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スキルちゃん爆進⭐︎おばさん、気づけば異世界で最強夫婦してました (旧:ノンタイトルおばさん〜勇者でも聖女でもなく〜)  作者: 天三津空らげ
12章 マイホームとスマホ事業

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44 スマホ販売します!

 金の日、予定通りわたしとアシャールさんはアオリハにいた。


 説明はまとめて手短に済ませたいと、アシャールさんは今後の予定も聞かずに、大神官様とリガルさんを連れて冒険者ギルドに向かったがいちゃ。それからそのまま眼鏡のギルド長さんを捕まえましたよ。


 そして今、冒険者ギルドの応接室で眼鏡が光っていた。


「何台買える?」


 光る眼鏡を一瞥して、アシャールさんはゼニアス大神官様に微笑んだ。


「どうしますか大神官様。私達が神殿に売って、それを冒険者ギルドに売ることも出来ますよ」

「そうさのう。その場合にはいくら上乗せするのが適切かのう」

「どうぞ、お好きなだけ」

「フフフ、相変わらずお主は悪よのう」

「ちょ、待って! 神殿通さなきゃダメ? 奥さんから直接買えないの?」

「え? なにこの映像……! ピホくんにいきなり歌わされたと思ったら…… ……あ、……あぁ! リコちゃんこれ、ゼルヴァスヘルベイン!! え? リコちゃんやっつけちゃったの? う……うえぇぇん」


 あっ、あっ、リガルさん泣き出しちゃった。


 それを見て、地図アプリや電卓アプリばかり見てた大神官様とギルド長さんも、慌ててライトモを開く。

 わたしはリガルさんにハンカチを渡した。キンマユガの糸をガーゼにして、縁にピコレースのついた作ったばかりのお気に入りだが、ハンカチはいつも最低二枚携帯してるので問題なし。


「あ、この『ネコノメ(公式)』っていうやつです『猫の目』は冒険者パーティ用なので投稿はこれからですね」

「どこの国にも属さない私有地〈ネコノメ〉の平和的な生活を発信。所有者夫婦とその仲間たちが暮らしてます? 奥さんあんたらシュベルクランに行ったんじゃなかったのか?」

「購入しようと思ったシュベルクランの土地を、どういうわけかアシャールさんがタダで貰っちゃって……」

「……ああ、わかった。深く考えねぇよ」


 その間も、うえんうえん泣いてる実年齢最高齢者のリガルさんをチラ見して、ギルド長さんはなんとかしろよとアシャールさんを見る。もちろんアシャールさんは清々しいほど関係ない顔をしているわ。


 これが見た目通りの12歳位の少年だったら、飴やチョコでもあげるのだが、残念ながらそんな嗜好品は持たないのよ。今後はクッキーでも焼いて持ち歩くようにしようかな……。


「リコちゃぁぁん」

「はい」

「アシャールと一緒に居てくれて、ありがとぉぉ」

「はい、どういたしまして」


 すっかりぐずぐずに目を腫らしてしまっているリガルさんに、スキルちゃんに即席で作ってもらった、冷たいおしぼりを渡す。

 リガルさんはちょっと落ち着いてきたようなので、スマホ販売について話を再開するよ。


 大神官様はネコノメの投稿を見て微笑む。


「随分と楽しそうだな」


 投稿の殆どがピホのものなので、わたしがレイエスと変な会話をしていた時の様子や、キンマユガとハイタッチしながら挨拶を交わしている投稿もある。


「この魔物達も奥さんの? アンデットのレイエスもいるけど」

「いえいえ、ネコノメに住む素材提供者やご近所さんです」

「いや、わけわからんわ。ご近所の魔物とか普通は脅威だろ」

「キンマユガさんは大人しく友好的で、会えば物々交換し合う仲です」

「キンマユガ……!! もしかして、奥さんあれ持ってる?!」

「これですか?」


 わたしはキンマユガの、手持ちの中で一番大きな真珠を取り出した。ギルド長さんの眼鏡がギラリと光る。


「いくらだ?」


 わたしはにっこり微笑むと、そのまま大神官様に渡した。


「ライフォート様の神像の飾りにご使用下さいませ」


 ここの神殿は、この大陸中で唯一主神のみを祀る大きな神殿なのだそう。お世話になっているライ様のためにも、寄進は惜しまないのです。


「これはこれは。主も大いにお喜びになりましょうぞ」

「奥さん〜」

「美しいものを見て、まずその美しさに感嘆するより、金額に換算するようではダメですよー」

「くっそぉ」


「ぐす……リコちゃんこのハンカチ、すっごく肌触り良いね。ごめんね、高価なものなのに、おいらくしゃくしゃにしちゃった……」


 ぱんぱんの目をしてそんなこと言うので、わたしはおしぼりを交換して冷え冷えのを渡す。


「なーんですよ。お洗濯は得意なので気にしないでくださいね。それにそのハンカチはスキルちゃんが作ってくれたので、高価でもないんです」

「リコちゃん……リコちゃんのスキルはめちゃくちゃレベルが高いから、それで作ったものはもう、それだけですごい価値なんだよ! このハンカチ、何で出来てるの?」

「えーと、キンマユガの繭の糸から……」

「ほら! このハンカチはもうリコちゃんじゃないと作れないものだよ! リコちゃんは自分の価値をわかってない! このままじゃきっと眼鏡をかけた悪いやつに騙されちゃうよ。こんなの放っておけない! 心配だから、おいらもネコノメで暮らす!」


 あっ、それ、唯の言い訳やちゃね。本音は単にネコノメに来たいんですね。


「えーと、リガルさん、工房のお仕事どうするんですか? 絵の具とかそういうのも、ネコノメでは手に入りませんよ?」

「そんなのピホ君と買い物に行けばいいだけだよ! おいらちょっと工房に行ってくるから待ってて!」


 あっという間にリガルさんは出ていく。良いの?

