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オレを狂わせたのは十夜であり遠夜なんだから、責任取ってよ?


   ※  ※


オレは、遠夜の髪を撫でながら少し昔に思いをはせた。昔と言っても幼少期の話ではない。オレが棚田七星ではなく棚田志知瀬の時だ。

遠夜が、十夜だった時。性格は、入れ替わったけど、遠夜が優しいことに変わりはなかった。遠夜はその時を覚えてるのかは謎だ。

でも、覚えてないんだろうな。

じゃなきゃ、オレ以外と付き合うなんてしない。『十夜』は、オレのなのに。

でも、結局は、今も昔もオレの独りよがりの想いなんだ。

十夜は、オレのことを幼馴染以上に見ない。オレを『食べて』子孫を残したからね。

だから、子孫の遠夜にそれが伝わっている。呪いも、呪いの効力を増させる方法も……。

いや、遠夜は子孫ではない。子孫だけど、違う。十夜の生まれ変わり。

同じ魂なんだ。

オレが何度も生まれ変わって、様々な蒼葉家の子孫を見てたから分かる。彼の呪いが他の子孫より強いのも。

遠夜の中には十夜がいる。遠夜の中には何人もの人格がある。けど、それは、仮の遠夜を守るため。本当の十夜を護るためではない。

「ねぇ、十夜。早く出てきて。そして、またオレを食べてよ」

オレを狂わせたのは、十夜なんだから。

ニコリと笑いオレは遠夜に口付けた。


  ※  ※


七星が泊まりに来て、二日後。有休も使い終えてしまうと言い七星は北海道に帰った。

今度は従姉の向日葵《ひなた》も連れてくると言って。

「はぁ……やっと、帰った……」

遠夜を後ろから抱き締めながら、海月はため息交じりにそう言った。何故か海月は七星が苦手なのだ。

本人もよく分かっていないが、恐らく本能で七星は危険なんて思っているのだろう。

遠夜の肩に顔を埋め海月は、ここ二日間のことを思い出していた。この前巳月さんが、言ったこと。必要以上に干渉しないことを守ってくれるのは、ありがたいけど……。

それ以外で遠夜といるのは、よしてほしかった……。

おかげさまで遠夜と過ごす時間はほとんどなかった。離れてた分を補うかのように、海月は遠夜から離れようとはしなかった。

「イチャつくんなら、他所でやってやー」

そんな九重の言葉を海月は無視する。別に外でイチャついているわけではない。

少しだけ海月に体重を預け遠夜は甘える。嬉しそうに笑う海月を見ると、来た頃と違い大分笑うようになったなと思う。

初めのころは別段何ともない相手だった。でも、いつからだろう。海月に恋情を抱いたのは。

海月の寝言を聞いて、自分を好いているのを知った。その時、淡い初恋の様なもどかしい高ぶりではなく、切なく鼓動が鳴いた。

ああ、自分は彼が好きなんだ。

気付けば「先生から、俺を奪ってよ」なんて言っていた。

初恋の相手は、自分を息子としか見てない。血は繋がってなくても自分は息子以上にはなれないのだ。

それに、先生には奥さんがいる。自分の家――蒼葉家に縁《ゆかり》のある女性だ。

彼女は、自分を毛嫌いしている。それは、わが身に宿る呪いのせいだろう。

向日葵から全てを聞いて。ショックを受けたのと同時に納得した。でも、両親はどこに消えたのだろうか?

「遠夜?」

心配そうに海月が顔を覗く。はっとなり、遠夜は何でもないというように笑みを浮かべた。

「何かあったら言ってね?」

優しい海月の言葉。時折それが、甘い蜜のように感じる。

甘い蜜に誘《いざな》われた俺は、蜘蛛《碧》に食べられるのだろう。パクリと食べられて、跡形もなくなって。

言いたいことを全て飲み込み。そして、その甘い蜜を啜り、食べられる。

ああ、やはり。自分は卑怯者だ――。

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