第十三話 昔話
こちらは文をAIを使い、構成、キャラクター設定、舞台設定、話の原文、セリフの1部を私が作成しています。
翌日の放課後。
椿は桜を避けるように教室を出た。
昇降口で靴を履き替え、自転車へ向かう。
「椿。」
後ろから声がした。
振り返らない。
聞こえなかったことにして、そのままペダルを踏む。
背後から追い掛けてくる気配はなかった。
◇
向かった先は村の図書館だった。
古い公民館と一緒になった、小さな建物。
利用者は少なく、夕方になると新聞を読む老人が数人いる程度だった。
自転車を止め、中へ入る。
冷房の効いた静かな空気が身体を包んだ。
受付の司書へ軽く会釈をして、郷土資料の棚へ向かう。
「白蛇……。」
小さく呟きながら背表紙を追っていく。
村史。
郷土伝承。
昔話集。
黄ばんだ本が並ぶ棚の隅で、一冊だけ妙に新しい冊子が目に留まった。
『○○村の伝承写し』
手に取り、近くの机へ座る。
ページをめくる。
祭り。
飢饉。
山崩れ。
どれも数十年前、あるいは百年以上前の出来事ばかりだった。
そして。
最後の方のページに、小さな見出しがあった。
『白蛇様』
椿の指が止まる。
ゆっくりと読み進める。
昔、この山には白蛇様が棲むと伝えられていた。
白蛇様は山の守り神とも、災いを呼ぶものとも言われ、 村人は祠へ供え物をしていた。
そこまでは、祖母から聞いた昔話と同じだった。
しかし、その続きに書かれていた一文で、椿は息を止める。
やがて供え物だけでは収まらぬようになり、 山へ近付く者は激減したという。
「……。」
ページをめくる。
だが、その先は破れていた。
肝心の部分だけが、誰かに切り取られたようになくなっている。
「何で……。」
思わず声が漏れる。
「きみ。」
突然、背後から声がした。
椿は肩を震わせて振り返る。
白髪の老人が一人、杖をつきながら立っていた。
「続きを読むつもりなら。」
老人は破れたページを見つめる。
「その本じゃ、最後まで分からんよ。」
椿は思わず立ち上がる。
「知ってるんですか。」
老人はすぐには答えなかった。
細い目で椿を見つめる。
その視線は、どこか椿を値踏みしているようだった。
「きみ。」
老人は静かに尋ねる。
「……あの山へ入ったか。」
椿の心臓が、大きく脈打った。
◇
「……あの山へ入ったか。」
老人の問いに、椿はすぐには答えられなかった。
図書館は静まり返っている。
ページをめくる音だけが、遠くから聞こえた。
「……はい。」
小さく頷く。
「友達と。」
老人は深く息を吐いた。
「そうか。」
それだけ言って、椅子へ腰を下ろす。
「今どきの子は、あそこへ行かんと思っとった。」
杖を膝へ立て掛けながら、懐かしそうに笑う。
「昔はよう遊んだもんじゃ。」
「知ってるんですか、あの祠。」
「ああ。」
老人は静かに頷く。
「わしが子どもの頃には、まだ年寄りが近付くなと言っとった。」
「どうしてですか。」
老人は少しだけ考え込む。
「理由までは聞いとらん。ただ。」
窓の外を見る。
「『封じとるもんがおる。』そう言っとった。」
椿は思わず息を呑む。
「封じてる……。」
「ああ。」
「何をですか。」
老人は首を横に振る。
「それは誰も知らん。白蛇様とも。山の神とも。化け物とも。人によって話が違う。昔話なんて、そんなもんじゃ。」
そう笑う。
しかし、その笑顔はどこかぎこちなかった。
「じゃあ。」
椿は慎重に尋ねる。
「もし……。」
一度言葉を飲み込む。
「もし、その封印が解けたら。」
老人の表情が止まる。
ほんの一瞬だった。
それだけで十分だった。
「坊主。」
老人は静かな声で言う。
「何か見たか。」
「……。」
答えられない。
答えたら。
もう後戻りできない気がした。
老人はそれ以上聞かなかった。
代わりに、小さく笑う。
「一つだけ。覚えとけ。」
椿は老人を見る。
「昔話っちゅうのはな。」
老人は人差し指を一本立てる。
「全部嘘では残らん。」
「……。」
「全部本当でも残らん。人は恐ろしい出来事を。」
少しだけ目を細める。
「少しずつ忘れて、昔話にする。」
その言葉が妙に胸へ残った。
「だから。」
老人はゆっくり立ち上がる。
「あの山へは、もう近付くな。もし何か見ても。」
少し間を置く。
「追い掛けるな。呼ばれても。返事をするな。」
それだけ言うと、老人は杖をつきながらゆっくり歩いて行く。
椿はしばらくその背中を見送っていた。
帰ろうと本を閉じた、その時。
閉じた表紙の間から、一枚の紙切れが床へ落ちた。
ひらり、と。
「……?」
拾い上げる。
古びた和紙だった。
手書きで、たった一文だけ書かれている。
『目を合わせたら、連れて行かれる。』
椿は息を止める。
老人を見る。
もう図書館の出口まで歩いていた。
「すみません!」
慌てて声を掛ける。
老人が振り返る。
「これ!」
紙を見せる。
「本から落ちました!」
老人は紙を見るなり、ゆっくり目を見開いた。
「……まだ残っとったか。」
その一言だけ呟く。
そして、どこか諦めたような笑みを浮かべた。
「坊主。もう遅いかもしれんな。」
そう言い残し、老人は図書館を後にした。
一人残された椿は、古びた紙を握り締めたまま動けなかった。
夕日が窓から差し込み、その紙だけを赤く染めていた。
基本的には、1週間以内に更新する予定です。
すこしでも気に入りましたら⭐をしてくださるとモチベになります!
お盆は毎日更新する予定です




