第十九話 嘘
こちらは文をAIを使い、構成、キャラクター設定、舞台設定、話の原文、セリフの1部を私が作成しています。
山道を下る間。
二人とも一言も話さなかった。
椿の腕はまだ桜?に掴まれたままだった。
振りほどこうと思えば、もう振りほどける。
けれど、椿はあえて抵抗をやめていた。
さっきの出来事を整理したかった。
白い蛇。
岩陰。
そして。
自分を無理やり洞窟から連れ出した桜?。
村へ続く舗装路が見えたところで、桜?はようやく手を離した。
「……ごめん。」
赤くなった椿の手首を見て、小さく目を伏せる。
指の跡がうっすらと残っていた。
「痛かったよね。」
椿は返事をしない。
「本当にごめん。」
「……。」
「でも。」
桜?は少しだけ困ったように笑う。
「今日は、あそこにいてほしくなかった。」
椿はゆっくり顔を上げる。
「どうして。」
「……。」
桜?は答えない。
ただ視線を逸らした。
「理由を言え。」
「言えない。」
「どうして。」
「……ごめん。」
また謝る。
理由は話さない。
その態度に、椿の中で何かが音を立てて繋がった。
「お前。」
静かな声だった。
「さっき言ったよな。」
桜?が顔を上げる。
「『探す』って。」
「……うん。」
「だったら。」
椿は一歩近付いた。
「俺が探して何が悪い。」
桜?は言葉を失う。
「俺が見つけた方が早いかもしれない。」
「……。」
「それなのに。」
椿は目を逸らさない。
「何で止めた。」
長い沈黙。
風が稲穂を揺らす音だけが聞こえる。
やがて桜?は、小さく息を吐いた。
「椿。」
「何。」
「危ないから。」
「嘘だ。」
即答だった。
桜?の表情が固まる。
「危ないなら。」
椿は続ける。
「『俺が探す』じゃない。」
一歩。
また一歩。
距離を詰める。
「お前。」
震える声で言った。
「見つけられたら困るんじゃないのか。」
その瞬間だった。
桜?の瞳が、わずかに揺れる。
本当に、一瞬だけ。
椿はその変化を見逃さなかった。
「……図星か。」
「違う。」
否定はした。
けれど、その声には今までのような余裕がなかった。
「違うよ。」
もう一度言う。
今度は自分に言い聞かせるように。
椿は静かに首を振った。
「もういい。」
「椿。」
「お前の言葉は。」
夕焼けに照らされた桜?を見る。
「もう、一つも信じない。」
その言葉は、ゆっくりと桜?の胸に突き刺さった。
桜?は何か言おうとして口を開く。
けれど、何も言えない。
言い訳も。
謝罪も。
慰めも。
何一つ届かないことを、初めて理解したように。
椿は自転車へまたがる。
「明日からは。」
ハンドルを握りながら言う。
「俺一人で探す。」
「来るな。」
ペダルを踏み込む。
夕暮れの道を走り去る椿の背中を、桜?は追いかけなかった。
ただ、その場に立ち尽くしたまま、小さく呟く。
「……それでも。」
誰にも届かない声だった。
「探しちゃダメ。」
その言葉だけが、沈み始めた夕焼けの中へ静かに溶けていった。
◇
翌日。
終礼のチャイムが鳴ると同時に、椿は教室を飛び出した。
今日はコンビニにも寄らない。
橋にも行かない。
向かう先は一つだけだった。
山。
自転車を全力で漕ぎ続ける。
昨日、無理やり連れ出された洞窟。
あの白い蛇に、もう一度会わなければならない。
山の入り口が見えてきた、その時だった。
見慣れない軽トラックが何台も止まっている。
「……?」
椿は自転車を止めた。
山道の入り口には、蛍光色のベストを着た男たちが数人立っている。
猟銃を肩に掛けた人もいた。
村の猟師たちだ。
「坊主。」
