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【ドラゴンライダー】~飛べない竜と俺は必ず再起する~  作者: 霧笛の火魔人


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【第47話 対決】

空が、絶望で塗りつぶされようとしていた。


聖国軍を率いるバルカ将軍の駆る黒い飛竜が、天を衝くような高高度から一転、降下攻撃を開始する。


巨大な翼を半分にたたみ、一気に速度が速くなる。



「来るぞ、マックス!」

俺は、手綱を握り直して相棒の背に深く身を沈める。



俺の腰に結ばれた赤い布が、猛烈な風に千切れんばかりに舞っている。


黒い飛竜がその巨大な爪を扇のように広げ、獲物を引き裂く準備を整える。


だが、俺はその軌道を完全に見切っていた。


「右ぃ!」


叫びと同時に手綱を引く。

マックスは、眼前に迫っていた石造りの民家の壁を、強靭な後ろ脚で思い切り蹴り上げた。

重力に逆らうような急激な軌道変更。


直後。


ドガン! バキバキバキッ!


俺たちが数秒前までいた空間を、鋭い爪が通過した。


黒い飛竜の爪がかすめた石造りの家が、まるで積み木のように粉々に砕け散る。

土煙が舞い上がる中、俺は再び空を舞う飛竜たちの輪に視線を戻した。


(くそっ、走竜隊が"空刺し"を仕留めているはずだったのに・・・)

(飛竜達が上空から守っていやがるせいで、近づけていないのか!)


俺は、まだ聖国の新兵器"空刺し"が二門残っていることに気付いた。


「"空刺し"を倒しにいくぞ、マックス!」


パンッ・・・パンッ・・・パーーーン!


乾いた破裂音のような足音を響かせ、マックスが障害物を飛び越えるように跳躍した。


その瞬間、上空の飛竜たちの動きが一変する。


彼らの狙いは、完全に俺達へと集約された。

一頭、また一頭と、規律正しく連続で降下攻撃を仕掛けてくる。



だが、俺は冷静だった。

(焦るな。正確な間隔だ。一頭ずつなら、かわすのは難しくない・・・)


飛竜はその巨体ゆえ、一度に複数が突っ込めば互いに接触して自滅する。

それを理解しているからこそ、波状攻撃を選択したのだ。


「"空刺し"はどこだ! この方向で合っているのか!?」


俺は街並みを縫うように走りながら、必死に標的を探した。


-------------------------------------------------------


地上。

乱戦状態だった走竜戦は、聖国軍の巧妙な「偽撤退」によって、再び泥沼の集団戦へと引き戻されていた。


カーン! キーン!


あちこちで、走竜に乗った騎士(ライダー)同士が長剣を交える金属音が響く。


そんな中、走竜隊三班の古参兵バルドは、ふと空を見上げて動きを止めた。


「なんだ・・・? なにが起きている・・・?」


上空、大きな円を描いて旋回していた聖国の飛竜たちが、示し合わせたように次々と急降下を開始している。

その異様な光景に、バルドの脳裏にある情景が蘇った。

三班が壊滅し、多くの仲間を失ったあの日だ。


(彼が戦っている! あれは、絶対にそうだ!)


バルドの目に光が宿る。

飛竜が一点に集中攻撃を仕掛けているということは、地上から見れば、それ以外の場所への警戒が薄れていることを意味する。


「!」


(飛竜が彼に集中しているなら、今が……!)


バルドは自分を鼓舞するように叫んだ。

「前回とは違う! わたしにも、できることはある!」



老骨に鞭打ち、肺が裂けんばかりの大声を上げる。


「こっちだぁぁぁぁぁ! 今が勝機だぞぉぉぉぉぉ!!」


その意図を察した王国兵たちが、次々とバルドの後に続く。


彼らの背後では、聖国の飛竜が次々に降下攻撃をしている姿があった。


そして、彼らの正面には"空刺し"の姿があった。


-----------------------------------------------------


一方、竜撃砲を守る聖国の兵士たちも、空の異変には気づいていた。

飛竜が降下する地点が、じりじりと自分たちの陣地へ近づいてきているからだ。


「何が起きているんだ? 何かが来るぞ!」


次の瞬間、一人の兵士の背筋が凍りついた。

廃屋の屋根を軽々と飛び越え、巨大な翼を広げた「何か」が現れたからだ。


「て、敵襲! 敵襲だあぁ!」


弓兵が即座に矢を番える。だが、後方の指揮官が叫んだ。

「待て! 撃つなっ!」


直後、彼らの視界は、上空から降下してきた味方の飛竜の巨大な翼で塞がれた。

凄まじい風圧と土埃。

そして、聖国の飛竜が上昇に転じて視界が開けたときには、そこにいたはずの「王国の飛竜」は、もういなかった。


「いた、あっちだ!」

「障害物の上に現れては消えるぞ・・・なんだあれは?方向を次々に変えてやがる!」


初めて見るその異常な機動に、聖国の兵士たちは困惑と恐怖を隠せない。

ヒュン、ヒュンと矢が放たれるが、あまりに動きが速く、距離も遠すぎて当たらない。


「竜撃砲で撃てないのか!?」


弓兵が怒鳴るが、砲兵は顔を真っ赤にして怒鳴り返した。


「馬鹿野郎、あんな低い場所を走られたら狙えるわけがないだろう!」


「回せ! 奴が飛び立つ瞬間を狙い打つぞ!」


円形のハンドルが激しく回される。装填済みの巨大な杭が陽の光を浴び、鈍い金属光を放つ。


しかし、「王国の飛竜」は舞い上がることなく、跳び突けた。





(くそっ・・・!)


