第二十話 桜の部屋
こちらは文をAIを使い、構成、キャラクター設定、舞台設定、話の原文、セリフの1部を私が作成しています。
椿は山をもう一度見上げた。
猟師たちはまだ山道を塞いでいる。
今から無理に入れば、確実に止められる。
「……分かった。」
小さくそう言うと、桜?は驚いたように目を丸くした。
「来る。」
「え?」
「話があるんだろ。」
一瞬だけ沈黙が流れる。
やがて桜?は、どこか安心したように笑った。
「……うん。」
◇
桜の家は、小学生の頃から何度も遊びに来た場所だった。
玄関を開けると、見慣れた匂いが鼻をくすぐる。
「ただいま。」
桜?がそう言う。
リビングからは返事がない。
「母さん、まだ仕事。」
靴を脱ぎながら振り返る。
「上、行こ。」
椿は黙ってあとに続いた。
◇
部屋の扉が開く。
「どうぞ。」
そこは、何も変わっていなかった。
勉強机。
本棚。
制服の掛かったハンガー。
壁には去年の文化祭で撮ったクラス写真。
窓際には、小学生の頃に二人でゲームセンターで取ったぬいぐるみが並んでいる。
全部、本物の桜の部屋だ。
椿は部屋を見回しながら、小さく息をついた。
「懐かしい?」
桜?が笑う。
「……。」
「最近あんまり来なかったもんね。」
椿は返事をしない。
椅子を勧められても座らず、部屋の中央に立ったままだった。
桜?は冷蔵庫から持ってきたペットボトルのお茶を机へ置く。
「飲む?」
「いらない。」
「そっか。」
自分だけキャップを開け、一口飲む。
部屋に静寂が落ちた。
先に口を開いたのは椿だった。
「何が話したい。」
桜?は少し考えるように視線を落とした。
「……椿。」
「何。」
「俺のこと。」
ゆっくり顔を上げる。
「怖い?」
椿は迷わなかった。
「ああ。」
その一言に、桜?は苦笑する。
「やっぱり。」
「でも。」
椿は続けた。
「怖いのは、お前だからじゃない。」
桜?は黙って聞いている。
「桜の顔で。」
「桜の声で。」
「桜の思い出を話す、お前が怖い。」
部屋の空気が少しだけ重くなる。
桜?は静かに目を伏せた。
「……ごめん。」
「謝るな。」
「癖なんだ。」
「癖?」
桜?は困ったように笑う。
「気付いたら、桜みたいに話してる。」
その言葉に、椿はぞっとした。
桜?は続ける。
「最初は、うまく話せなかった。」
「でも。」
「みんなが桜として接してくれるから。」
自分の胸に手を当てる。
「少しずつ、桜になっていった。」
椿の拳が震える。
「……なるな。」
低い声だった。
桜?は顔を上げる。
「桜になるな。」
椿は部屋中を見回した。
写真も。
机も。
ぬいぐるみも。
全部、本物の桜が生きてきた証だ。
「お前は桜じゃない。」
その言葉に、桜?は悲しそうに笑った。
「うん。」
「知ってる。」
短い返事。
否定もしない。
言い返しもしない。
ただ静かに受け入れていた。
その様子を見ていると、椿には一つだけ分からないことがあった。
「……なあ。」
「何?」
「お前。」
椿は真っ直ぐその目を見る。
「何でそこまで、俺に執着するんだ。」
部屋がしんと静まり返る。
桜?の笑みが、ゆっくりと消えていった。
桜?は椿の問いに、しばらく黙っていた。
部屋に時計の秒針だけが響く。
やがて、小さく息を吐き、困ったように笑った。
「……桜が見つかったら。」
椿は黙って聞いている。
「教えてあげる。」
それだけ言うと、桜?は立ち上がった。
「それよりさ。」
テレビ台の前へしゃがみ込み、ゲーム機の電源を入れる。
電子音が静かな部屋に響いた。
「ゲームしながら話そ。」
コントローラーを二つ取り出し、そのうち一つを椿へ差し出す。
「こんな尋問みたいな空気、嫌だよ。」
いつもの桜のように笑う。
「ほら。」
ソフトをセットする。
画面に見慣れたロゴが映し出された。
