ういさんの物語 13話 暴走実験
新進気鋭の新興企業「欲望の導くままに」、ここでは、多数の魔法実験が繰り返し行われ、
新開発の素材、武器防具、機械人形のBOTなどが製造されていた。
その研究室の一角で、事件は発生した。
「所長、今回の実験で、幽霊・・・いえ、思念体の協力が得られるって本当ですか。」
「あぁ、BOTでは性能が見合わず、強力な魔物、思念体の力を貸して頂ける事となった。
見返りとして、まだ2品しか成功していない極秘中の極秘アイテム、神器を渡す事になったがな。」
「神器を・・・、まぁ実験内容が危険極まりないですからね。」
「では、予定通り頼む。」
「わかりました。」
すり鉢状の巨大ホールの一室に、白いスーツを着た研究者と、元人間の魔物の一種 思念体が居た。
思念体は、紅白の鎧を身に纏ったドラゴンナイト。
「では、これより能力暴走実験を開始します。」
「出力開始・・・。」
「魂付与開始・・・リンカーの魂付与スキルを、Lv99まで暴走させて付与します。」
「魔力増幅開始・・・ウィザードの魔力増幅スキルを、Lv99まで暴走させて付与します。」
「回復力向上開始・・・プリーストの回復スキルを、Lv99まで暴走させて付与します。」
「続けます・・・。」「・・・同じように10のスキルをLv99まで暴走させて付与しました。」
「第一段階成功、各種ステータス反映確認。第二段階へ推移します。」
「第二段階、真理を解放します。」
「リリースします・・・。」「各種ステータスの増幅を確認。」
「第三段階、限界突破実験へ移行します。」
「異常が見られました。」
ドラゴンナイトに異変が起きた。全身にオーラをまとい、目が燃えるように輝いている。
「暴走実験・・・成功ではないかね? 我々がMVPと呼ぶ、究極生命体への転換を導く、
神の領域へ近づくための一歩としては、成功に見えるが。」
白いスーツを着た幹部が同じような研究員と会話を交わしていた。
「思い出した。私は・・・私は、私の名はユメトピアス。
かつて、古代の魔王に敗北し、大切な仲間を失ってしまった。そして、今・・・」
ドラゴンナイトは、吠えた。
「すべて思い出した。思い出したぞぉぉぉぉぉおお。」
「研究者達、実験は成功だ。私はこれから魔王を始末してくる。
このすべての魔法を無効とする、この盾、もらっていくぞ。」
そういうと、扉を開け、実験室を飛び出して行った。
「えええ!」研究者達は、一様に驚いた。
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魔王達が拠点とする、南方の遺跡にドラゴンナイトが単体で攻め入った。
「魔王様、思念体の一人が単騎で攻め込んできました。」
「思念体・・・共闘するのではなかったのか。」
「やつに、一切の魔法が効いてません。すべての魔法が無効化されているようです。」
「私が防ぎます。その間に魔王様は戦闘の準備を。」
バナナの木は、そういうとドラゴンナイトの元へ向かった。
「いや、私も向かおう。」
そういうと、魔王はバナナの木の後を追った。
ドラゴンナイトの前にたどり着くと、バナナの木は、切り刻まれて横たわっていた。
「つ、強い・・・。」
「魔王、お前を始末する。」
「思念体だな・・・どうして、攻めて来た。」
「思い出したのだよ。私はかつて、お前に滅ぼされた討伐隊の一人。
仲間のかたきのためにも、魔王、おまえを始末する。」
「そうだったか・・・。所詮は元人間か!」
魔王とドラゴンナイトのユメトピアスは、激しく衝突した。
互角の戦いが繰り広げられた・・・だが・・・。
「イービルランド!・・・これも効かないのか。」
「魔王、お前の魔法は何一つ効かないぞ。ストームスラッシュ!」
「魔王様が、押されている・・・。」
魔法が効かないため、魔王に不利な状態になりつつあった。
「我々も助力を・・・、だが、魔法が効かないのではどうすることも・・・。」
単純な力勝負では、負ける・・・。魔王は戦慄した。
