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スキルちゃん爆進⭐︎おばさん、気づけば異世界で最強夫婦してました (旧:ノンタイトルおばさん〜勇者でも聖女でもなく〜)  作者: 天三津空らげ
12章 マイホームとスマホ事業

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42 念願の

 アシャールさんの後にわたしもお風呂でさっぱりしてから、調理場へ向かう。


 本日の昼食はですね、新居が出来たら挑戦すると言っていたアレですよ。しかも、ゼルなんちゃらので作って欲しいとアシャールさんに頼んであるのです。

 前夜から丹念に下拵えをしてあって、わたしはスープの温めを手伝った。


「このスープの中に、本当にゼルなんちゃらの脳みそが入っているの?」


 お鍋の中の、とろみのある濃厚なスープを見る。


「ええ、香子(かおりこ)や奈々美さんは食べ慣れないでしょうから、裏漉しして原型を無くしてあります」

「アシャールさんのそういう配慮、めちゃくちゃ大好きだわ」

「ふふふ、そうでしょうとも。私は妻が離したくない夫を目指していますからね」


 アシャールさんは鉄板でじゅうじゅうお肉を焼いていく。香ばしい匂いが、どうしてもダイニングに充満する。下味のついた部位の違うお肉に麦米粉(むぎこめこ)をまぶし、三段重ねにしてからゆっくり石窯で中まで火を通した。そのお肉を切り分け、仕上げに焼き目をつけているのよ。結構、手がこんでるわ。


「ミケ子、もうちょっと待っててね」


 匂いに釣られて、ミケ子がわたしとアシャールさんの足元を行ったり来たりしてるの。お鍋をかき混ぜながら、ミケ子が鉄板の上に乗ってしまわないかとヒヤヒヤしちゃう。


「ミケ子さん、こっちですよー」


 奈々美さんが猫じゃらしを振って、気を反らそうとしてくれたけど、ミケ子は調理場と猫じゃらしを交互に見つめて、シンク前のカウンターに飛び乗ると、どっしりと香箱座りする。

 そこから、わたしとアシャールさんの監視をすることに決めたらしい。


「……負けて……しまいました……」


 猫じゃらしを持った奈々美さんが、悔しそうに項垂れちゃった。



 スープに火が通って、漆塗りを施した木製のスープボウルに注ぐ。フェアリーレイス達が、パラパラと香草とピンクペッパーを乗せて、テーブルまで運んでくれる。

 焼き上がったお肉は、蒸し野菜を添えてリガルさんに貰ったお皿に乗せられる。わたしの分だけ。

 他は、同じように木と漆のお皿で、食事が乗る中心部にタラセタが象嵌してあるものだ。ナイフを使っても、傷つかない。カトラリーは同じくタラセタで造り直した。ノクレイより食器との色合いが良かったので。


 最後にパンを運んで、食卓につく。


「豪華!」


 わたしは食卓を見回して、感想がそれしか出なかった。


「さ、ドラゴンの心臓肉焼きと脳みそのスープです」

「ド……ドラゴンの心臓と脳みそ……」


 奈々美さんは戸惑った顔をしてるわ。


「大丈夫? 奈々美さん。一応形がわからないようにしてくれてるんだけど、無理だったらふつうのサンドイッチとかもあるわよ」


 マリーシェラさんが、口元を押さえて驚いている。


「……っ、まさかゼルヴァスヘルベインの心臓と脳みそなんですの?! ナナミさん、これは無理でも一口だけでもいただいておいた方が良いですわ。魔物はその心臓と脳みそが一番食べる価値のある場所と言われてますの。でも一番腐敗が早くて、狩ったその場でしか食べれない貴重食です。ましてやドラゴンの物など、一国の主人でもそうそう口に出来ませんわ」


 マリーシェラさんの演説を後押しするかのように、待ちかねていたミケ子が勢いよくスープを飲んでいる。アシャールさんは、ちゃんとミケ子のために別鍋で味付けに配慮したものを作ってくれていた。たまご組は残念ながら食さない。


「みゅっ、みゅっ」


 こんなに夢中になって食べているミケ子は、初めて見たちゃ。


「美味しい? ミケ子」

「みゃう〜」


 ミケ子のふわふわ毛が、いつも以上にぽっぽと光る。


 その様子に、奈々美さんも覚悟が決まったようだ。


 わたしと奈々美さんとアシャールさんは手を合わせた。


「「「いただきます」」」


「いただきます?」

 マリーシェラさんは、こてんと首を傾げた。



「美味しい〜お肉もスープも、想像してた臭みとか全くない! スープ、パンに合う〜」


 元のお姿からは想像できない上品な旨味に、わたしはにっこにこになった。


 こんなに美味しいのは、きっと素材の力だけじゃなく、アシャールさんが丁寧に下拵えしてたからなんだわ。

 何より魔力がすっごく豊富。胃もたれとか拒否反応が心配だったけど、そんなことはなかった……一切なかった。


 脳内でスキルちゃん達も大喜びやちゃ。


『脳の脂は脳に良い、るるん』

『本体の魔力と処理能力が上がりました。ららん』


 え? ステータス値上げてくれるの?

 一時的なものじゃなくて、永続的?

 それは本当に、希少食だわ。


「本当に食べやすい……! アシャールさんやっぱり料理の天才じゃないんですか? お肉重ねたこのステーキ、上下のお肉が柔らかくふわっとして甘みがあるのに、真ん中の歯応えのあるお肉が一緒だと、もっと美味しいんです」


 奈々美さんもすっかり笑顔だし、ミケ子も小さく切ったお肉を真剣に食べている。


 ……ミケ子、一気にレベルアップしてるわ。善き!!


「二人とも、お口に合って良かったです」

「良かった。叔父様について来て。おかげで翼が増えそうですわ」


 翼……。フェイ族の翼って、確か生命の力と魔力に影響するんだっけ?

 マリーシェラさんがあの翼を広げたら、そりゃ天使か女神様みたいだろうなぁ。


 わたしはゼルなんちゃらと戦うアシャールさんの絵皿で、ゼルなんちゃらの心臓をナイフで切り分けながら、とても満足して頬張った。

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