第十六話 見つけたら
こちらは文をAIを使い、構成、キャラクター設定、舞台設定、話の原文、セリフの1部を私が作成しています。
「ここ、何だか落ち着く。」
その一言が、洞窟の中へ静かに溶けていく。
椿は返事をしなかった。
いや、できなかった。
目の前にいる桜?は、祠を見つめたまま穏やかな表情を浮かべている。
懐中電灯の光に照らされた横顔は、本物の桜と何一つ変わらない。
だからこそ恐ろしかった。
「……帰る。」
椿は短く言う。
もう、この場所にいたくない。
それ以上に、この桜?と二人きりでいることに耐えられなかった。
「うん。」
桜?は素直に頷いた。
抵抗もしない。
引き止めもしない。
二人は洞窟の出口へ向かって歩き始める。
足音だけが、静かに響く。
しばらく無言が続いたあと、不意に桜?が口を開いた。
「椿。」
「……何。」
「もし。」
少しだけ言葉を選ぶように間を置く。
「もし、本物の桜が見つかったら。」
椿の足が止まる。
「その時は。」
桜?は前を向いたまま続ける。
「……ちゃんと教える。」
椿はゆっくりと振り返る。
「信じられない。」
「うん。」
「お前の言葉は。」
桜?は少しだけ寂しそうに笑った。
「そうだよね。」
否定しない。
言い返しもしない。
その姿が、かえって椿の心をかき乱す。
「でも。」
桜?は静かに言った。
「見つけたら、一番最初に椿へ知らせる。」
「……。」
「約束する。」
椿はしばらく黙っていた。
約束。
その言葉が、ひどく軽く聞こえる。
相手が人間なら、少しは信じられたかもしれない。
でも目の前にいるのは、人ではない。
「約束なんて。」
椿は首を横に振る。
「守れるとは思ってない。」
その言葉を聞いても、桜?は怒らなかった。
「それでもいい。」
ただ、それだけ答えた。
洞窟を出ると、夕暮れの光が二人を包む。
蝉の鳴き声が一気に耳へ戻ってくる。
さっきまでの異様な静けさが嘘のようだった。
自転車を止めた場所まで戻る。
そこで桜?が足を止めた。
「じゃあ。」
いつものように笑う。
「帰ろ。」
椿はその顔を見つめる。
この笑顔は、本物の桜のものだ。
でも、その奥にいるのは違う。
「……ああ。」
短く返事をして、自転車にまたがる。
ペダルを踏み込んだ、その時。
視界の端。
山の斜面、草むらの陰で、小さな白いものが動いた気がした。
椿は反射的にブレーキを握る。
「……?」
目を凝らす。
だが、もう何も見えない。
風に草が揺れているだけだった。
「どうした?」
桜?の声が後ろから聞こえる。
「いや……。」
椿は首を横に振る。
「何でもない。」
そう答えながらも、心の中では別のことを考えていた。
――今のは。
もし、あれが本当に桜だったなら。
すぐ近くまで来ていたのに、姿を見せなかった。
近付けなかったのか。
それとも。
目の前にいる桜?を見て、隠れたのか。
その答えは、まだ誰にも分からなかった。
◇
山を下る道は、来た時よりも長く感じた。
自転車のタイヤが小石を踏む音だけが静かに響く。
後ろからは、一定の距離を保つように"桜"がついてきていた。
二人とも何も話さない。
夕焼けは少しずつ藍色へ変わり始めている。
村へ続く分かれ道まで来ると、"桜"が自転車を止めた。
「椿。」
「……何。」
椿も足を止める。
振り返ると、"桜"は少し言いにくそうに視線を逸らした。
「今日。」
「?」
「山で何か見つけた?」
椿の胸が小さく跳ねる。
「どうして?」
「ずっと何か探してたから。」
それだけだった。
自然な理由。
不自然なところは何もない。
「……何も。」
椿は短く答える。
嘘だった。
あの白い尾も。
蛇の這った跡も。
全部、胸の内へしまい込む。
"桜"はしばらく椿の顔を見つめていた。
やがて、小さく笑う。
「そっか。」
それ以上は聞いてこなかった。
そのことに、椿は少しだけ安堵する。
「じゃあ。」
"桜"がハンドルを握り直す。
「また明日。」
「ああ。」
今度こそ、それぞれの帰り道へ自転車を走らせる。
◇
その夜。
椿は机へ向かい、ノートを開いた。
新しいページの一番上へ、大きく書く。
『分かったこと』
一つ目。
洞窟では目が蛇のようになった。
二つ目。
白い蛇は祠の近くにいる。
三つ目。
まだ姿を現そうとしない。
そこまで書いて、鉛筆が止まる。
「……どうして。」
どうして隠れる。
もし本当に桜なら。
自分に会いたいはずなのに。
いや。
逆かもしれない。
目の前には、桜の身体をした"何か"がいる。
もし自分が蛇だったら。
あんなものの前へ姿を見せられるだろうか。
椿はノートを閉じ、天井を見上げる。
「待ってろ。」
誰に聞かせるでもなく呟く。
「絶対見つける。」
その頃。
山の洞窟では。
細い岩の隙間から、小さな白蛇がそっと顔を覗かせていた。
人の姿はもうない。
夕暮れも終わり、洞窟は深い闇に包まれている。
白蛇はゆっくりと広間へ這い出る。
誰もいなくなった祠の前まで来ると、小さく頭を下げた。
そして。
洞窟の出口――椿が帰っていった方向を、じっと見つめる。
黒い瞳に映るのは、もう誰もいない山道。
それでも、しばらく動かなかった。
やがて、小さく尾を揺らす。
まるで、人間だった頃のように。
「椿。」
そう呼ぼうとして。
喉から漏れたのは、かすかな空気の音だけだった。
言葉にならない。
名前を呼ぶことさえ、もうできない。
小さな白蛇は、ゆっくりと目を閉じる。
その姿を見ている者は、誰もいなかった。
基本的には、1週間以内に更新する予定です。
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