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スキルちゃん爆進⭐︎おばさん、気づけば異世界で最強夫婦してました (旧:ノンタイトルおばさん〜勇者でも聖女でもなく〜)  作者: 天三津空らげ
13章 後宮事件

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46 本音は採取したくないっ でもそんな場合じゃない

「か、なんけぇぇぇぇ!!!」


 皇宮の離宮という、やんごとなき貴人がいらっしゃる場所で、わたしは思わずお国言葉で叫んだ。


香子(かおりこ)さん?!」


 二人の皇妃の介護を手伝っていた奈々美さんが、わたしの剣幕に驚く。

 その場にいたリリーティア妃も。

 苦しんでいる二人の皇妃達は、痛みでそれどころじゃない。


 わたしもパニックってるので、深呼吸する。


 スキルちゃんや。これ……皇妃様達の体内から、これだけ素材採取可能? なんのための素材かって言われたら、いずれこれを分析研究するための素材にしましょ。したくないけどっ!


『スキルちゃん達は気遣いができるのでー。素材収納空間じゃなくて、保存瓶作って入れる? すごく気遣いできるやつ』


 それでお願いします。


『オッケー、ららん。るるん』


 落ち着きを取り戻し、スキルちゃんに造ってもらった保存瓶を取り出す。まあまあ大きな濃い青色の瓶が三つ。わたしはちょっと歯を食いしばって、それを抱えた。


 そして素材採取ですよ。

 皇妃様達の下半身が、わたしの素材採取の円形の光に包まれて、それらは保存瓶の中に大、中、小と分かれてしゅるっと採取された。


「奈々美さん、索敵と治癒をお願いします」

「索敵……」


 奈々美さんは何か勘づいて、スマホで『カオリコの鑑定図鑑』アプリを確認した。そして信じられない顔をして、わたしの抱えた瓶……中を見ようと思わなければ濃い青色の、中を確認したいと思えば透明に見える気遣いの瓶を見た。そして叫んだ。


「いやぁぁぁ!!! この部屋で索敵、ひっかかりませんんん!!!」


 半泣きで叫びながらも、奈々美さんは皇妃様達に治癒をかけていく。アレを見て、戦闘体勢に入ったからか、両手を〈外殻装甲〉で覆って、手を伸ばして治癒の光を発している。


 わたしも一旦落ち着いて、鑑定結果を確認しなおす。


 ここが異世界だと知ったときから、いずれは出会うだろうと覚悟していた。でも魔物達の素材から検出されなかったので、すっかり油断してたわ。


 皇妃達を苦しめたのは、毒ではなかった。


 寄生虫。


 しかも、魔物だ。


 獣医の待合室でフィラリアの画像を見慣れたわたしも、生は嫌だんんんん。直視したくないぃ。


 でも今後の防衛と対策のために、ちゃんと観察せねばぁぁ。


 小の瓶には卵が入っている。黒くて砂粒のようだけど、液体に入れると透明になるとのこと。

 きっとこれがお茶会で仕込まれたのね。熱湯で死なんかったんけ!


 中の瓶には卵から孵った幼虫。米粒ほどの体長で糸のように細い。これが生殖器に移動。そして大の瓶には幼虫の二倍くらいの成虫。とっても元気に動いてる。こんなんが身体の中で暴れてたのだから、さぞかし痛かっただろう……想像して、わたしもお腹が痛くなったわ。

 因みにこの瓶には蓋がなく、完全密閉の特殊空間になっている。


 これ、他の皇妃様達の分も採取しなきゃよね……、あと経血と一緒に体外に出たやつもいるだろうし、他にも感染してる人も居るかもしれないよね?


