沖縄のお土産
「遠夜。スマホ、鳴ってるよ」
「え……?」
ぱちくりと目を瞬かせた後、遠夜は海月の言葉の意味に気付いてスマホを手にした。不慣れな手付きで、スマホを操作して「あ、しちせからだ」
その言葉に海月は、ムッとなってしまう。また、邪魔された。
何故毎度毎度いいところで邪魔をするのか。なんて、思いながら「七星さん、なんて?」と尋ねた。
「もう、来てるって。お迎えに行かなきゃ」
「なら、俺も行く」
「でも、碧学校でしょ?」
「……そう、だけど……」
意外と真面目な遠夜は「行かなきゃだめだよー?」海月を見てはそう言い九重のところに行く。
ゆさゆさと九重を揺さぶるも起きる様子がないので、放置して二階の自室に向かおうとした。
「……危なくなったら、すぐ呼んでよ?」
海月の言葉に小首を傾げながらも、遠夜は頷いて二階に向かった。
棚田七星。遠夜の幼馴染で、兄の様な友達の様な人である。
モデル並み……いや、芸能人と言っても頷かれるほどイケメンだ。海月もイケメンだが、あちらは美人系。九重も美人系の方だ。
遠夜は、可愛い系だろうか。
まぁ、本人は自覚なしだが。
だから、今。カフェに入った遠夜を、見ている男女に七星は少なからずヤキモチを妬いていた。
『昔』の記憶が戻る前は、遠夜のことを恋愛対象としては見てなかった。ただ、年々『彼』に似てきた遠夜を見ていたら、記憶がよみがえったのだ。
「遠夜」
「しちせ……!」
呼べば、嬉しそうに笑ってこちらに駆けてくる遠夜を七星は抱き締めた。恋人がいれば、また睨まれるが今はいないので存分に堪能する。
本当に海月さんって、嫉妬深いよな……。
心の中でぼやきながら、遠夜から身体を離す。ふんわりと遠夜の身体から香る甘い香りに少し理性が焼かれそうになる。だが、首に残った鬱血痕を見て、理性は元に戻った。
遠夜を席に座らせ、オレンジジュースを追加で頼んだ。それを待っている間に遠夜に旅行のお土産を渡した。
「これ、沖縄行った時のお土産」
「沖縄行ったの?」
「うん。先輩に無理矢理連れてかれて」
開けていいー? と袋を受け取り尋ねる遠夜にいいよ、と七星は返した。
ガサゴソと袋の中を漁って、出てきたのは少し大きめのウミガメのぬいぐるみだった。
「ふわぁ、カメさん! あ、これは、お砂?」
「綺麗だろ。沖縄のビーチの砂。キラキラしててさ」
「うん!」
小瓶に入った砂を遠夜は、子供のように瞳を輝かせて見ている。たまに振って遊んでいる遠夜を微笑ましく見ていた。
オレンジジュースが、遠夜の前に置かれては遠夜は一旦お土産を袋に戻して、オレンジジュースを飲んだ。
少し近況を話して、二人はシェアハウスに向かった。
「ただいまー」
「お邪魔します」
「あ、今、碧達学校だよ」
「そうなんだ」
海月さん、渋々行ったんだろうな……。
遠夜に手を引かれて彼の自室に向かいながら七星は、そう思っていた。
でなければ、嫉妬深い海月のことだ。こうやって二人きりで過ごすことを許さなかっただろう。遠夜の自室に着き中に入る。
ベッドにぬいぐるみを置いて、遠夜は小瓶を机の上に置いた。
先程カフェでほとんど話したため、話すこともなく。遠夜が、いつしか寝てしまった時まで、七星は静かに過ごしていた。




