ういさんの物語 14話 魔王会議
南方にある古代遺跡、その地下の一角で、魔王を中心とした魔王会議が開かれた。
漆黒の大部屋に簡素な椅子とテーブルが乱雑に並べられただけの部屋だが、
そこに魔王軍の幹部達が揃っていた。
「会議を始める。まず、生産部門から、きのこ!」
きのこの化け物が立ち上がった。
「はっ。地下のきのこ栽培は順調。1年支えるだけの食糧生産は可能。
ただし、これ以上に、召喚数が増えるのであれば、逼迫する。
そこでお願いです。我々を討伐に来るBOT、それらが持っている高栄養ポーションを
生産部門に渡して頂きたい。非常に高いエネルギーを秘めているため、
栽培に役立つのだ。」
「迎撃部門 担当 きつねとおおかみ!」
「はいっ、迎撃部門では、毎度討伐にやってくるBOTをすべて撃破。
回収したBOTは、生産部門に引き渡す事とします。」
「引き渡す。」
女狐の化け物と、狼男の化け物が揃って発言した。
「次に召喚部門、ばなな!」
木の化け物が発言した。
「召喚数は1万体を超えた。だが、当初の想定通りには行っていない。」
「どんな問題が?」
「ひとつ、凶悪な魔物だけの召喚はかなり難しくランダムにしかならない事。
ふたつ、まれに幽霊・・・いや思念体が召喚され、それらは仲間にならず、
勝手にどこかへ飛び去ってしまう事。
みっつ、この世界のものではない魔物が召喚される事がある事。
などがあげられます。」
「この世界のものではない魔物とは、どんな魔物だ?」
魔物達の興味の目が注がれた。
「ごくわずかではあるのですが、このような事例がありました。
先日、私とそっくりのバナナの木の化け物が召喚されました。
彼女にどこに生息していたか聞いたところ、ここではない、違うところの魔王軍に
所属していたとの事でした。」
「なに?魔王が他にもいるのか。」
「良く話を聞くと、その世界は、こことそっくりな世界だったとの事。
その世界では、魔王様が人間の街を襲い、恐ろしく巨大な城を築き上げていたとの事。」
「ほう・・・私より頑張ってる魔王だな。」
「ただ、人間の軍隊に敗れて、散り散りになったところで、意識を失い、
気付いたら、こちらに召喚されていたとの事でした。」
「・・・興味深い話だった。あとで詳しく聞かせてもらおう。」
「他にも、こちらの世界では見たこともない、ゼリーのような空中に浮かぶ、
赤い真四角の魔物が召喚されたり、いかにも人間が開発したと思われる
機械のような魔物も複数召喚されました。
それは、敵対するでもなく、声をかけても反応せず、処分に困りましたので、
野に放ちました。」
「なるほどな・・・。わかった。ありがとう。他に困った事は?」
「実は、会議の直前に事が起こりました。」
「先日、魔王軍を襲撃してきた 紅白の鎧を来たドラゴンナイト、それとそっくりの
思念体が召喚されました。」
「なんだと!」
「そいつは、現れたと同時に、思念体を複数召喚。魔法障壁を張り巡らした壁に
連続攻撃を行っておりました。拉致があかないため、そのまま閉じ込めてあります。
ご覧になりますか。」
「召喚部屋へ向かおう、案内してくれ。」
魔王軍幹部達は、戦闘の準備をした後に、召喚部屋へ向かった。
召喚部屋は、魔法障壁で周囲を固められた、大きな円形のホールとなっており、
魔法障壁越しに、中をのぞき見る事ができる大きな窓もついている。
その中に先日、ここを襲撃した紅白の鎧を来たドラゴンナイトと
その仲間らしい者達が居た。
「やつだ・・・先日仕留めたばかりだというのに、仲間を連れて復活か・・・。」
「まさか、召喚に、このようなリスクがあったとは・・・。」
魔王軍の幹部達も一様に驚いていた。
「どうしますか、総力を挙げて倒しますか。」
「いや、同じ思念体の連中に引き取ってもらおう。先日謝罪に来た聖職者の一行と
連絡が取れるか?」
「連絡を取ってみます。」
--------------------------------------------------------------------------
「魔王に消されたドラゴンナイトが再召喚された?そんな事があるのか?」
緑のエレマス 精霊使いは、驚きつつ反応した。
「よし、魔王のところへ向かってみよう。」
思念体達は12名で魔王の元へ向かった。
魔王の元へは、すんなりと通された。
「はじめてお会いする、思念体代表 緑のエレマスだ。先日は暴走した
うちのドラゴンナイトが迷惑をかけた。謝罪する。
そして、、そのドラゴンナイトが再召喚されて、この部屋にいる・・・と。」
「その通りだ。連れ帰ってくれ。」
窓越しに確認すると、・・・居た。本物に見える・・・他の思念体に見覚えはない。
声をかけてみた。反応はない。
「中に入っても良いのか?」
「二重障壁を展開した上で入ってもらう。」
「了解した。」
二重の小部屋を通り、緑のエレマスは中へ入って行った。
「再び会えて、うれしいよ。紅白のドラゴンナイト。」
「お前は誰だ。ここは・・・どこだ。」
「記憶がないのか・・・。ここは魔王の拠点、そしてお前は、私達の仲間だった。」
「仲間?・・・知らん、私の仲間は、このギルドメンバーだけだ。」
「そこは記憶にあるのか・・・。前回とは状況が違うな。人違いか・・・?」
「俺たちをどうするつもりだ!」
「どうもなにも、魔王が困っているから、うちらの拠点に連れ戻しに来たのだよ。」
「連れ戻す?お前達は誰だ。」
「説明がやっかいだな。亡霊のような、我々思念体の組織だよ。
そして私が代表の緑のエレマスだ。」
「俺たちは、自分達のギルドへ帰る。」
「どこにあるんだい?それと名前を思い出せるかい?」
「名前・・・。」
「やはり記憶を失っているようだな。帰ろう。悪いようにはしない。
緑のエレマスは、召喚部屋から出て来た
「魔王殿、迷惑をかけた。こいつらは、こちらで引き取らせてもらう。
先日の被害の補填については、聖職者の思念体が対応させてもらう。」
「かまわん。それより、お前達は人間の企業と手を結んでいるようだな。
手を引け。縁を切らないようならば、こちらもお前達を人間と同様に敵とみなす。」
「・・・。」
沈黙が流れた。
緑のエレマスは、しばらく思考した後に返答した。
「我々としても魔王軍と敵対する意思はない。かといって、人間と敵対するつもりもない。
とはいえ、我々も内部に問題を抱えていてな、すんなりと答えは出せない。
検討させてくれ。」
「前回のこいつの暴走は許す。しかし、二度目はない。
次に暴走を目にした場合は、完全に敵対したものとみなす。」
「わかった。御心に感謝する。迷惑をかけた。では、帰還する。」
そういうと、思念体の一行は、去って行った。
「魔王様、ここで包囲し、奴らを全滅させた方が良かったのではないでしょうか。」
「前にも言ったが、我々は弱い。私一人であれば、生き残る事はできるだろうが、
私以外は、恐らく全滅する。それほどまでに、あいつらは強い。
今、喫緊の課題は、我々魔王軍の強化だ。今後の強化策を練ろう。」
魔王と幹部達は、大会議室へ戻って行った。
15話へ続く。




