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スキルちゃん爆進⭐︎おばさん、気づけば異世界で最強夫婦してました (旧:ノンタイトルおばさん〜勇者でも聖女でもなく〜)  作者: 天三津空らげ
13章 後宮事件

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48 理不尽な破壊

「キットーッ!!!」

「キトキトキットーッ!!!」


 さて帰ろうかとしたところで、キトキトコンビの悲痛な鳴き声が聞こえてきた。


「これは……!!」


 何かを察したアシャールさんが、ミケ子を抱いたわたしを抱き寄せる。ピホはセシリア妃のところへ……リガルさんはアシャールさんの腰にへばりついた。


 ゴォォン バキバキ


 天井が崩れて色んなものが舞う。


「あぁぁぁぁ!!!」


 わたしは叫んだ。そりゃもう、叫んだちゃ。

 半泣きのキトキトコンビが、馬車を引いたまま、離宮の屋根を突き破って現れたんだもん。


「キトキトォォォォ」

「キットキトォォォ」


 わたしは途端にハーネスを外したキトキトコンビに挟まれ、揉みくちゃにされる。


「あわ……あわ……アシャールさん、怪我人は……」

「幸い、人的被害は無いようです」


 うううう。確かに金の日の朝に会って、土の日の夕刻近い今まで、顔は見せてなかったけど……。

 だめなん? この甘えっ子どもは、毎日わたしを吸わなきゃ生きていけない病気か何かなんけ?!


「アシャールさぁぁん。離宮がぁぁぁ。どうしようぅ」


 当然、人が集まってくる気配がする。

 わたしの心配をよそに、キトキトコンビはわたしに懸命にすりすりし、わたしを後ろから抱いたままのアシャールさんごと二匹でしっかりとわたしを挟んでいるのよ。身動き取れないっ。尚リガルさんは、とっくに押し出された。




 当然ながら、わたし達は皇帝陛下の御前にですね。離宮破壊の下手人(げしゅにん)ですから、連れて行かれるわけでしてね。


 それがもう、シロとクロは絶対離れないとばかり両脇にぴったりとくっついているの。わたしとアシャールさんは、少しでも楽な体勢をと、両腕をシロクロの背中に預ける。するとキトキトコンビの騎乗スキルのおかげで、ええ、特に負担なく移動が可能でした。ただし、足が地面から浮いてるのよ。背後のアシャールさんも同様よ。


 これはイケメンリアカーに続く、人生でやめてほしい移動方法の上位にランクインしたわ。


 そりゃあもうね。皇帝陛下、キトキトコンビに挟まれたまま移動して来たわたし達(主にアシャールさん)をみて大爆笑よ。


「はははは! わははは! 離宮からここまでその状態で……ははっ、このように腹の底から笑うなど、いかほどぶりか。魔物に挟まれたまま、浮いて……浮いておるではないか……っ」


 なんかもう、わたしこの皇帝陛下には笑われる運命にあるのかしら?

 でも離宮を壊しちゃったのはキトキトコンビだから、完全にわたしの責任。国の偉い人にってどう謝って、なにで交渉すればいいがけ?!


 とりあえず先手必勝で。


「離宮を壊してしまって、申し訳ございません皇帝陛下……」


 わたしはしょぼんと謝った。

 皇帝はスンと無表情になって、玉座からわたしを見下ろしている。


 皇帝の側には驚いた顔のリリーティア妃とマリーシェラさん、マリーシェラさんの護衛としてついていた奈々美さん。ああ、奈々美さんの顔が真っ青だわ。奈々美さんの責任はこれっぽっちもありませんからねー!! そしてわたし達の弁護のために、一緒についてきたセシリア妃。


「陛下! カオリコさん達は陛下や私達を害そうと思った訳ではないのですわ。この子達がカオリコさんと離れているのに我慢できずに会いに来ただけですの!」

「キト!」

「キト!」


 わたしとアシャールさん、いつまで挟まれて浮いてなきゃいけないんだろう……。


「カオリコと申したか。其方の此度の働きは、第四皇妃より報告を受けていたところだ。此度の働きに免じて罪には問わぬ。其方の魔物が強かったというだけだ」


 強さを尊ぶ魔族らしいお言葉に、わたしは、あからさまにホッとした。


「一応確認しておくが、我が国の神たるゼルヴァスヘルベインを倒したのは、其方で間違いないか」


 え? 今度そっちの追求きちゃう?


