第十七話 届かない名前
こちらは文をAIを使い、構成、キャラクター設定、舞台設定、話の原文、セリフの1部を私が作成しています。
翌日。
椿は授業が終わるのを待っていた。
黒板の文字は目に入る。
先生の声も聞こえている。
けれど、頭の中では別のことばかり考えていた。
――蛇は、また来るだろうか。
――昨日と同じ場所に。
終礼のチャイムが鳴る。
「じゃあ、また明日。」
担任が教室を出ていくと同時に、生徒たちが一斉に立ち上がった。
「椿。」
後ろから呼ばれる。
聞き慣れた声。
振り返らなくても分かる。
「今日もどっか行く?」
桜?だった。
椿は鞄を肩へ掛けながら首を振る。
「用事。」
「そっか。」
桜?は少しだけ残念そうに笑った。
「終わったら連絡して。」
「……しない。」
「そっか。」
それだけ言うと、桜?は何も追及してこなかった。
椿は足早に教室を出る。
その背中へ向けられる視線だけが、いつまでも離れなかった。
◇
山へ着いた頃には、日は傾き始めていた。
椿は昨日と同じように洞窟へ入る。
祠の広間。
誰もいない。
静かな空気だけが流れている。
椿は懐中電灯を消した。
薄暗い洞窟に目が慣れるまで、その場でじっと待つ。
水滴が落ちる音。
遠くで羽虫が飛ぶ音。
それだけが聞こえる。
「……いるんだろ。」
返事はない。
椿は岩壁の隙間へ目を向けた。
「昨日、見えた。」
静かに話し掛ける。
「俺の見間違いじゃなかった。」
沈黙。
「もし。」
椿は少し息を吸う。
「もし、お前が桜なら。」
喉が締め付けられる。
「返事はしなくていい。」
返事なんてできない。
蛇なのだから。
「でも。」
一歩だけ岩壁へ近付く。
「聞こえてるなら。」
拳を握る。
「俺は諦めない。」
「絶対に。」
「お前を連れて帰る。」
その言葉が洞窟へ静かに響く。
しばらく待つ。
何も起こらない。
やっぱり、いないのか。
そう思った、その時。
カサッ……。
小さな音がした。
岩壁の隙間。
暗闇の奥から、白い頭がほんの少しだけ姿を見せる。
「……!」
椿は動かなかった。
追い掛ければ逃げる。
昨日、それは分かっていた。
「大丈夫。」
できるだけ優しく声を掛ける。
「怖がらなくていい。」
白い蛇はじっと椿を見つめている。
黒い瞳が、小さく揺れた。
「桜。」
その名前を呼んだ瞬間だった。
白い蛇の身体が、ぴくりと震えた。
椿の呼吸が止まる。
「……やっぱり。」
偶然じゃない。
今、確かに反応した。
白い蛇は逃げない。
ただ、その場で椿だけを見つめ続けている。
その瞳の奥には。
恐怖でも威嚇でもない。
懐かしさと、どうしようもない寂しさが滲んでいるように見えた。
「迎えに来た。」
椿はそっとしゃがみ込む。
「時間が掛かってもいい。絶対に助けるから。」
その言葉を聞いた白い蛇は、ゆっくりと目を閉じた。
まるで安心したように。
ほんの少しだけ、頭を下げた。
その仕草は。
昔、何かを頼む時に照れくさそうに笑っていた桜と、どこか重なって見えた。
椿は初めて確信する。
証拠なんて、どこにもない。
それでも。
あの白い蛇は、桜だ。
そう思わずにはいられなかった。
その時だった。
「──ねぇ。」
背後から声がした。
「椿。」
全身が強張る。
聞き慣れた声だった。
「何してるの?」
椿はゆっくりと振り返る。
洞窟の入口。
逆光の中に、一人の少年が立っていた。
桜。
……いや。
桜?だった。
いつの間に来たのか分からない。
足音は聞こえなかった。
そして。
その顔を見た瞬間、椿は息を呑んだ。
笑っていない。
昨日まで浮かべていた柔らかな笑顔はどこにもなかった。
感情のない瞳。
じっと椿を見つめるだけの、冷たい表情。
その視線は椿ではなく──。
椿のすぐ横。
岩壁の隙間へ向けられていた。
「……。」
洞窟の空気が張り詰める。
白い蛇は微動だにしない。
桜?も動かない。
二人の視線だけが、暗闇の一点で交差していた。
ほんの数秒。
それだけなのに、永遠のように長く感じる。
やがて。
桜?はふっと瞬きをした。
次の瞬間には、口元へいつもの笑みが戻っていた。
「ほら。」
困ったように笑う。
「椿。」
まるで何事もなかったかのような声。
「秘密基地には来ないって言ったよね。」
椿は答えない。
桜?はそのまま近付いてくる。
「門限。」
腕時計をちらりと見る。
「もうすぐでしょ?」
椿も反射的に自分の腕時計へ目を落とした。
午後六時二十二分。
門限まで、あと三十分もない。
「また怒られちゃうよ。」
優しい声だった。
心配しているようにも聞こえる。
「だから。」
桜?は祠の方へ目を向け、にこりと笑う。
「帰ろ?」
「……。」
「大丈夫。」
少しだけ首を傾げる。
「あとは俺が探しておくから。」
その一言で。
椿の胸に、図書館で読んだ古い紙の言葉がよぎる。
『目を合わせたら、連れて行かれる。』
そして、橋の上で交わした約束。
「見つけたら、一番最初に椿へ知らせる。」
あまりにも都合が良すぎる。
どうして。
どうしてそんなに、自分をこの洞窟から帰したがる。
椿は桜?を見つめる。
その笑顔は、どこまでも自然だった。
けれど。
その奥にある焦りだけは、もう隠し切れていなかった。
椿はゆっくりと視線を外し、岩壁の隙間を見る。
白い蛇の姿は、もう見えない。
それでも。
今ここで帰れば、もう二度と会えない気がした。
「ねぇ。」
桜?が、もう一度呼ぶ。
声は穏やかだった。
けれど、その穏やかさが妙に張り付いたもののように聞こえる。
「なんで帰らないの?」
椿は答えない。
桜?は一歩だけ近付いた。
「俺が探しとくから、いいよ?」
笑っている。
その笑顔は、教室で見せる桜と何一つ変わらない。
だからこそ、椿は寒気を覚えた。
「椿が怒られるのは嫌だからさ。」
優しい口調。
親友を気遣うような声音。
「ね。」
もう一歩。
「帰って。」
その一言と同時に、洞窟の空気が張り詰める。
椿は桜?の目を見つめた。
笑っている。
笑っているのに。
その瞳だけは少しも笑っていなかった。
まるで、何かを必死に隠しているような。
何かを焦っているような。
基本的には、1週間以内に更新する予定です。
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