「マリカーでもやろ。」
椿は差し出されたコントローラーを見つめる。
小学生の頃。
雨の日になると、二人で何時間も遊んだゲームだった。
負けるたびに桜が悔しがって。
椿が笑って。
そんな思い出が次々と蘇る。
「……。」
その思い出まで利用されているようで、胸が苦しくなる。
「やらない。」
椿は静かに言った。
桜?はコントローラーを持ったまま、首を傾げる。
「どうして?」
「そのゲームは。」
椿はテレビから目を逸らした。
「桜とやる約束だからだ。」
一瞬だけ、桜?の笑顔が消えた。
部屋が静まり返る。
数秒後。
桜?は何も言わず、差し出していたコントローラーをゆっくり引き戻した。
「……そっか。」
その声は小さかった。
ゲームのタイトル画面では、陽気なBGMが流れ続けている。
その明るさだけが、この部屋の空気からひどく浮いていた。
桜?はテレビを消さず、画面をぼんやり見つめたまま呟く。
「本物の桜と。」
椿を見ることなく続ける。
「ゲームしたいでしょ。」
椿は何も答えなかった。
答えられなかった。
部屋には、デモ画面の音楽だけが静かに流れ続けていた。
少しだけ間が空いた。
桜?は椿の返事を待っていたが、やがて無理に勧めるのを諦めたように小さく笑う。
「……そっか。」
コントローラーをもう一つ箱へ戻す。
「じゃあ。」
桜?は自分の分だけを手に取った。
「俺がやるから見てて。」
ゲームを起動しながら、振り返って笑う。
「やりたくなったら、一緒にやろ。」
椿は何も言わない。
テレビから軽快なスタート音が鳴る。
キャラクターを選び、コースを決める。
桜?は慣れた手つきでレースを始めた。
昔と同じように。
アクセルを踏みっぱなしで。
カーブでは少し大げさなくらい身体を傾ける。
その癖まで、本物の桜と変わらない。
――違う。
椿は心の中で否定する。
変わらないんじゃない。
真似をしている。
画面の中では、桜?の操作するキャラクターが一位を走っていた。
「危なっ。」
そう言って笑う。
アイテムを避け、ドリフトを決める。
その様子を見ていると、一瞬だけ、本当に桜がそこにいるような錯覚に陥る。
「……。」
椿は拳を握った。
駄目だ。
騙されるな。
その時だった。
レース中にもかかわらず、桜?がぽつりと呟く。
「椿。」
「……何。」
「昔さ。」
画面から目を離さずに続ける。
「負けると、椿すぐ本気出してきたよね。」
椿は黙った。
確かにそうだった。
わざと手加減していたのが、桜に一度勝たれると急に本気になる。
そのたびに桜は、
『大人気ない!』
と笑っていた。
桜?も、小さく笑う。
「やりたいな。」
その言葉は、誰に向けたものだったのか。
椿には分からなかった。
ただ一つ分かったのは。
目の前の桜?は、思い出を話しているのではない。
思い出を、これからも作ろうとしている。
それが何より恐ろしかった。
レースが終わる。
画面には"FINISH"の文字が大きく表示された。
桜?はコントローラーを膝の上へ置き、ちらりと椿を見る。
「……ね?」
椿は視線を向ける。
「少しだけ。」
照れくさそうに笑う。
「一回だけでいいから。」
コントローラーを差し出す。
「駄目?」
椿はしばらく黙っていた。
断るべきだ。
分かっている。
目の前にいるのは桜ではない。
それなのに。
部屋も。
テレビも。
ゲーム機も。
コントローラーも。
何もかもが、あの頃のままだった。
椿は小さく息を吐く。
「……一回だけだ。」
そう言ってコントローラーを受け取った。
桜?の表情がぱっと明るくなる。
「ほんと?」
「ああ。」
「やった。」
その笑顔を見て、椿の胸が少しだけ痛んだ。
基本的には、1週間以内に更新する予定です。
すこしでも気に入りましたら⭐をしてくださるとモチベになります!




