第二十六話
玉座から立ち上がった魔王の魔力が空間そのものを歪ませていた。
「来い、勇者ども!」
その一言で、戦いが始まった。
「行くぞォッ!!」
先陣を切ったのはラミレス
剣に魔力を乗せ、正面から突撃する。
「甘い!」
魔王の一振りで、衝撃波が走る。
「ぐっ……!」
だが次の瞬間
「今です!」
ハーミアの詠唱が完成する。
「『セイクリッド・ジャッジメント』!!」
光の剣が雨のように降り注いで魔王の動きを封じる
「シドウさん!」
「心得た!」
シドウが短刀を構えて魔王の懐に飛び込む
「『シノビ剣術 闇斬り』!!」
無数の斬撃を食らわせる、だが決定打に欠け致命傷には至らず
「…浅いか」
「シドウ退いて!魔法がいくわよ!」
詠唱を終え準備完了のリーネ
「くらうがいいわ!人類最強の大魔導士リーネ様のとっておきの秘奥義!爆ぜよ!『ギガントエクスプロージョン』!!」
無数の魔方陣が魔王の周りに展開し連鎖爆発を起こす
「ぐおぉぉぉぉ!!」
これには流石の魔王も悲痛の声を上げる
「今よ!やっちゃいなさい!ラミレス!ルド!」
リーネが叫ぶ
「ルド! 合わせろ!」
「ああ!」
二人の剣が、同時に振り下ろされる。
その瞬間、魔王が初めて後退した。
「……面白い」
だが次の瞬間、
魔王の魔力が爆発する。
「調子に乗るな!」
吹き飛ばされる仲間達。
「くっ……!」
ルドルフは踏みとどまり、盾となる。
「ルド!」
「平気だ……!」
だが膝は、限界だった。
ルドルフが必死に耐えている丁度その時だった。
「ハァ、ハァ、どうやらまだなんとか間に合ったみたいね…」
「ハ、ハートリアさん!」
リオと戦い、ボロボロとなりながらも駆けつけたハートリア
その手には没収されたはずの”悪魔騎士の装備品一式”があった。
「ハートリアさん、それ…」
「ええ、これ探してたら少し時間かかっちゃった…これで、あなたも戦えるわね?」
「ありがとう、ございます…」
ムエルタに装備を渡した直後、倒れ込むハートリア
「っ!?」
「安心して、ちょっと疲れただけだから…後は、任せたわ」
(……私は……)
仲間
恋人
そして…己の戦う理由。
ぐっと決意を固めムエルタは顔を上げしっかりと前を見据えた。
「……ありがとう、ハートリアさん」
装備を身につけ、両手に剣を持ち立ち上がる
その姿はかつて、冷酷非道と恐れられた悪魔騎士そのもの。
だが、その瞳は違った。
魔王が、愉快そうに笑う。
「なるほど……実に、実に愉快だ!勇者に、悪魔騎士、そして裏切り者の四天王補佐」
魔王の魔力が再び膨れ上がる。
「ならば見せろ!この魔王を超える覚悟を!」
勇者パーティーが、再び立ち上がる。
そしてムエルタがルドルフの隣に立った。
「……今度は、私も戦う」
ルドルフは、微笑んだ。
「一緒に帰ろう」
「ああ」
剣が、交差する。
それぞれが、守りたいものを背負い、命を賭けてその場に立つ。
「いくぞぉ!みんなぁ!」
「「「「「おうっ!!!!!」」」」」
再び一丸となって魔王に挑みかかる勇者パーティー&ムエルタ
しかし、強大すぎる魔王のフルパワーを前に苦戦を強いられてしまう
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
床に倒れ伏す、勇者パーティー。
ラミレス
リーネ
ハーミア
シドウ
全員が限界をとうに超えていた。
武器は砕け、魔力は尽き、呼吸すらもままならない。
「……これで、終わりか?」
魔王は、ゆっくりと歩み寄る。
「勇者パーティーよ…やはり人の身では、この程度か?」
その圧倒的な存在感に、空気が重く沈む。
…だが、その場に”二人だけ”立っている者がいた。
ルドルフ…そして、ムエルタ
剣は既に折れ、鎧は原型を留めていない
血に塗れ、呼吸は荒く一歩踏み出すのも困難。
それでも尚、二人は倒れなかった。
「……まだだ」
ルドルフは、魔王を睨む。
「俺は……まだ、立ってる」
ムエルタも、震える足で踏みとどまる。
「……終わらせない」
魔王が、鼻で笑う。
「たった二人だけで、何ができる?絶望を、受け入れぬ限り……死は免れん」
すると、その時だった。
「……ルド」
かすれた声のラミレス
ルドルフが振り向く。
床に倒れていたラミレスが必死に上体を起こしていた。
「ラミレス!無理するな!」
「……聞け」
ラミレスは笑った。
「ああ、ボロボロだな…俺」
ゆっくりと自身の剣に手を伸ばす…それは『聖剣イクスセイバー』
歴代の勇者のみが振るった、
選ばれし剣。
「……ルド」
ラミレスはルドルフに剣を差し出した。
「これを……受け取れ」
「なっ…!?」
ルドルフは、思わず後ずさる。
「ラミレス!?お前、それ……!でもそれって……選ばれし勇者にしか使えないんじゃ……!」
ラミレスは、静かに首を振る。
「何言ってんだ…」
力のない声。
だが、確信に満ちていた。
「お前はもう……十分、”勇者”だよ」
「……!」
ラミレスは、天井を見上げる。
「昔さ……俺、勇者に選ばれた時…正直、誇らしかったんだ…世界に選ばれた気がしてさ」
小さく、笑う。
「でもな……今となっちゃ分かる」
視線をルドルフに戻す
「勇者ってのは、大切な何かを守る為に何度でも立ち上がれる者…そういう意味じゃ……」
息を吸い、はっきりと言い切る。
「俺なんかよりも…お前の方が、よっぽど立派な勇者様だよ」
「ラミレス…っ!」
すると、その瞬間だった。
イクスセイバーが突然光を放った。
淡い光ではない。
眩い、力強い輝き。
「……っ!?」
ルドルフの手が、震える。
(剣が、拒まない…)
「まさか……」
魔王が、目を細める。
「聖剣が……選び直した、だと?」
光はルドルフの全身を包み込む
傷ついた身体に熱が巡る。
(……不思議だ、力が溢れる)
ルドルフは、剣を握りしめた。
「……ありがとう、ラミレス」
静かに、だが力強く。
「この剣…お前の思い…絶対に、無駄にはしない!」
ラミレスは、満足そうに笑った。
「ああ……それでいい…行け、『勇者ルドルフ』……守りたいもん、全部守ってこい……!」
「……任せろ」
ルドルフは、前を向く
その隣に、ムエルタが立つ。
「……私もいる」
「今度こそ、最後まで一緒だ」
二人が、並び立つ。
魔王が、低く唸る。
「面白い……勇者の資格を、自ら掴み取るとはな…ならば見せろ!新たに生まれた勇者よ……!」
ルドルフは、剣を構えた。
イクスセイバーがルドルフの想いに呼応するかの如く強く輝く
「行こう、ルタさん!」
「ああ!」
二人の影が、重なる。
倒れた仲間の想い
託された剣
選び直された新たなる“勇者”
最後の一撃が今、振るわれる。
To be continued...




