。」
「いらない。」
「肉まん。」
「夏だぞ。」
「あ、そっか。」
思わず桜?が笑う。
そのやり取りに、周りのクラスメイトまで笑い出した。
「相変わらずだなお前ら。」
「ほんと仲いいよな。」
そんな声が飛ぶ。
椿は何も返さない。
教室を出ようとすると、桜?も自然についてきた。
◇
結局。
椿は断り切れず、村唯一のコンビニへ来ていた。
自動ドアが開く。
冷たい空気が流れ出す。
桜?は迷わず飲み物売り場へ向かった。
「椿。」
冷蔵庫を開けながら振り返る。
「これ好きだったよね。」
差し出されたのは、椿が昔からよく飲んでいた黒い炭酸だった。
椿は少し驚く。
「……覚えてたのか。」
「もちろん。」
桜?は笑う。
「椿のことだもん。」
その一言に、椿は複雑な表情を浮かべる。
レジを済ませると、桜?は当たり前のように二人分の代金を払った。
「いい。」
椿が財布を出そうとすると、
「今日は俺。」
と笑って首を振る。
「昨日ゲーム付き合ってくれたお礼。」
「頼んでない。」
「俺がしたいだけ。」
そう言ってジュースを手渡す。
椿は少し迷ってから受け取った。
「……ありがとう。」
「うん。」
その短い返事だけで、桜?は嬉しそうに笑った。
◇
店を出る。
夕日が田んぼを橙色に染めていた。
桜?はジュースを飲みながら歩く。
「今日は橋、行こ。」
「……。」
「少しだけ。」
椿は橋の方を見る。
あそこは、本物の桜との思い出が一番多い場所だった。
本当なら行きたくない。
でも。
行けば、何か分かることがあるかもしれない。
「十分だけ。」
椿は小さく言った。
桜?の顔がぱっと明るくなる。
「ほんと?」
「ああ。」
「じゃあ急ご。」
その笑顔は無邪気だった。
まるで昔の桜と同じように。
橋へ向かう途中、桜?は学校であった他愛ない出来事を話し続ける。
クラスメイトの失敗。
先生の口癖。
購買の新しいパン。
椿はほとんど相槌しか打たない。
それでも桜?は気にせず話し続ける。
その姿を見ながら、椿はふと思う。
この怪異は。
桜になろうとしているのではない。
桜として、この先も椿と新しい日常を積み重ねようとしているのではないか。
それを思ってしまった気付いた瞬間。
胸の奥に、言いようのない恐怖が静かに広がっていった。
橋へ着く頃には、空はゆっくりと茜色へ染まり始めていた。
川の水面が夕日を映し、風に揺れてきらきらと光る。
椿は欄干にもたれ、缶ジュースのプルタブを開けた。
炭酸が小さな音を立てる。
隣では、桜?も同じようにジュースを飲んでいた。
しばらく、二人とも何も話さない。
その沈黙は不思議と苦しくなかった。
「……ねぇ。」
先に口を開いたのは桜?だった。
「覚えてる?」
「何を?」
「あそこ。」
橋の下を指差す。
「俺が転んで泣いた場所。」
椿は川へ目を向ける。
「覚えてる。」
「また笑ってる。」
「笑うだろ。」
「もう忘れてよ。」
「一生無理。」
桜?は肩を落として大げさにため息をつく。
「あーあ。黒歴史だ。」
その言い方に、椿は思わず口元が緩んだ。
昔も、こんなやり取りをした。
何度も。
何度も。
その瞬間だった。
桜?は椿の表情を見て、嬉しそうに笑った。
「やっと笑った。」
椿の笑みが止まる。
「最近さ。」
桜?は少し照れくさそうに頭を掻いた。
「椿、全然笑ってくれなかったから。」
その言葉に返せる言葉が見つからない。
「笑ってくれると安心する。」
桜?は川を見つめながら呟く。
「……だから、もっと笑って。」
椿は缶を握る手に力を込めた。
その願いは。
昔の桜なら、きっと口にはしない。
