ういさんの物語 28話 新たな予言
各地での調査報告を終えた翌日・・・
再び各地に予言者が現れた。
「人間世界は、分断され、断絶する」
「希望した者には、新天地を与える。」
「期日は1ヶ月後、心して待て。」
姿は、以前と同様に、色々な職業の姿で現れ、しばらくすると消え去った。
不思議な予言だ。
ういさん達、教会専属ギルドのメンバーは、教会に集まった。
クルセイダーのムーンフィッシュが予言について、たずねた。
「人間世界は、分断され、断絶する? これは、どういうことだ。」
歌姫のモーラも疑問を呈した。
「神は、一体何を企んでいるのだ。まったく意味がわからん。」
ギルドマスターセリカは、みなを前にして発言した。
「また時間が巻き戻る可能性がある。3日前の時点で再び招集するが、
各自それまでに、備蓄の準備を整えてくれ。
前回と予言の内容が違うが、分断されるという言葉が気になる。」
ムーンフィッシュがたずねた。
「今回も3日前に巻き戻ると思うか?」
「確実に戻る可能性があるだろう。だから、前回の反省を活かして、
その前に芋を大量に仕込んでおくんだぞ?」
セリカが答えると、次に、ういさんが誇らしげに語った。
「ういさんなんてな!バナナを食べ尽くして、再びバナナが復活して、
さらに食べ尽くしたのに、また時間が巻き戻って、バナナをさらに食べたのだ。
なんと、3回もバナナ尽くしを堪能できたのだ。」
「ういさんを見習う事にするよ。」
ムーンフィッシュは乾いた笑いをしていた。
それから一ヶ月、特に世界には何も異変は起きなかった。
予言の件もあり、各地での調査は一時中断となった。
BOT消滅後も、まだ都市の人口は戻っておらず、人手不足は解消していなかった。
「飯がまずくなった。」
ういさんは、飯屋のレベルが下がった事に不満を漏らしていた。
「仕方ないね。ういさんが料理レベルを上げてみんなに提供すればいいんじゃないか?」
クルセイダーのムーンフィッシュが提案した。
「ういさんの料理レベルは絶望的だ。それは無理なお話だ。」
「そ、そうか・・・。」
「そういえば、ムーンフィッシュ!芋は調達したのか?」
「大量に仕込んだよ。100人分仕入れた。当分は安心だ。
ういさんは、バナナは大丈夫なのかい?」
「当然だ。バナナがないなんて、死活問題だからな。食うか?」
どこからともなく、ういさんはバナナを取り出すと、ムーンフィッシュに
何本か手渡した。
「ありがとよ、ういさん。」
教会には、ギルドメンバーがある程度揃っていた。
だが、ギルドマスターのセリカがいない。歌姫モーラが入って来た。
「セリカさんは裸族ギルドとの会合で、遅れるから先に話を進めてねって。」
シャドウチェイサーのネギが入って来た。
「出納係のまーちゃんは、税事務所に捕まって来られないらしい。」
「誰が議事進行する?」
「んー、、、どうしようか?預言の日いつだっけ?」
「あと4日・・・。じゃあ、明日が巻き戻る予定の日か。」
「そうだね。」
ぐだぐだ過ぎた日の午後、セリカとまーちゃんが戻って来た。
「遅くなった。すまん。」「おそくなりもーしたー!」
「さっそくだが、明日から3日間、時間が巻き戻ると予想される。
それを利用して初心者ギルドは悪事を働くらしい。一切なかったことになるからな。
裸族は、裸祭りを開催するらしい。一切なかったことになるからな。」
セリカに続いて、出納係のまーちゃんからも連絡があった。
「時間が巻き戻ると予想されるので、ギルド資金を大放出する。
大盤振る舞いするので、豪遊して良し!」
「まじか!」「うれしい!」「いくらもらえるんだ!」「早くくれぇ~!」
セリカが注意喚起した。
「ただし、今回も時間が巻き戻るなら・・・だ。本当に巻き戻るとは誰も言っていない。」
「え・・・」「マジか・・。」「裸族はやるんだろ?」「豪遊は?」「ちょっ・・・。」
「だが、予言前に色々準備出来たら、まぁたまには良いだろう。
ただし、くれぐれも言っておくが、時間が巻き戻らない事も考慮してセーブしておくように。」
「はい。」「ういっす。」「了解しました。」「早く金をくれ!」「やり遂げます!」
「何言っているんだ。巻き戻ると言われているのは、明日からだ。なので、手渡すのは明日だよ。」
「早く明日来い来い。」「明日だ。」「ワクワク。」
次の日・・・
ギルドメンバー全員集結した。
出納係のまーちゃんから、ものすごい金額の銭がみんなに手渡された。
「ほい。ほい。ほい。重いから気を付けてね~。」
セリカが注意喚起した。
「預言の通り、もしも、このまま断絶となり、バラバラになったとしても
それぞれが再出発できるための資金として手渡している。心して使うように。
時間が本当に巻き戻るなら、いくら銭を使っても構わないがな。」
「ありがとう。」「感謝する。」「豪遊だぁ。」「再出発なんて言わないでぇぇ。」
