43 週休二日
ネコノメに来て四日目にして、新居に入居してしまったわたし達。
午後は早速スキルちゃんおすすめ、普及版スマホの素材調達なわたしとミケ子とキトキトコンビです。
トレーニングな奈々美さんとコーチなアシャールさん、猫の目貯金を預けて、今までの収支とかまとめてくれてるマリーシェラさんと、そっと隣で応援するムウ。
そしてなんか自由なピホに分かれて行動していた。
わたし達の家が有るのは、ネコノメの中央部あたり。ネコノメは大体、日本の本州の三分の二くらい? 一番端に火山地帯があって、そこそこ山があって……そのおかげか水が豊富。平地もあるが、ほとんどが未開の森だ。
魔晶銅と魔晶石、星銀をまず採取する。
この三つもそこらの山に生えてるやつなので、取り放題と言うわけね。それから、霊性結晶という素材。これは魔物からいただかないといけんがいちゃ。
『愚かな人間、愚かな生者よ。この〈死の神官王レイエス〉に歯向かうと言うのか』
「いえ、特に。わたしは素材の採取に来ただけですので」
物理攻撃の効かない、アンデット系魔物の上位種〈レイエス〉、この神官の格好をした骸骨魔物が、周囲に飛ばしまくっている青黒い人魂っぽいの……それが目的の素材、霊性結晶です。本体が生きて(?)いる間は、取り放題。
自動採取で人魂採りながら、とりあえずわたしはご挨拶する。
「どうも。この土地の所有者になった香子です。まだまだ未熟者で手の届かないことばかりですが、どうぞ宜しくお願いします」
『なにっ所有者だと? 何を勝手な……ここは千年暮らした我が神殿、決して立ち退かぬぞ』
レイエスさんは森の中の廃墟と化した神殿で暮らしていらっしゃった。ぼっちで。
「はい。末永くお住まい下さい。わたしもレイエスさんが生んでくれる素材が必要なので助かります」
『素材……我を素材扱いするか、小娘……、…… …… ……ぎゃーっ! 天輪だけじゃなく原輪まで持っとるこの行き遅れぇぇぇ!!! 我、手も足も骨も出んではないかっ、たわけぇ! まっ、まさか我の操を狙って……!!』
なに、この面白い魔物。骨なのに操もへったくれもなくないけ?
「えーと、そんなわけないので、ご安心下さい」
『そんなわけないわけなかろう!! 我はレイエス一の美男子だぞ! 其方のその重い肉の身体で容易く我をアーッ!!!』
愉快ね、この骸骨。でもアシャールさんに会わせては絶対ダメなことはわかったわ。
自分を上回る美男子を見て、絶望に永遠の眠りにつくか、アシャールさんに粛正されるかの二択ね、きっと。
「あ、もう十分いただいたので、今日はこれで失礼します。また日をあらためてお願いします」
『ヤらず逃げーっ!!!』
そりゃそうですよ。
骨の美醜を判じて愛でるとか、難易度高すぎて。
わたしはさっさと家に帰る。材料は揃ったからね。
ついでに途中でまたキンマユガさんに会ったので、物々交換した。
「ただいまー」
「みゅー」
「ムきゅう」
ミケ子と一緒に玄関に入ると、ムウが出迎えてくれた。よしよしと頭を撫でる。
「ピピッホ」
ピホもご機嫌でやってきた。
手を洗ってリビングにいくと、誰も居なかったので、書斎へ向かった。
「まいどはやー! わたしでーす」
使ってみたかった地元の死語「まいどはや」で声をかけて中を見渡す。一階の書斎は事務所っぽくもなっていて、何台か机が用意してある。白銀の髪が見えて近づくと、マリーシェラさんは頭を抱えていた。
「どうしたの? 大丈夫??」
「……パーティ猫の目、お仕事してないです」
「あ、うん。まともにしたのって、アオリハでのアイアンリザードの駆除くらいかなぁ」
「まだ収支管理するほどの状態じゃないです……」
「あー……なんだかんだで、アシャールさん以外、お金もあんまり使ってないしね」
マリーシェラさんはすっと背筋を伸ばした。
「お仕事しましょう! 冬支度もありますし」
「あっ、ハイ」
「叔父様を呼んできます」
わたしはスマホを取り出して、ライトモの通話ボタンを押した。
「アシャールさん、ただいま〜。お仕事のお話するから、リビングに集まって」
『わかりました。十分後にそちらに』
「だって」
わたしはマリーシェラさんに微笑んだ。
「まずは、スマホの廉価版。こちら試作機です」
人数分試作機を配る。全員のスマホはタラセタを基盤に使った最新式になっているけど、外装だけは奈々美さんがタラセタを黒塗装して紋章と名前だけ金、マリーシェラさんはノクレイのまま魔宝石でリボンの装飾がしてあるよ。
当然だけどこれら猫の目エディションのスマホは、ゼルなんちゃらが踏んでも壊れないわ。ゼルなんちゃらもういないけど!
