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一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがヤバすぎた。改訂版  作者: たまご
最終章 望む世界。

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第六十三話 運命神の神殿。

 険しい山岳地帯にある城塞都市オニキス。

 運命神の神殿はこの街にある。


「相変わらず寂れてるねぇ……」


 常に人で賑わっている女神様や農耕神様の神殿とは比べ物にならない。


「りゅうたろう、大きくなって」


 ひらりと私の肩から飛び降りたりゅうたろうが、虎ほどの大きさに姿を変えた。


「さて、行きますか」


 神殿の中に入ると、しんと静まり返っていた。

 おそらく長い間手入れもされておらず、崩れかけている所さえあった。

 うーん、大抵は神様の像があるものだが。

 半身がかけた、元は白かったであろう像を見つけた。

 これが運命神の像だろう。


「……」


 はたして、先に見限ったのは運命神の方か、それとも人間の方なのか……。

 そんな事を考えていると、不意にせりがキャットハウスから顔を出した。


「にゃあ!」


 イカミミの警戒状態で上を見上げている。

 ぴしりという音と共に、神殿の天井に亀裂が走った。

 まさか……。

 細かい埃がぱらぱらと落ちてきた。

 亀裂が広がっていく。

 まずい、崩れる!


「りゅうたろう、キャットハウスに戻って!」


 りゅうたろうがキャットハウスに入るのとほぼ同時に、がらがらと音を立てて神殿が崩れ始めた。

 大きな瓦礫が頭上から落ちてくる。

 ちりん、と小さく鈴の鳴る音がした。

 まばゆい光が私を包み込み、瓦礫が消滅していく。

 腰にぶら下げていたお稲荷さんのくれた御守りが光っている。

 三度だけ身代わりになってくれるという御守り。

 今ので使いきってしまった。

 それにしても、まさか自分の神殿ごと私達を生き埋めにしようとするとはな。


「出てきなさいよ!」


 神殿も像も全て無くなった場所で、私は声を張り上げた。


「みんな、出てきて」


 猫達がキャットハウスから出てきた。


「せり、〈気配察知〉」


「シャー!」


 一点を見つめてせりが威嚇の声をあげる。

 ふん、そこか。

 出てくる気がないなら引きずり出すまでだ。


「福助、〈風魔法〉!」


「にゃ!」


 福助が張り切って鳴いた。

 福助の回りを、きらきらしたものが弾むように飛んでいる。

 凄まじい威力の風をせりの示した場所へと叩きつける。


「くぅ、〈火魔法〉!」


「にゃお」


 福助の〈風魔法〉に合わせるような形で、くぅが〈火魔法〉を放つ。

 ぐにゃりと空間が歪み炎が消えた。

 姿を現したのは、黒いフードをかぶった小柄な男だ。


「愚かな。神に戦いを挑む気か」


「初めまして。運命神サマ」


 ご挨拶がわりに一発ぶちかましてさしあげましたが、お気に召しませんでしたかね?


 黒いフードのせいで運命神の表情は見えない。

 ……いや、そもそも顔がないのか? 

 フードの中に見えるのは、黒い影だけだった。


「《ことわり》をはずれたもの、猫神の眷属よ」


 しわがれた声だった。


「神に挑む気か」


 さっきも聞いたわ!


「まぁ、気に入らないのでぶちのめしてさしあげにきた、というところですかね」


 あいにく、こちとら正義の味方でも勇者様でもないので好き勝手やらせてもらいますよ?


「このような事、我の《ことわり》には書いておらぬはず……」


「……?」


 黒い影しか見えないのではっきりとは分からないが、運命神は自分の手に持った本を見つめているようだった。

 んー?

 もしかしなくても、あの本がこの世界の《ことわり》なのか?

 まぁ、「本に見えている」だけなんだろうな。

 普通の本なら燃やしてしまえば済む話だろうが……。

 とりあえず、ダメ元で正面からいってみるか。


「あのー、勝手に私達の《ことわり》を書きかえるの、やめてもらえませんかね」


「神に意見する、というのか」


「……神サマだって間違いは正すべきだと思いますが?」


「間違い……?」


 ゆらりと運命神の身体から黒い霧が立ちのぼる。

 え、黒い霧は運命神から出てきてたのか?


