第十五話 山を探す
こちらは文をAIを使い、構成、キャラクター設定、舞台設定、話の原文、セリフの1部を私が作成しています。
翌日の放課後。
チャイムが鳴るより早く、椿は鞄を肩へ掛けていた。
「椿。」
教室の後ろから聞こえた声には気付かないふりをする。
そのまま廊下へ出て、昇降口へ向かった。
今日は誰とも帰らない。
一人で山へ行くと決めていた。
◇
夕方の山道は、人影一つなかった。
蝉の声だけが木々の間へ響いている。
椿は自転車を止めると、歩いて獣道へ入った。
「……桜。」
呼んでみる。
返事はない。
もちろん、返事が返ってくるとは思っていない。
それでも、あの小さな白蛇が本当に桜なら。
どこかで聞いているかもしれない。
祠へ向かう途中、何度か立ち止まる。
岩陰。
倒木の裏。
草むら。
懐中電灯で照らしながら、ゆっくりと歩く。
「いたら出てこい。」
自分でも無茶なことを言っていると思う。
蛇が人の言葉を理解するわけがない。
それでも足は止まらなかった。
やがて祠のある広間へ着く。
昨日と変わらず、静まり返っている。
椿はしゃがみ込み、地面を見渡した。
柔らかい土の上に、小さく細い跡が続いている。
「……。」
蛇が這ったような跡。
昨日まで気付かなかった。
跡は祠の裏を回り込み、そのまま岩壁の隙間へ消えている。
「ここか。」
椿は近付いてみる。
隙間は、人が腕を入れるのも難しいほど細い。
「……入れない。」
奥を照らしても、暗闇しか見えなかった。
その時。
かさり、と音がした。
椿は息を呑み、懐中電灯を向ける。
白い尾が、一瞬だけ光を反射した。
「待って!」
咄嗟に声を掛ける。
逃げるな。
そう言いたかった。
けれど白い影は、隙間のさらに奥へ消えてしまう。
「くそ……。」
椿は拳を握る。
あと少しだった。
確かに見た。
あの白い蛇は、この洞窟にいる。
その時だった。
洞窟の入口の方から、小石を踏む音が聞こえた。
誰かいる。
椿は慌てて懐中電灯を消した。
暗闇に目を凝らす。
足音はゆっくり近付いてくる。
一人分。
聞き慣れた歩幅だった。
「……椿?」
静かな声が洞窟に響く。
桜?だった。
椿の鼓動が速くなる。
どうしてここに。
黙って出てきたはずなのに。
「いるんでしょ。」
桜?は広間まで歩いてくる。
その声に反応したのか。
岩壁の奥から、かすかに石が転がる音がした。
椿は反射的にそちらを見る。
桜?も同じ方向へ視線を向ける。
一瞬。
ほんの一瞬だけ。
桜?の瞳に、何かを見つけたような色が宿った。
しかし次の瞬間には、その表情は消えていた。
「こんな所で何してるの。」
いつもと変わらない声だった。
椿は桜?の顔と、岩壁の隙間を交互に見る。
今の表情は何だったのか。
気のせいだったのか。
それとも――。
岩壁の奥は再び静まり返り、白い影はもう姿を見せなかった。
岩壁の隙間は、再び静まり返った。
さっきまで確かに聞こえていた物音も、もうしない。
「……。」
椿は目を離せなかった。
あそこにいた。
あと少しだった。
「椿。」
桜?がゆっくり近付いてくる。
「何探してるの?」
その声に、椿は視線だけを向けた。
「……関係ない。」
「教えてよ。」
また一歩近付く。
その瞬間だった。
洞窟の奥から冷たい風が吹き抜ける。
懐中電灯の光がわずかに揺れた。
桜?の前髪がふわりと持ち上がる。
椿は何気なく、その顔を見た。
「――っ。」
息が止まる。
目。
桜の目が。
細く縦に裂けていた。
人間の丸い瞳孔ではない。
蛇のように細長く、闇の中で鈍く光っている。
ほんの一瞬。
それだけだった。
桜?がゆっくり瞬きをすると、瞳は何事もなかったように元へ戻る。
「どうした?」
いつもの桜の声。
いつもの桜の顔。
さっき見たものが幻だったのではないかと思うほど自然だった。
だが、椿の背中を冷たい汗が伝う。
見間違いじゃない。
絶対に。
今、この目で見た。
「椿?」
桜?は心配そうに首を傾げる。
「顔色悪いよ。」
椿は思わず一歩後ずさる。
その反応を見た桜?が、不思議そうに眉を寄せた。
「俺……。」
少し寂しそうに笑う。
「そんなに怖い?」
その言葉にも返事はできない。
怖い。
違う。
恐ろしいのは、その顔が桜だからだ。
「……お前。」
掠れた声が漏れる。
「今。」
「?」
「目。」
桜?はぱちぱちと瞬きをする。
「目?」
「……何でもない。」
言えなかった。
言ったところで、「何のこと?」と返されるだけだと分かっていた。
洞窟の空気が重い。
息苦しい。
圧迫されるような感覚。
椿はもう一度、桜?の瞳を見る。
今度は何の変哲もない黒い瞳だった。
あまりにも普通で。
だからこそ、さっきの光景が頭から離れない。
桜?は小さく息を吐くと、椿の横を通り過ぎ、祠の方へ目を向けた。
「ここ。」
ぽつりと呟く。
「何だか落ち着く。」
椿の全身に鳥肌が立つ。
あの日。
あんなことがあった、この場所で。
桜がそんなことを言うはずがない。
椿はゆっくり拳を握り締めた。
今の瞳も。
この言葉も。
もう「違和感」では済まされない。
目の前にいる存在は、人間ではない。
その確信だけが、洞窟の冷たい空気とともに椿の胸へ深く沈んでいった。
基本的には、1週間以内に更新する予定です。
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