廉価版の方も頑丈にしてある。すぐ壊れたとか、苦情きたら嫌なので。
試作機の方は魔晶銅のおちついた赤銅色に猫の目ロゴマークがついただけのシンプルさです。画面の壁紙は、何種類かデフォルトで入っている。もちろん写真からのカスタマイズ可能。
廉価版なので、猫の目エディションに比べて画面ではなく外装の表面に傷はつきやすい。流石にゼルなんちゃらの爪や、硬い宝石で引っ掻いたら、ミケ子の毛ほどの傷がつく。
有料壁紙も用意した。スキルちゃんが用意したもの以外に、ピホが下僕ことリガル画伯にお願い? して、壁紙用の絵を何種類か提供いただけることになっている。お礼は現物支給なのです。
アプリはアカウント関係にライトモと地図、カメラ、録音、メモ、カレンダー、時計、リマインダー、メール、ヘルスケア、電卓、ライト、アプリストアを標準にして、鑑定アプリなどはアプリストアで有料購入する事になる。
購入はアカウントにチャージ方式だ。専用画面にコインを置くと、チャージした料金は戻りませんと表示されて、チャージするを押すと、コインは消えて新しい猫の目貯金箱にチャリンと入るのです。
この魔導具の貯金箱を、猫の目エディションスマホと連携すると、いつどのアカウントがいくらチャージしたかのデータがすぐわかる。
「このね、顧客アカウントの管理的なことは、やっぱりこの人数で対応無理なので」
わたしは例の魔導具をポチッとするちゃ。そう、魔物を生み出すあの魔導具を……。そうして第二団のフェアリーレイス団体さんが現れたのだ。
「スマホ関連対応部隊よ」
この世界の曜日は、日本と似てるけど、少しだけ違う。
週の始まりは陽の日。太陽が現れて始まる。そこから火の日、水の日、木の日、金の日、土の日、最後に月の日で終わる。猫の目の週休二日は、土の日と月の日の二日間。シュベルクランでは週休二日は珍しいそう。因みに今日は木の日だった。
「まあまずシュベルクランの皇帝には無料で進呈しようと思うのよ。外装だけタラセタにした特別感あるのをね。土地タダで貰っちゃったし。明日はそれをマリーシェラさんに届けてもらうのがお仕事第一弾。それからマリーシェラさんには、200台預けるので、好きに売りさばいて下さい。全部宰相さんに売っちゃっても、リリーティア妃やセシリア妃に託しちゃっても構いません。わたし達、大した縁故ないですからね」
マリーシェラさんは、元気に頷いた。
価格は一台22万ダル。にゃんにゃん価格ながいちゃ。
だいたいどこの国も、まず庶民には手が届かない額。Cランク以上の依頼をこなす冒険者や商人などは余程散財してない限り買えるだろうという範囲。
聞いてびっくり。大体の庶民の平均月収、4万ダル。春さんの月収8万ダルですって!
その代わり春さんの場合は住み込みだから家賃は要らないし、食事もお仕着せもある。冒険者よりも安定収入で、一般庶民に比べたら貯蓄も可能。
だからまあ、スマホは高級品になるのでターゲット層は稼いでる冒険者や商人、そして貴族です。
ただしこのにゃんにゃん価格は卸値よ。
小売価格は販売先に決めてもらう。それぞれいろんな事情や戦略が有るだろうからね。
「わかりました、宮廷での販売は任せて下さいませ!」
「お願いね。明後日からは二日休みなので、あちらでゆっくりしてきてもらってもいいですよ。ただし、マリーシェラさんはアシャールさんの監視というお役目を皇帝からいただいているので、その分の報酬、ちゃんと貰えてるのか心配なの」
マリーシェラさんはくすくす笑った。
「ふふふ、そうでしたわ。そこもしっかりと陛下と話し合ってきます」
「スマホを渡すのは、報酬が決まってからにしてね。それでわたしとアシャールさんは、明日はアオリハに行ってきます。リガルさんに渡すスマホと、なんか大きな商会とかと繋がりもってそうな眼鏡の冒険者ギルド長さんにスマホ売って来ます。それからゼニアス大神官様にも進呈してこようかと」
「なるほど。神殿に受注窓口を受け持っていただいても良いですね。あそこは人も多いですし」
アシャールさんが頷いた。
「私は何をすればいいんですか?」
奈々美さんが手を挙げる。
「移動に馬車が必要だと思うので、マリーシェラさんと一緒に行動してほしいの。うちのパーティはまだGからFに上がっただけだし、できればシュベルクランの冒険者ギルドの様子をみて、受けれそうな依頼がないか確認して欲しいな」
奈々美さんは少し考えてる。
「私とマリーシェラさんで馬車を使ったら、香子さんとアシャールさんはどうやってアオリハまで行くんですか?」
「ミケ子とピホの移動スキルで連れて行ってもらうわ。アシャールさん、明日は迷子にならないよう、しっかり手を繋いで行きますからね!」
「…………!! ええ、そうしましょう」
奈々美さんは頷いた。
「そういう事でしたら、任せて下さい。マリーシェラさんが土、月と向こうでお泊りされるようでしたら、一旦こっちに戻って、迎えに行きます」
「ダメ! ダメよナナミさん! 私もう元のおトイレに戻れない!! 馬車ごと一緒に居て!!」
「ええ?!」
うん。おトイレはしょうがないちゃ。本当、しょうがない。わたしは奈々美さんに、キトキトコンビのパナマ草をたっぷり用意する事にした。
そしてキンマユガシルクの寝具と寝衣の肌触りは最高で、わたしは寝る前に、全員分の下着の作製もスキルちゃんに頼んでおいた。
ああ〜贅沢ぅ〜。
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