俺は焦っていた。


"空刺し"の周囲は防衛のために開けた広場になっている。

つまり、跳躍のきっかけとなる障害物がないのだ。


(あそこに出たら、さすがのマックスでも狙い撃ちにされて裂かれる。どうする!?)


タタタタタタタタ、タン!


マックスは地上を疾走し、瓦礫を利用して再び跳ねる。

襲いかかる後続の飛竜を軌道を変えて回避した、その直後だった。



回避した先に、巨大な「黒い壁」が立ち塞がっていた。


「しまっ――!」


俺は手綱を思い切り引き、急制動をかける。

マックスが両翼を広げ、正面に向ける。


その黒い壁から、巨大な爪が突き出してきた。

その黒い飛竜は翼を広げ、俺達を待ち構えていたのだ。


マックスも後ろ脚を正面に向け、迎撃の体勢をとる。

爪と爪が激突する、その寸前。


二頭の飛竜は、まるで時間が止まったかのように空中で相対した。


黒い壁はゆっくりと上方へ。

俺たちは重力に従い、ゆっくりと下方へ。


そのわずかな交差の瞬間。


黒い飛竜の長い尾が、剣豪の居合抜きのような神速で、俺の頭上をかすめた。


ピシィィッ!


空気を切り裂く衝撃音。

一瞬、何が起きたのか理解できなかった。


だが、身体は恐怖を置き去りにして、次の行動を開始していた。



(やはり、こいつだ。こいつが、一番の敵だ!)



上昇していく黒い飛竜の背中を見上げ、俺は鼻の奥に鉄の味を感じた。

集中力が極限まで高まり、世界が鋭利に研ぎ澄まされていく。


-------------------------------------------------------


「えぇい、ちょこまかと小賢しいっ!」


バルカ将軍は、これまでにない苛立ちに支配されていた。

自慢の飛竜隊が翻弄され、自らの至近距離での一撃すらもかわされた。


「貴様ら、邪魔だ。下がっていろ!」


バルカが手で合図を送ると、周囲を飛んでいた聖国の飛竜たちが距離を置く。

バルカは、自らの手でこの王国の「異物」を始末すると決めたのだ。


「逃げ場をなくしてやる。その奇怪な動き、町外れの更地でも通用するか試してやろう」



バルカはカイルに悟られないよう、巧妙に飛行位置を変え、彼らを障害物のない広場へと追い込んでいく。


だが同時に、マックスが見せる機動――翼を使ったり使わなかったり、走り、跳び、縦横無尽に方向を変えるその姿に、戦士としての驚愕を禁じ得なかった。



「奇怪な曲芸を覚えよって……」


苛立ちと共に、バルカは咆哮した。


「竜は空を飛んでこそ、その価値があるんだろうがぁぁぁ!!」


-------------------------------------------------------------

「しまった!」


俺が気づいたときには、すでに遅かった。


飛竜の波状攻撃をかわすことに集中しすぎた。

気づけば、俺たちは町外れの草原へと誘導されていたのだ。


周りに建物はない。

マックスが軌道を変えるために足場にできる障害物が、何一つない。


タタタタタタタ!


マックスが草原を猛烈な勢いで疾走する。

背後からは、死神のような黒い飛竜が刻一刻と迫る。逃げ切れない。


「こっちから行くぞ!」


バンッ!


俺たちは敢えて真上に跳ぶと同時に、翼を広げて急制動をかけた。

慣性に従って突っ込んでくる黒い飛竜。

衝突する直前、俺たちは空中で身を翻し、背面飛行の形をとった。



「!」


天地が逆転した俺の視線の先に、黒い飛竜に跨る騎士(パイロット)の顔があった。

一般の兵士とは違う、黄金の装飾が施された豪奢な兜。燃え盛るような闘志を宿した瞳。


(こいつが・・・バルカ将軍!)


一瞬、視線が交錯した。

火花が散るような錯覚。

黒い飛竜が地上すれすれで滑空し、俺たちの真下を通り抜ける。


着地したマックスが、再び地面を蹴る。



タッタッ、タタタタタタタタタタタタタタ!!


マックスが狂ったように加速する


俺は、マックスに力いっぱいしがみつく。

視界の色が消失して、世界が白黒になる。光のトンネルを進んでいるような光景!


黒い飛竜に追いついていく。


パンッ!


空気を弾く音とともに、俺たちは身体を極限まで小さく丸めた。


一本の鋭い矢となったマックスが、驚愕に目を見開くバルカ将軍の喉元へと、まっすぐに肉薄した。


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