第十一話 探さなくちゃ
こちらは文をAIを使い、構成、キャラクター設定、舞台設定、話の原文、セリフの1部を私が作成しています。
夜風が頬を叩く。
椿は無我夢中でペダルを踏み続けていた。
どれくらい走ったのか分からない。
気付けば村外れの田んぼ道まで来ていた。
街灯はほとんどない。
月明かりだけが、細い農道をぼんやりと照らしている。
「……はぁ……っ。」
息が上がる。
自転車を止めると、膝に手をついて呼吸を整えた。
胸の鼓動がうるさい。
耳鳴りのように鳴り続けている。
「桜じゃ……ない。」
もう何度目か分からない言葉を呟く。
認めたくない。
けれど、もう否定もできなかった。
あの言葉。
あの距離。
あの目。
どれも桜ではなかった。
「……じゃあ。」
椿はゆっくり顔を上げる。
「桜は、どこだ。」
その瞬間だった。
頭の中で、ばらばらだった出来事が一つに繋がる。
洞窟。
祠。
紙の縄。
封印。
桜の失踪。
そして夕方見た、小さな白い蛇。
「……まさか。」
身体から血の気が引く。
「入れ替わった……?」
そんなこと、あるはずがない。
漫画でも、小説でもない。
現実だ。
なのに。
そう考えると、すべての辻褄が合ってしまう。
あの日、洞窟で何かが起きた。
桜は一晩帰らなかった。
帰ってきた桜?は、桜ではなくなっていた。
そして。
あの白蛇。
あの目。
あれは——。
「桜……なのか。」
口にした瞬間、胸が締め付けられた。
山の中を。
あんな小さな身体で。
一人ぼっちで。
椿を探しているのだとしたら。
「……っ。」
考えたくなかった。
でも。
考えてしまった。
◇
翌日。
椿は授業をほとんど聞いていなかった。
先生が何を説明しているのかも頭に入らない。
ノートを開いたまま、視線だけが窓の外へ向いていた。
「椿。」
名前を呼ばれる。
はっと顔を上げると、教師が困ったような顔をしていた。
「次、読んで。」
「あ……。」
教室が静まり返る。
慌てて教科書を見るが、どこを読めばいいのか分からない。
後ろの席から、小さくページ数を教えてくれる声がした。
「百十二。」
桜だった。
「……ありがとう。」
椿は教科書を読み始める。
声は震えていなかった。
でも。
どうしても振り返ることはできなかった。
◇
昼休み。
椿は一人で校舎裏へ向かった。
誰にも聞かれたくなかった。
スマホを取り出し、検索画面を開く。
入力する。
『白蛇 伝説』
『白蛇様 群馬』
『白蛇 封印』
『魂 蛇』
検索結果は昔話や観光地の記事ばかりが並ぶ。
欲しい情報は、一つもない。
「……駄目か。」
スマホを下ろした、その時だった。
「何調べてるの?」
突然、すぐ後ろから声がした。
椿の肩が大きく跳ねる。
振り返る。
桜?が立っていた。
いつからそこにいたのか分からない。
笑っている。
昨日までと同じ笑顔で。
「秘密基地のこと?」
椿は咄嗟に画面を伏せる。
「違う。」
「そっか。」
桜?は少しだけ残念そうに笑った。
「ならいいや。」
そう言って去ろうとする。
しかし、数歩歩いたところで立ち止まり、振り返った。
「椿。」
「……何。」
「最近、一人で抱え込みすぎ。」
その声は優しかった。
だからこそ、椿は胸が痛くなる。
「困ったら。」
桜は笑う。
「俺を頼ってよ。」
その一言が。
今の椿には、この世で一番残酷だった。
目の前にいる存在には頼れない。
頼りたい相手は。
今もどこかで、自分を探しているかもしれないのだから。
椿はゆっくり拳を握り締める。
心の中で、静かに誓った。
必ず見つける。
本物の桜を。
放課後。
教室には部活へ向かう生徒たちの声が響いていた。
椿は誰とも目を合わせないまま鞄を肩に掛ける。
「椿。」
背中から声がした。
振り返る。
桜?だった。
「……何。」
「今日、一緒に帰ろ。」
「断る。」
短く言って歩き出す。
その後ろを、桜は黙って付いてきた。
昇降口を出ても。
校門を抜けても。
何も言わず、一定の距離を保ったまま。
「付いてくるな。」
椿が立ち止まる。
桜も足を止めた。
しばらく沈黙が続く。
やがて桜は、小さく息を吐いた。
「……ねぇ、椿。」
「何だ。」
「探すの、手伝うよ。」
椿の表情が固まる。
「……は?」
「本物の桜。」
桜?は静かに続けた。
「探してるんでしょ。」
「……。」
「俺じゃ、椿は幸せじゃないんでしょ?」
その言葉は穏やかだった。
責めるでもなく、拗ねるでもない。
ただ、どこか寂しそうに。
椿は答えられない。
「だから。」
桜?は少しだけ笑う。
「俺が祠の辺りを探すよ。」
「……何を言ってる。」
「門限、俺は厳しくないし。」
自分の制服の裾をつまみながら、どこか困ったように笑う。
「椿は門限、厳しいんでしょ?」
その一言に、椿の胸がざわつく。
心配している。
気遣っている。
その行動だけ見れば、まるで本物の桜だった。
けど。
「ふざけるな。」
椿は低く言った。
「え……。」
「探すも何も。」
一歩、桜?へ近付く。
「お前がいるせいで、桜がいなくなったんだ。」
桜?の笑顔が消える。
「違う。」
「違わない。」
「俺も探したいんだ。」
「その口で桜の名前を呼ぶな!」
思わず声を荒げていた。
近くを歩いていた生徒たちが驚いたように振り返る。
椿は構わなかった。
「その身体は、お前のものじゃない。」
「……。」
「桜の身体で、桜の声で、桜の顔で。」
喉が震える。
「そんなこと言うな。」
桜?は何も言い返さない。
ただ静かに俯いた。
長い沈黙のあと、小さく呟く。
「……ごめん。」
「謝るな。」
椿は首を振る。
「謝るくらいなら。」
拳を握り締める。
「返せ。」
桜?は苦しそうに目を閉じた。
「返したい。」
その声は震えていた。
「でも。」
ゆっくりと顔を上げる。
「返し方が、分からない。」
その表情には、嘘をついているような色はなかった。
だからこそ椿は、余計に苦しくなる。
目の前の存在は、確かに桜ではない。
それでも、その言葉だけは本心なのだと感じてしまったからだった。
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