 ん? 空気に触れたら跡形もなく死滅? ならそこは安心かしら。


 でもそれ、仕込んだ側にとっては、バレずに証拠隠滅、完全犯罪だわ……。



「痛みが……痛みが消えたわ……!」

「ええ……嘘みたい……」


 第二皇妃様と第九皇妃様は、顔を見合わせて、呆然としている。

 治癒の終わった奈々美さんは、肩で息をしてるわ。薄々そんな気はしてたけど、本当に虫が苦手なのね。


「カオリコさん、あの苦しみの原因が、その中にあるのね?」


 リリーティア妃がこちらを見たので、わたしは瓶を抱えこんで、中身が見えないようにした。だって、絶対見ない方がいいもの。

 しかし、リリーティア妃の言葉に全員の視線が集まった。


「何故隠すの?」


 問い詰めたのは、一番悲痛な叫びを上げていた、第九皇妃様だ。


「えっと……多分、ご覧にならない方がよろしいかと」

「お黙り! 私がどれだけの苦痛を味わったと思って。その正体を知る権利があるわ。平民風情が邪魔をするでない!」


 怒鳴られて、わたしは反射的に身を強張らせた。


「落ち着いて、サンシャ妃。私達を助けてくれたのよ」


 第二皇妃様が宥めてくれたが、第九皇妃様は落ち着いてくれなかった。


「あんなに何をしても効果がなかったのに、突然治るのも怪しいもの! この者達は正妃とグルなのだ。だから証拠を隠すのだろう」


 リリーティア妃も第九皇妃様を宥める。


「カオリコは私の義妹です。シアンヌ妃とは何の関わりも有りません」


 しょうがない。本人の希望だもの……。このまま皇妃同士で関係が悪くなるようになったら、リリーティア妃セシリア妃も困るだろう。


 わたしは近くのテーブルに瓶を置いた。


 ここにいる奈々美さん以外の全員が、見たいと思ってるのだから、漏れなく皆さん透明な瓶の中で元気に動く寄生虫魔物を見るだろう。


 そうして、部屋中に女性達の悲鳴が響き渡った。




「カオリコさん、ナナミさん!!!」


 流石に聞こえてくる悲鳴に我慢できなくなったのか、マリーシェラさんがバーンと扉を開いて登場した。


「マリーシェラぁぁ」


 セシリア妃がマリーシェラさんに、抱きつく。



「……これが、こんな小さな魔物が人の身体に?!」


 マリーシェラさん、虫は平気そうである。頼もしい。


 わたしもまあ、慣れて来た。

 スキルちゃんが作った瓶の中から飛び出してくることは、絶対ないわけだし。そう思えば怖くはない。


「鑑定の結果、この魔物は〈アンガル五三〉。女性の子宮にしか寄生しない。寄生されると性交で激しい痛みを感じるようになる。子宮内膜が剥がれる生理のたびに、子宮内で暴れるので、出血を伴う激痛、子宮損傷による不妊。貧血。ホルモンバランスと自立神経の乱れ……そして最悪命を奪われます」


 皇妃様達が息を呑んだ。


「あとこの〈アンガル五三〉は自然界に存在せず、魔物を改造して造られたものです。鑑定魔導具や鑑定スキルに感知されず、空気に触れるとたちまち跡形も残らず死滅するようです。この瓶の中は、収納空間のような特殊な空間になってるので、生きたままです」


 わたしがそう説明すると、マリーシェラさんが不思議そうにした。


「鑑定スキルで感知できないのに、何故カオリコさんはここまで詳しく鑑定できましたの? やはりレベルの違いかしら?」

「多分わたしの場合、元々の鑑定スキルが生活魔法スキルの機能の一部になっちゃってるからじゃないかしら??」

「鑑定とは言っても、魔導具とも鑑定スキルとも違うアプローチをしてるってことですわね。でも素材採取スキルの方も身体を突き破らずに取り出せるのは不思議だわ」

「スキルちゃん達ができる子なので……」


 会話を聞いていた皇妃達は、想像したらいけないことを想像したようで、お腹に手を当てて震えた。リリーティア妃が軽く頭を押さえている。


「皇妃達が全員、子が為せなくなったとしても、あの方が陛下との子を産めるとは限らないのに……」


 そう呟いた第二皇妃の言葉に、あの血気盛んそうな第九皇妃も、悔しさに震えているようだ。

 わたしはリリーティア妃に声をかけた。


「奈々美さんが治癒を行なってくれたとはいえ、本調子に戻るには時間がかかると思います。しばらくは安静に養生して頂く方がよろしいかと……まだ生理期間中ですし。ヴァレ茶が効果を出せるのは、これからですね」


 わたしはヴァレ茶入りのタラセタ保温ボトルを取り出した。


「ありがとうカオリコさん。本当に世話をかけてしまったわ……」

「リリーティア妃はわたしのお義姉様ですので。この小さな手くらいどれだけでもお貸ししますよ」


 わたしは手をひらひらさせた。

 


