第二十八話
月光が魔王の間を満たしていた。
ムエルタとルドルフ、二人の手から放たれた真のムーンライトセイバーは、闇を切り裂きついに魔王の胸を貫いた。
「が……あ……」
魔王は、ゆっくりと膝をつく。
巨大な身体が崩れ落ちていく。
「……なるほど」
その声には、もはや憎悪も怒りもなかった。
「人と……悪魔……争うために生まれた存在が……共に手を取り、ここまで至るとは……」
魔王は、二人を見た。
「……見事だ、その覚悟、その愛……我が敗れるに、十分すぎる理由、だ」
光が、魔王の身体を包む。
「この世界の未来……もはや、我の時代ではない……」
最後に悟ったかのようにニヤリと微笑み
「さらばだ勇者よ……そして、悪魔騎士よ……」
月光の中で魔王は静かに消滅した。
・・・・・
長い戦いが終わりを告げた…
半壊した魔王の間、そして天井の裂け目から朝の光が差し込む。
「……終わった……?」
ルドルフの手からイクスセイバーが静かに光を失う。
次の瞬間。
「……っ!」
彼の足が、崩れた。
「ルド!」
ムエルタがすぐに支える。
「無理しすぎだ……!」
「へへ……」
ルドルフは弱々しく笑った。
「ごめん……でも、立っていたかったんだ……」
その時
「ったく……最後まで無茶しやがって……」
瓦礫の向こうから声がした。
「ラ、ラミレス!?」
「文句は一先ず後にしといてやる……生きてるなら、それでいい……」
ハーミア、リーネ、シドウ
倒れていた仲間達が次々と立ち上がる。
「……まったく、心配させてくれるわね」
「でも……よくぞやってのけましたね」
ハーミアは、涙を拭いながら微笑んだ。
「貴方は……本当の、勇者様ですわ」
「異議はなし、でござる」
魔王城の崩壊と共に世界を覆っていた重苦しい空気が消えていく。
空は晴れ、夜は明けた。
人間の街でも、魔族の領域でも同時に朝日が昇る。
争いの象徴だった城は崩れ、新しい時代が静かに始まっていた。
…帰路につく一行
仲間達が少し距離を取る中、ルドルフはムエルタの前に立った。
彼は、深く息を吸う。
「……ルタさん」
「私は……」
彼女の声は震えていた。
「私は……軍を裏切り、魔王に背き……多くの罪を背負っている……それでも……一緒にいていいのか……?」
ルドルフは、首を振った。
「違う」
そして…膝をついた。
「ル、ルド!?」
仲間達が息を呑む。
ルドルフはまっすぐに彼女を見上げた。
「俺は……君を救うために戦ったんじゃない…君と、これからを生きるために戦った」
彼の声は、揺るがない。
「人間と悪魔とか、寿命が違うとか、世界がどうとか……全部分かってる」
一拍呼吸をおき続ける
「それでも俺は――」
彼は真っ直ぐ手を差し出した。
「ムエルタさん…どうか俺と、結婚してください」
「…っ!?」
一瞬その場に沈黙が訪れる
「この先どんな未来が来ても、君の隣で生きたい!命が尽きるその日まで……いや、たとえこの命尽きようとも、君を愛し続ける」
ムエルタの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「……ずるい、そんなこと言われたら……」
彼女はルドルフの手を強く握った。
「断れるわけ……ないだろ……」
声が、震える。
「私は……ずっと独りだと思ってた……でもルドが、私の居場所をくれた……」
涙を流しながら、それでもはっきりと言った。
「……はい!喜んで、あなたのお嫁さんになります」
朝日が二人を包む。
その後、ラミレスが照れくさそうに笑った。
「まったく……最高の戦場で最高の告白しやがって……幸せになれよ、親友」
ハーミアとリーネは泣き笑いで拍手した。
「本当に……おめでとう」
「お二人の門出に神の祝福があらんことを…」
「良きかな、良きかな…」
こうして、人と魔族との長きに渡る戦争は五人の、いや…”六人”の勇敢なる若者達の手によって終止符が打たれた。
そしてこれからは、愛から始まる新しい物語が…幕を開けようとしていた。
To be continued...