「ええと、この子達やアシャールさんの魔導具に助けて貰いましたが、最終的にそれの命を奪ったのは間違いなくわたしです。ネコノメで暮らすには邪魔だったので」


 そう、素材なんて耳障りの良い言葉に安心してたけど、実際魔物に関しては命を奪って素材にしてるのよね……。


「であれば、其方はゼルヴァスヘルベインより強い英雄であり神であるな」

「いいえ! 神は主神ライフォート様だけです!」


 わたしは驚いた。何言いだすかな、この皇帝。


「問答無用! 其方を倒せば我は皇帝であり神である」


 リリーティア妃とセシリア妃の形相が変わった。


「おやめください、陛下!!」


 リリーティア妃が叫んだ時には、皇帝グレンドはスラリと剣を抜いてこちらに向かってくる。


「シロ! クロ! アシャールさんと一緒に離れて!」


 わたしを狙うフリしてアシャールさんをズバっとされては、わたしが嫌だ。

 アシャールさんは冷静な目で現状を見ていた。皇帝がわたしを傷つけることはできないと、絶対の自信を持って。


 だって既に皇帝陛下は、わたしの間合いに入ってしまっているので。


 まず物騒な武器を採取します。

 流石皇帝陛下、腰の剣だけじゃなくて豪華なマントで隠してたんまり武器をお持ちでいらっしゃる。短剣やナイフ、鎖鎌……暗器のようなものまでお持ち……。


 手に持った剣だけではなく、身体が軽くなったことで、皇帝は瞬時に武器が無くなったことに気づいた。


「其方、窃盗スキル持ちか」

「せ……?! 健全な素材採取スキルですぅぅ!」

「だが鑑定スキルも持ってるのだろう? 窃盗スキルで他人から奪ったスキルではないのか」


 これね。実は窃盗スキルでそんなことは出来ないそうなんだけど、わたしはそんなことまで知らないので、ついつい。


「盗んでません! 鑑定スキルは勇者召喚魔導具を壊しちゃったご褒美に、主神からいただいたのですっ」


 皇帝の足が止まった。


「グランヒュームの三大魔導具の一つを壊した……だと」

「すみません……二つ壊しちゃいました」

「…………」

「アシャールさんが拘束されてた魔導具を壊したら、ご褒美に空間収納スキルが貰えると言われて……」

「それも主神にか?」


 わたしは頷いた。


「あれをどのようにして、壊したのだ」

「……素材として採取してみようとしたら、失敗して壊れました……なにせスキルレベルがEー1しかなかったので」


 その瞬間、リリーティア妃が走りこんできて、わたしを抱きしめる。


「ああ、カオリコさん、貴女は世界とフェイ族の恩人よ」

「……其方、ロンダリウムのテイマーではないのだな?」


 わたしは神妙に頷いた。


「勇者召喚に巻き込まれた、ただの迷い人です」


 皇帝も頷いた。


「それならば色々と得心がいった。もう其方を害そうとはせぬ故、武器を返して貰えぬか」


 うん。分解までしてなくてよかった。

 わたしは皇帝が装備されていた通りに武器を返す。……返せて良かった! 床に置いて、不敬! とか言われても困ったもの。グッジョブよスキルちゃん!


『るるん。ららん』


「ふむ、それはそれとして、壊したものがものなだけに、正当な賠償を要求する」


 ですよねー。


「陛下! それでしたら、離宮の建て替えを愚弟にさせて下さいませ!」

「そうですわ! 魔導貯蔵庫に清潔なおトイレ! 水道というのは、導入できますの?」


 リリーティア妃とセシリア妃が乗り出した。


「あの……わたしの魔物がしでかしたことなので……」

「いいえ、叔父様の作った馬車が頑丈過ぎたのもいけませんわ!」


 うん、まああのキトキト馬車、傷ひとつ付いてなかったのよ。


「いや待て、二人とも」


 おそらく皇帝の狙いは奇跡の真珠よねと思うが、そんなことより暮らしの向上の方が大事なリリーティア妃とセシリア妃は真剣だ。


「陛下、今後私は、セシリアとエリドゥと三人で離宮でひっそりと暮らしていきたいと思っていますの。お願いしますわ」

「いや、うむ……しかしエリドゥは皇位を嗣ぐもの。ひっそりとはいかぬ」

「それはまだまだ先の話でしてよ。陛下はご健勝でいらっしゃって、エリドゥは若すぎます」


 わたしは、チラリとアシャールさんを見て、スススと近づいた。


「アシャールさんはどうしたい? 流石に住むところがあの状態は不便だもの。賠償金に相当する何かを支払って、建て直しが終わるまでお義姉様達にネコノメに来てもらう? それとも……」

「さっさと建て直しをしてしまいましょう」


 わぁ、即答。


「一旦全て取り壊して、全部建て直した方がはやいですね。建材もこちらで持ってるものを使います。よろしいですよね、姉上」

「ええ、よろしくってよ」

「いや、待て。離宮は皇家の財なのだが」

「ダメなんですの? 陛下……」

「ダメなんですか? 陛下……」


 リリーティア妃とセシリア妃が渾身の上目遣いで、皇帝を見た。

 これはもう、決定的に効いたに違いない。皇帝陛下さん、目尻が下がってましてよ。

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