桜は、人の笑顔を見返りとして求める人間じゃなかった。
ただ一緒に笑っている。
それだけで満足するやつだった。
「……無理だ。」
小さく答える。
桜?は首を傾げる。
「どうして?」
「お前を見て笑うたび。」
椿は真っ直ぐ前を向いたまま言う。
「本物の桜を裏切ってる気がする。」
風が吹く。
稲穂が一斉に揺れた。
桜?は何も言わない。
長い沈黙のあと、小さく笑った。
「椿らしい。」
「……。」
「そんなところが好き。」
その一言に。
椿はゆっくりと振り向く。
「今、何て言った。」
桜?は自分でも驚いたように目を瞬かせる。
「え……。」
「好きって言ったか。」
数秒の沈黙。
桜?は困ったように笑って首を振る。
「あ……違う。そういう意味じゃなくて。」
言葉を探すように視線を泳がせる。
「えっと……。」
珍しく焦っている。
いつもなら、すぐに言い換えられるはずなのに。
「人として。」
ようやく絞り出す。
「そういうところ、いいなって。」
椿はしばらく黙っていた。
やがて視線を川へ戻す。
「……二度と。」
静かな声だった。
「勘違いされる言い方はするな。」
桜?は少しだけほっとしたように息を吐く。
「ごめん。」
また謝る。
椿はその謝罪を聞き流しながら、胸の奥で別のことを考えていた。
今の言葉は。
言い間違えたのか。
それとも。
あれが、本音だったのか。
風が橋の上を吹き抜ける。
二人とも、しばらく黙って川を眺めていた。
先に口を開いたのは、桜?だった。
「……ねぇ。」
椿は返事をしない。
それでも桜?は続けた。
「なんで俺じゃ駄目なの?」
その声には怒りも悲しみもなかった。
ただ、本当に分からないことを尋ねるような、不思議な響きだった。
「俺。」
自分の制服を見下ろす。
「仕草も。」
指先をゆっくり開く。
「話し方も。」
椿を見る。
「何もかも、ちゃんと桜みたいにしてるのに。」
少しだけ笑う。
「それでも、桜じゃなきゃ駄目なの?」
椿は静かに桜?を見つめた。
夕日に照らされたその顔は、親友そのものだった。
けれど。
その問いだけは、絶対に桜が口にしないものだった。
桜?は椿が答えないことに気付くと、自分で小さく笑った。
「あ、」
頭を掻きながら苦笑する。
「当たり前か。」
少し肩を落とす。
「ごめん。」
もう一度、小さく笑う。
「ごめん、ごめん。」
その笑顔はどこかぎこちなく、自分をごまかすような笑みだった。
椿は缶ジュースを欄干へ置く。
「…分からないのか。」
静かな声だった。
桜?は首を傾げる。
「何が?」
「何で、お前じゃ駄目なのか。」
桜?は少し考え込むように視線を落とした。
「…うん。」
素直に頷く。
「分からない。椿が好きな桜になれば。」
少しだけ笑う。
「椿も、また笑ってくれると思った。」
椿はゆっくりと目を閉じた。
「だから、お前は駄目なんだ。」
桜?は息を止める。
椿は静かに続けた。
「桜は。」
遠くの夕焼けを見つめる。
「俺が笑うために、生きてたわけじゃない。」
その一言に。
桜?は何も言えなかった。
「桜は桜だから、一緒にいたかった。」
椿はゆっくり振り返る。
「お前は。」
一瞬だけ言葉を切る。
「『桜』を真似してだけ、『桜』じゃない。」
橋の上に沈黙が落ちる。
桜?はしばらく俯いていた。
やがて、小さく、本当に小さく呟く。
「……難しいな。」
その言葉は、誰に向けたものでもなかった。
基本的には、1週間以内に更新する予定です。
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