「魔王軍の総力をあげて倒す。」
「きのこ!」「きつね!」「ばなな!」
「はっ、ここに。」
「新しく開発した種族スキルを使え。」
「承知しました。眷属集え。」
きのこの化け物と、きつねの化け物、そして樹木の化け物が集まった。
「種族スキル 胞子発芽!」
「種族スキル 新芽発芽!」
「ドラゴンホーン!ドラゴン召喚!ファイアードラゴンブレス」
ドラゴンナイトは、ドラゴンを召喚し、体から発芽した新芽を業火で焼き払った。
「種族スキルは、魔法ではないため、効果があるのか・・・。
しかし・・・魔法を防いでいると思われる盾をなんとかしなければ・・・。」
「魔王、お前は、ここまでだ!ギルドスキル メンバー召喚!緊急招集!」
銀色のプレートが数個、呼び出され、地面に乾いた音を立てた。
魔王は笑った。
「お前のギルド仲間は、死に絶えているようだな。」
「仲間の魂に、魔王の死に際を見せるためだ。」
「種族スキル! 真の姿を晒せ!原形復旧!」
きつね族の種族スキルが発動した。
ドラゴンナイトは光り輝き、盾が外れて、ワラワラとゴキブリが湧きたち去って行った。
「あの盾・・・何を材料にしていた・・・。」
そして、ドラゴンナイトは半透明の姿から、はっきりとした人間の姿に戻っていた。
「人間に戻った・・・のか。」
ドラゴンナイトの手が止まった。だが、すぐに剣の切っ先を魔王に向け、再び構えた。
「魔王、もう体力が残っていないだろう。盾はなくとも、十分にお前を倒せる。最後だ。」
「バンパイアギフト!」
魔王は魔法を唱えた。
「ぐっ。」
生命力吸収魔法を食らい、ドラゴンナイトの体力が大幅に奪われた。
「ワイドソウルドレイン!」
ドラゴンナイトの持つすべての魔力を魔王は吸い取った。
「くっ・・・。」
「魔法さえ使えれば、私に勝てる存在はいない。さて、魔法を無効化していた盾・・・
おそらくは、人間の研究施設で派手に強化されたな・・・?
我々もただこの地に居る訳ではない。人間が技術革新を起こすように、我々も研究を重ねた。
そして、新たなスキル 種族スキルを得た。」
「初披露しよう。魔王が属する魔族の種族スキルを・・・。」
「ならば、私もこの限界を超えた力で行使しよう、ギルドスキルを・・・。」
両者は激突した・・・。
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「紅白のドラゴンナイトが消滅した。」
漆黒のアサシンから報告があった。
「ほう、何故・・・?」
緑のエレマス、精霊使いの思念体は、疑問を投げかけた。
「報告書に詳細は記載している。彼は、以前、ユメトピアスと名乗っていたと・・・。」
「聞き覚えがあるな・・・どこでだったか・・・思い出せない。」
「ナイトの大会で優勝した事のある 猛者だ。
昔の所属ギルドは、赤のシーサーペント そのギルドは魔王討伐の際、全滅している。」
「なるほど・・・名前と、記憶を取り戻したのか・・・幸いと言うべきか。
我々にとっては、仲間を失ったゆえ、損失だが・・・。」
「魔王との関係が悪化するが、何か手を打つか。」
「すでに聖職者の思念体が向かっているのだろう? そちらでなんとかするだろう。」
緑のエレマスは、報告書を読みつつ答えた。
「報告書の中にある、種族スキルというのは何だ? 聞いたことがないぞ。」
「ギルドスキルのようなものと聞いている。新たに魔王達が開発したスキルのようだ。」
「なるほど、ギルドスキル・・・。
人数×レベル×魔力で、威力、範囲、成功率などが拡大する究極のスキル・・・か。」
「もしかしたら、我々も、種族スキルを使えるのか?」
「発動条件まではわからん。」
「調査をお願いできるか?」
「今は無理だ。他の思念体に頼んでくれ。」
「わかった。そうしよう、ありがとう。」
そうして、漆黒のアサシンは立ち去って行った。
「我々の組織は・・・ギルドなのか? 思念体とは・・・種族なのか?」
緑のエレマス、精霊使いの思念体は、自分自身に疑問を持っていた。
14話へ続く。