一人の初老の男が椿へ手を上げる。
「今日は山へ入るな。」
「え?」
「危ない。」
男は山の方を見ながら眉をしかめた。
「最近、マムシがやたら増えてる。」
「マムシ……?」
「ああ。」
別の猟師も会話へ加わる。
「こんな時期には珍しいくらい見掛ける。昨日なんか、一時間で五匹だ。山の奥じゃもっといるかもしれん。」
椿の胸がざわつく。
蛇。
偶然なのか。
それとも。
「今日は山狩りだ。」
猟師が猟銃を軽く叩く。
「危ない蛇を追い払う。だから今日は近付くな。」
椿は思わず山の奥を見つめた。
もし。
あの白い蛇がまだ洞窟にいるなら。
「……入らないと。」
小さく呟く。
「ん?」
「いえ。」
猟師が腕を組む。
「秘密基地でもあるのか?」
その言葉に、椿の肩がぴくりと動く。
「図星か。」
男は苦笑した。
「気持ちは分かる。でも今日は諦めろ。命の方が大事だ。」
椿は山道の奥を見つめ続ける。
風が木々を揺らす。
その向こうにある洞窟は、ここからでは見えない。
もし本当に猟師たちが山へ入れば。
あの小さな白い蛇も見つかってしまうかもしれない。
そんな不安が胸を締め付ける。
「……。」
どうする。
このまま帰るのか。
それとも、別の道を探すのか。
椿が動けずに立ち尽くしていると、不意に背後から自転車のブレーキ音が聞こえた。
「椿。」
聞き慣れた声。
振り返るまでもない。
"桜"だった。
"桜"は山の入口に集まる猟師たちを見ると、一瞬だけ表情を曇らせる。
しかし、その変化はすぐに消えた。
「やっぱり来てた。」
いつものように笑う。
「今日は無理みたいだね。」
そう言いながらも、その視線だけは、猟師たちのさらに奥――山の中を静かに見つめていた。
猟師たちの話し声が、山の入口に響いていた。
「今日は危ないぞ。奥まで入るなよ。」
誰かが笑いながらそう言う。
椿は山の奥を見つめたまま、唇を噛んだ。
あそこに桜がいるかもしれない。
それなのに。
何もできない。
「椿。」
隣から声がした。
"桜"だった。
猟師たちの様子を一度だけ見渡すと、困ったように笑う。
「今日はさ。」
少しだけ間を置く。
「俺の部屋で話そうよ。」
椿はゆっくりと"桜"を見る。
「……何で。」
「ここにいても入れないじゃん。」
穏やかな口調だった。
「だったらさ。」
にこりと笑う。
「今日はのんびり話そう。」
「話すことなんてない。」
椿は即座に返す。
"桜"は少しだけ肩を落とした。
「あるよ。」
「ない。」
「椿。」
その呼び方は優しい。
昔と何も変わらない。
「昨日、喧嘩みたいになっちゃったし。」
「……。」
「ちゃんと話したい。」
椿は何も言わない。
"桜"は続ける。
「俺のお母さん、今日仕事で遅いんだ。家には俺しかいないし。ジュースもあるよ。」
まるで、昔のように。
放課後、どちらかの家へ遊びに行こうと誘うような口調だった。
その何気なさが、椿の胸を締め付ける。
桜なら。
確かに、こんな誘い方をすることはあった。
けれど、今は違う。
目の前にいるのは桜ではない。
「……行かない。」
短く言う。
"桜"は少しだけ目を伏せた。
「そっか。」
それ以上、無理に誘おうとはしなかった。
ただ、山の方を一瞥して、小さく呟く。
「今日は、本当に危ないから。」
その言葉が。
椿には山の心配ではなく、山へ行かせないための言葉にしか聞こえなかった。
"桜"は椿の返事を待つように、その場で静かに立っていた
基本的には、1週間以内に更新する予定です。
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