悲喜こもごもな反応だった。
それから予言の日まで自由時間となった。
初心者ギルドへ行ってみたが、幼稚園と呼ばれている拠点はもぬけの殻だった。
裸族は、別の街で裸祭りを開催しているらしい。
首都では、どうも問題があったらしい。
ういさんは、呪いの装備を外し、高性能で強い魔力を帯びたアクセサリーなどを
装備して、普段とは違うスタイルになった。
「ムーンフィッシュさん。ヒールさせて!」
また芋を購入しようとしていたムーンフィッシュに声をかけた。
顔がひきつっていた。
「え、なんだって?瀕死になるだろ?いくら時間が巻き戻るからって・・・やめてくれ。」
「ヒール!」
問答無用でヒールを放った。
体が光り輝き、体力が回復しているようだった。
「お・・・?回復している・・・どうした?」
「ふふふ。」
ういさんは笑顔で去って行った。
「治癒魔法って、こんなに町中の人にかけて良いものだったんだ・・・。」
瀕死にさせる極悪治癒魔法は、だれにでもかけられるものではない。
ういさんは、知り合いに会うたびに、ヒールをかけてまわった。
全員が、必死に抵抗しようとしていた。
「や、やめてくれぇぇ。」「ういさんのヒールだけは、やめて、お願い。」
「う、ういさん、お願いですから、ヒールだけはかけないで!」
「ふふふ。ヒール!」
笑顔で天使のように振る舞い、ヒールをかけてまわるういさんは有頂天だった。
「だって、普段の装備だったら、みんな死にかけるんですもの。」
「あはははは、楽しい!」
そして、予言の日当日を迎えた。
教会に、ギルドメンバー全員が集結した。
ういさんはワクワクしていた。
「今日は何が起きるかな?この3日間で、バナナはすべて食べ尽くした。」
「何が起きても良いように準備だけは入念に行った。」
クルセイダーのムーンフィッシュは硬い面持ちで待機していた。
セリカが壇上に上がり、みんなを前に発言した。
「今日が予言の日だ。予言の内容は不穏だが、みんなでこの難局を乗り切りたい。
前回と同じであった場合、再び、3日前に巻き戻る可能性がある。
巻き戻った場合は、そこから状況を把握していきたい。それまではしばらく待機だ。」
「了解。」「了解っす。」「わかりま・・・。」
セリカがしゃべり終えた後だった。
・・・一瞬だった。
前回と同じだ。みんな一瞬消え、みんな再び現れたように見えた。
ういさんは、また、大量のバナナに囲まれていた。
「よし。計画通り!」
セリカも檀上にいる。
「一瞬だったな。もう3日前に巻き戻ったのか。もう予言は実行されたのか。」
セリカは違和感を感じた。
「だが、何かおかしい。ギルドメンバーが足りない。」
ういさんもあたりを見回した。
「3日前は、全員が揃っていたはず・・・、
ネギ、まーちゃん、チョイサー、スミス、モーラもいない。えっ・・・?」
ギルドメンバーの大半がいなくなっていた。
「時刻は・・・前回と同じだ。
3日前だったなら、この時間帯にみんな居たはず。おかしい・・・。
2人1組で、外を調査してまわれ。決して離れるな。
私は、他のギルドと連絡を取る。昼までには、一旦戻れ。」
ういさんは、残ったクルセイダーのムーンフィッシュと街中の変化をさぐった。
あきらかに、また、街の人口が減っている。極端に減っているのがわかる。
それ以外では、変化は確認できなかった。
昼過ぎ、ギルドへ一旦戻った。
セリカが壇上で説明した。
「他のギルドでも、メンバーが大量に消えて居なくなった。
消えた者とは連絡が取れず、応答がない状況だ。
裸族は、ギルドメンバーの半数が消えた。クルセイダーギルドも1/3が消えた。
初心者ギルドに至っては全員応答なしとの事だ。」
「マジか・・・。」「そんなに・・・。」「みんな言葉を失った。」
「まーちゃん、モーラ、ネギ、いずれも連絡を試みたが、応答がない。」
「待て、インクから通信が入った。南の広場に予言者が現れたとの事だ。
よし、みんな広場へ向かうぞ。」
全員で南の広場へ向かった。
予言者が居た。
赤く深い帽子をかぶり、マントを羽織った老婆の姿をした、いかにも予言者風の風貌だ。
「神は、新しき平行世界を作った。」
「神へ願うものに、新天地を与え、みな旅立った。」
「もう元に戻る事はできぬ。」
「これは彼らが希望した事。」
セリカが予言者に食って掛かった。
「並行世界とはなんだ・・・。」
「・・・この世界と、まったく同じ形をした新世界。そこへ彼らは旅立った。」
「戻って来ないのか、もう会えないというのか・・・!」
「・・・これは、彼らが望んだ事。さらばだ。」
そういうと、予言者は消え去ってしまった。
セリカは、叫んだ。
「つい、さっきまで一緒に居たというのに、どういうことだ。
一体、何を望んだら、消えてしまうというのだ。」
ギルドマスターは、絶望に打ちひしがれた。
活力を失った人間世界は、暗黒時代へ突入した。
29話へ続く。