「神たる我が、間違っているというのか!」


 黒い霧が濃く大きくなっていく。

 まずい! このままでは、オニキスの街が魔物の群れに襲われる!


「福助、〈風魔法〉!」


「にゃ!」


 福助が張り切って鳴いた。


「霧を吹き飛ばして!」


 ごおごおと音を立てて風が激しい渦となり、運命神から出てきた霧を吹き飛ばした。


「よつば、〈解除〉!」


 よつばが前足をちょいちょいと動かすと、黒い霧は跡形もなく消えた。


 運命神は何やらぶつぶつと呟いている。

 ……ダメだ、こいつ。

 話し合いにならないどころか、ちょっと意見されただけでぶちギレるとはな。

 しかも、自分の本殿があった街に魔物を呼び寄せようとするなど正気の沙汰ではない。


「書きかえねば……」


 ん?


「この世界は、元に戻らねば……」


 運命神は手元の本を見つめたまま、独り言のように呟き続けている。


「旧きあの世界に戻らねばならぬのだ!」


「何のために?」


「?」


 私達がいる事を一瞬忘れていたのか、運命神は不思議そうにこちらを向いた。


「どうして、元に戻らないといけないの」


 元に戻らないと世界が滅びるというわけでもないだろうに。


「人は、神を崇め従うべきものだからだ」


 今の人達だって、みんな神様を尊敬しているようにみえたが……。


「異なる世界からきたもの達が、神と人の有り様を変えた」


 ああ、そういう事か。

 運命神の言っている事は分からないでもない。


 エルフ達は精霊を友としている。

 真珠国では、御神体から神に成る。

 アレキサンドライトにいたっては、信仰する神を持たなかった。


 ふるき神々が知る人とはあまりに違いすぎた。

 だが。

 みんな、好きでこの世界にきたわけではない。

 私のように猫さえ一緒ならどんな世界でもかまわない。という人間ばかりではないだろう。

 エルフ達のように、滅びゆく世界から逃げてきたわけでもない。

 いや、エルフ達の伝承とて真実とは限らない。

 そう言い伝える事で、あきらめようとしていたのかもしれない。


 帰りたい、帰りたい、帰りたい……!!


 その想いが、どれほどの強さだったのか。

 魔導の塔の連中や真珠国から分かれたもの達のように、その願いの強さゆえに歪んでしまうほどに。


 けれど、この世界で生きる事を選んだ人達もいる。

 それこそ、「運命だと思って受け入れた」のだ。

 お稲荷さんのように、心の奥底に「帰りたい」と願う気持ちを押し込めて。


 そんな、可哀想で、健気で、強い人達を、運命神は「昔はよかった」という身勝手な理由で消し去ろうとしている。

 ……ふざけんな。

 そんな事、例え神サマだって許さない!


「くぅ、あの本を燃やして!」


「にゃお!」


 くぅの〈火魔法〉が、運命神が持つ《ことわり》に火をつけた。


「愚かな真似を……!」


 運命神がうめくように叫んだ。


 火はすぐに消えてしまった。

 だが、一瞬ではあったが確かに火はついた。

 つまり、《ことわり》は燃やせるのだ。


「キング、〈影魔法〉で拘束! おこん、〈引っ掻き〉!」


 キングの影が長く伸び、運命神の影を捕らえた。

 おこんは運命神の足を引っかくと素早く後ずさった。


「何を……!?」


 ぎしぎしと音を立てそうな動きではあったが、運命神はまだ動けるようだった。

 さすがは神サマだ。うちの猫達でも完全に動きを止められない。


「りゅうたろう、本を!」


 大きくなったりゅうたろうが運命神に飛びかかる。

 運命神が手を振ると、りゅうたろうは宙へ飛ばされた。


「りゅうたろう!」


 くるりと一回転をすると、りゅうたろうは私の横に着地した。


「大丈夫!?」


「グルルル……!」


 りゅうたろうのうなり声を久しぶりに聞いた。


「チャビ、りゅうたろうを〈回復〉して」


 チャビがごろごろとのどを鳴らしながら、りゅうたろうに寄りそった。


 今ので運命神に警戒されてしまった。

 だが、どうしても《ことわり》は燃やさなければならない!




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