 二人分のティーカップにお茶を注ぐと、第二皇妃様と第九皇妃様に差し出した。


「さて、残る皇妃様達は何人でしたっけ? 魔物を取り出した後の対応は神殿の聖女様とか呼ばれます? アシャールさん呼んできます?」


 リリーティア妃が驚いて、わたしを見た。


「…………このまま付き合ってくれるというの?」

「治癒はともかく、体内の魔物をお身体に負担なく採取できるのは、わたししか居ないのではないかと思ったのですが……?」

「ええ、ええ! そうね。それしかないわね……」


 珍しくリリーティア妃の歯切れの悪さを謎に思っていると、セシリア妃が説明してくれた。


「皇妃達にはそれぞれ派閥がありますし、一人の皇妃の元に他の皇妃が集まるのは稀で、何かしらないと皇妃全員と会うのは難しいのですわ」


 なるほど。後宮だものめんどくさい理由は、色々あるちゃよねー。


「でもわたしとアシャールさんの見物には、全員来てたのよね? 今回もそんな感じじゃだめかしら」

「それは……」

「これですよ」


 わたしはキンマユガさんの真珠を取り出した。


「それはまさか……奇跡の真珠?!」


 あ。第九皇妃様の目が、かっ開いたわ。

 これ、そんな名称で呼ばれているのね。

 お淑やかな第二皇妃様も……というか、奈々美さんとマリーシェラさん以外全員真剣に見てる……よ?


「まあ、初めて見ますわ! この距離からでも、上品な照りがしっかりわかりますのね……なんて綺麗……」


 セシリア妃がうっとりと呟いた。


 わたしはマリーシェラさんに近づいて、声を落とした。


「そんなに珍しいものなの……?」


 すごく綺麗だとは思うけど。


「珍しいですわ。それを巡って国が戦争したという歴史もありますの」

「ワァ……」


 感心してる場合じゃなかったわ。


「えーとリリーティア妃、まず今回ネコノメのスマホ事業は無事初回製造分300台が完売しました。そのささやかなお祝いを行うとします」

「ええ」

「わたしと奈々美さんに身内と呼べるのはお互いしかいませんし、アシャールさんとマリーシェラさんのお身内は、こちらに。ご招待するにも軽々しくネコノメへおいでいただくことができる身分ではない……そこで、この離宮の庭園をお借りして、ささやかなお祝いの食事会をするとします」


 リリーティア妃は頷いた。


「その時にわたしがこの真珠を身につけた場合……こっそり見学もしくは『平民風情が身につける物ではない!』と取り上げようとする皇妃様はどのくらいいらっしゃいますか?」

「それはもう、確実に全員来るわね」


 わたしはにっこり笑ってぱんと手を合わせますよ。


「ではそうしましょう! わたしが奇跡の真珠をつけて食事会をするのは一日だけ。見るのも奪うのもその時しかチャンスはありません。御本人が足を伸ばしてくれればこっちのもの。私の自動採取範囲に入れば、きっちりこの寄生虫魔物を取り除きます」


 リリーティア妃は、真っ直ぐ顔を上げた。


「すぐに準備に取り掛かりましょう。身内のささやかなお祝いですもの、大雑把な料理、飲み物、軽い甘味があれば十分ね。という訳で、メリア妃、サンシャ妃、お二人は早速奇跡の真珠の噂を流して欲しいの」


 第二皇妃のメリア妃は、しっかりと頷いた。


「ええ、任せて下さいな。助けて頂いたのですもの、しっかりお手伝いさせていただきます。さ、サンシャ妃、早速参りますわよ」

「待ってちょうだい! まだ奇跡の真珠を堪能してないわぁぁぁ」


 おっとりとされているのに、第二皇妃のメリア様は、第九皇妃の首根っこ掴んで引き摺って行かれたわ……。


 リリーティア妃はホッと息を吐いた。


「メリア妃を助けられて良かったわ……何の後ろ楯もない私達親子が皇妃になった時、随分とお世話になったのよ。さて、忙しくなってよ。料理はアシャールに作らせれば大丈夫でしょう。問題は衣装ね」


「ピホウ!」


 ピホはずっとライトモのグループトークで一部始終をアシャールさんにも共有してくれていた。

 

「アシャールさん達が、こっちに向かってるそうです」

「達?」

「ああ、そうです。お母様、リガル大叔父様もご一緒なんですよ」

「リガル叔父様ですって……っ?!」


 リリーティア妃は目を覆って、ソファに身体を預けた。

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