↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラヴ・ソルジャー ~悪魔に恋しちゃダメですか?~  作者: 紫龍院 飛鳥


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/33

番外編③:誕生――新たな時代の子


それから十か月近く。


ルドルフとムエルタの間には、もうすぐ新しい家族が増えようとしていた。


「ルド……!」


「ルタさん!?」


ある夜。


ムエルタが突然、腹部を押さえた。


「……き、来たかもしれない」


「えっ!?」


「赤ちゃん……生まれる!」


「よ、よし! 落ち着け俺! 落ち着け……!」


「ルド、私より慌ててない?」


「だ、だって俺、父親になるんだぞ!?」


「ふふ……」


しかし、次の瞬間。


「……っ!」


「ルタさん!?」


ムエルタが苦しそうに顔を歪める。


「冗談言ってる場合じゃない! すぐ産婆さんを呼んでくる!」


「お願い……!」


ルドルフは大急ぎで家を飛び出した。


⸻


それからしばらくして――。


「うぅぅ……!」


「頑張ってください、もう少しですよ!」


「ルド……!」


「ここにいる! 俺はここにいるからな!」


「絶対……手、離さないで……!」


「離さない!」


ルドルフはムエルタの手を強く握る。


「俺も一緒にいる! だから頑張れ!」


「うぅぅぅぅ……!」


そして――。


「もう少し!」


「頑張れ、ルタさん!!」


「――っ!!」


「……!」


次の瞬間。


部屋に、小さな産声が響き渡った。


「……おぎゃあ……おぎゃあ……!」


「…………」


ルドルフは呆然とする。


ムエルタも息を切らしながら、その声を聞いていた。


「……生まれましたよ」


「……赤ちゃん」


ムエルタの目から涙がこぼれる。


「……私たちの子……」


「……ああ」


ルドルフも目を潤ませながら笑った。


「俺たちの子だ……!」


産婆が小さな赤ん坊を二人の前へ連れてくる。


「男の子ですよ」


「男の子……!」


「……男の子か」


ルドルフはそっと赤ん坊の小さな手に指を差し出す。


すると――。


きゅっ。


小さな手が、ルドルフの指を握った。


「……!」


「ルド?」


「……握った」


「ふふ……」


「俺の指、握ってる……!」


ルドルフの目から涙が溢れた。


「はは……こんなに小さいのに……ちゃんと俺の息子なんだな……」


「うん」


ムエルタも我が子の頬を優しく撫でる。


「……可愛い」


「……ああ」


二人はしばらく我が子を見つめていた。


そして――。


「……名前」


「うん」


「もう決めてたよな」


「うん」


二人は顔を見合わせる。


「『アルト』」


「……アルト」


「人間と魔族――二つの種族の間に生まれたこの子が」


ムエルタは我が子を胸に抱く。


「いつか二つの種族を繋ぐ存在になってくれたらいいなって」


「……人間と魔族の調和を保つ存在」


ルドルフも頷く。


「いい名前だ」


「うん……」


ムエルタは優しく微笑む。


「アルト」


「……お前は、人間でも魔族でもある」


「どちらかを選ばなくていいんだ」


ルドルフが続ける。


「人間の父ちゃんと、魔族の母ちゃん」


「その両方の血を受け継いでるんだからな」


「……だから」


二人は同時に我が子へ語りかける。


「自分らしく生きろ」


「アルト」


「私たちがずっと見守ってるから」


「……うん」


アルトはまだ何も分からない。


ただ、小さな手を握りしめている。


その小さな命こそが――。


数百年に及ぶ人間と魔族の争いが終わった時代に生まれた、最初の世代の一人だった。


⸻


そして翌日。


両家にもアルトの誕生が伝えられる。


「男の子かぁぁぁ!!」


ルドルフの父は大喜び。


「俺の初孫だぞぉぉぉ!!」


「もう、お父さんったら!」


母も涙を流しながら笑う。


一方、ムエルタの父は――。


「……男の子」


「はい」


「……俺の孫」


しばらく黙り込んだ後、


「……よし!」


「お父さん?」


「俺が立派な農家に育ててやる!」


「そこは本人が決めるんじゃない?」


母が苦笑する。


「……そうだな」


アルトの写真を見つめるムエルタ父


「だが、あの子がどんな道を選ぼうと……俺はあの子の味方だ」


母も微笑んだ。


「ええ。私たちみんな、あの子の味方よ」


⸻


その日の夜。


農園の小さな家。


ムエルタは眠っているアルトを胸に抱き、ルドルフと並んで窓の外を見る。


満天の星空。


「……綺麗だな」


「うん」


「昔はさ……」


ルドルフが静かに呟く。


「人間と魔族が、こんな風に一緒に暮らせる日が来るなんて想像もできなかった」


「私もだよ」


「でも……」


ルドルフはアルトを見る。


「この子が大きくなる頃には、それが当たり前になってるといいな」


「……きっとなるよ」


ムエルタは微笑む。


「だって、この子がその未来を作っていくんだから」


「……ああ」


二人はアルトを見つめる。


かつて勇者と魔王軍の幹部だった二人。


敵同士だった二人から生まれた、新しい命。


その名は――アルト。


人間と魔族。


二つの種族の架け橋となることを願って名付けられた、小さな男の子。


そして彼の誕生は――。


人間と魔族が共に歩み始めた、新しい時代の象徴となった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。