 わたしはアシャールさんを見た。


 珍しくアシャールさんは、深いため息をついていた。


「あれは止めても無駄です。隣にアトリエと寝る場所を作って、高い家賃を取りましょう」


 持ち込んだスマホ100台は大神官様に渡すと、そのまま三割増の値段で冒険者ギルドが買い取った。そして大神官様から代金を受けるわたし達なのであった。



✴︎ ✴︎ ✴︎



 シュベルクランの皇宮では、マリーシェラの報告を受けて、皇帝グレンドが眉間に皺を寄せていた。その場には、皇帝の他にその息子二人と宰相、そしてリリーティア妃と奈々美がいた。


「リエンダー領から、ティグノルの黒い霧が晴れたと報告がありましたが、まさか本当にゼルヴァスヘルベインを……?」


 第一皇子のカランが、マリーシェラを見た。マリーシェラはただ頷く。

 リエンダー領は、今はネコノメになった元ティグノルの隣領地。お陰で魔物の出現率が高く、いつでもゼルヴァスヘルベインがティグノルから出てリエンダー領まで来ないかと警戒していた。


 皇帝は悔しげに奥歯を噛み締める。


「一体どうやって倒したというのだ……いや、元々そういう算段があったのだな。我ともあろう者が、アシャールめにまんまと嵌められたわけか……っ!」

「いいえ、あれは陛下の英断だったのですわ」


 マリーシェラはにっこりと笑った。


「おかげでカオリコさんは、とくにこの国に敵意もなく、ネコノメの暮らしを楽しんでいますもの」

「カオリコ? ああ、アシャールの妻か。あの女がどうしたと言うのだ」

「アシャール叔父様はそれはそれはカオリコさんを大切になさってますの。家を持って農園を作るのがカオリコさんの望みでしたので、もし土地を与えなかったら、この国は大変な損失を被っていましたわ。こちらをご覧くださいませ」


 マリーシェラが出した魔導具を見て、宰相が目を見張らせた。


「それは、スマホ!!」

「ええそうです」


「なんだスマホとは?」

「陛下、これはすごく多機能な通信魔導具なのです。私は今回、製作者のカオリコさんから200台預かり、販売するお仕事をいただきましたの。これが今回のご報告の全てですわ。カオリコさんに害が無ければ、アシャール叔父様も大人しいのです。多分」

「多分……か、まあ彼奴(きゃつ)も結婚して、多少は落ち着いたようだな」

「はい。ですから陛下、私に監視員としての報酬を下さいませ。それと監視は今回までにさせていただきますわ」

「うむ。後宮に戻ってくるか」


 皇帝にとっても、セシリア妃とマリーシェラには実の娘ほどの情はあった。血の繋がりのある子が男子ばかりなので、尚のことだ。勢いでアシャールと一緒に行かせたが、未開の土地の生活は不便ではないかなど、密かにやきもきしていたのだった。


「いいえ。これから真剣にネコノメの仕事に取り組みたいんですの。報告に寄る暇が惜しいのですわ」

「な……なるほど、真面目なそなたらしいな。しかしネコノメは周囲に森か山しかなかろう。生活するには不便ではないか?」

「いいえ、全く」


 マリーシェラの様子に、皇帝もこれは止められぬと理解した。


「わかった……そなたの今までの品位維持費の残額を持っていくが良い」

「ありがとう存じます」


 マリーシェラは優雅なお辞儀をして、皇帝にスマホの入った箱を渡した。


「こちら陛下に献上するよう、預かってきたものです」

「ほう、夫に似ず、気の利く女性であったか! ……あのように大勢の前で見せ物にしてしまったというのに……」


 最後の言葉は、ポツリと呟かれた。


「まさかシアンヌが後宮の妃達ばかりか、あのように大勢の貴族を集めてくるとは思わなんだ……詫びと言ってはなんだが、シュベルクランはネコノメを取り上げるようなことはせぬ。安心して暮らすよう伝えてくれ。くれぐれもアシャールのやつに知られぬようにな」

「かしこまりました」


 皇帝の言葉にマリーシェラは微笑んだ。


「しかしシアンヌにも困ったものよ……いくら公爵家から嫁いだ正妃とて、近頃は影で目に余るようなことばかりしでかしておる……正妃の責務がなんたるかも理解しておらん」


 皇帝はスマホを手に取って、無意識にライトモを開いた。

 現時点で一番動いているネコノメ(公式)アカウントが目に入った。


「なるほど、彼奴の妻はこんな顔をしておったのか……いかにもあの男に騙されるような、素朴で人の良さそうな女性であるな……」


 そこには、神獣:猫ちゃんたるミケ子を抱いて、やわとろに微笑む香子(かおりこ)の素顔があった。

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