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一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがヤバすぎた。改訂版  作者: たまご
最終章 望む世界。

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第五十八話 恐れていた事。

 オパール王国での戦闘を終えた私達は、農耕神様の神殿に顔を出す事にした。

 お菓子やお酒などをたくさん買い込み、無限収納に入れてきた。


 結界の中に隠れ住み、そのあとミーコさんに匿われていたラーラ達ラピスラズリの住人は、今は農耕様の神殿に預かってもらっているのだ。

 ミーコさんは別の世界に一時的に匿っていたそうだが、長い間滞在するとあまりよくないそうなのだ。

 世界にもよるらしいが、慣れないうちは体調を崩しやすくなり重い病気になる者も出てくるらしい。

 まぁ、環境どころか、世界が変わるのだからいろいろあっても仕方がないだろう。


 ……うちの猫達は何故かけろっとしているが。

 それどころか、順応しすぎていろいろやらかしていたけどな!


 農耕神様の神殿に入ると、建物の裏にある畑に案内された。

 女神様の神殿の奥には聖地と呼ばれる泉があったが、農耕神様の所は畑らしい。

 さすが、というべきか。


「こんにちは」


「あ、猫の人」


「…………」


 そうか、ラピスラズリの人達にはまだ「猫の人」なのか。

 いや、うん。《竜殺し》よりいいけどな。


「お土産、持ってきましたよ」


 私の言葉に子供達がぱっと顔を輝かせた。


「蜜飴ある!?」


「焼き菓子は!」


「たくさん買ってきたよ」


 無限収納から取り出すと、子供達だけではなく大人達も寄ってきた。


「お酒もありますよ」


「ありがとうございます!」


 ラピスラズリの人達は、隠れて、逃げて、今もこの神殿の外には出られない。

 ラーラの〈さきみ〉の力のせいもあるが、それにより村の人達の運命も変わったのだそうだ。

 何度も救われた。

 そう言っていたが。

 それは、おそらく運命神の《ことわり》からはずれた事だったのだろう。

 ここにいる人達は、運命神にとってとうに命を終えていなければならない存在なのだ。


 真珠国から分かれたもの達は捕まえたが、ラーラの〈さきみ〉の力を利用しようとするものもいるだろう。

 さすがに、農耕神様の神殿の聖地には誰も手出しは出来ないだろうが。


 ……この生活は、いつまで続く?


 いや、ラーラ達だけの事ではない。

 黒い霧が発生しそれに魔物が誘き寄せられている現状も、いつ終わりがくる?

 神様達が運命神を説得するまで続くのか?


 今はまだいい。

 だが。


「……」


 私達も、人間やエルフ達も次第に疲弊していくはずだ。

 この事態が収集するまで本当に持つのか……?


 私がため息をついていると、銀色の髪をした少女が近付いてきた。

 ラーラだ。

 しばらく見ない間に大きくなったなぁ。


「…………」


 不安材料の一つが、神様達と人間の時間の感じ方の違いだ。

 農耕神様は何十年前かのフラーの襲撃を「少し前」と言い、ミーコさんは向こうの世界で私の家にいた十年間を「一休み」と言った。

 神様達は出来るだけ急ぐと言ってくれた。

 けれど。

 それは、人間にとってどれくらい先の事になるのだろう。

 私の顔を見たラーラが困ったように首を傾げた。

 いかん、怖がらせたか。


「お菓子、持ってきたよ」


 気を取り直し、ラーラに向かってにっこりと笑ってみせた。

 とろりとした蜜を閉じ込めた、ふんわりとした食感の焼き菓子で私の気に入っているものだ。

 ルッコの実のジュースもあるが、農耕神様の神殿ではいつでも飲めるみたいだしな。


 ラーラはお菓子を受け取ると、反対の手で私の服をつかんだ。


「どうしたの?」


「……あぶない」


「え?」


 ぎゅうっと、ラーラの手に力が入った。


「きつねさんの国が、あぶない」


「……!」


 まさか、それは。


「黒いものが、きつねさんの国にくる」


「…………」


 とうとう、恐れていた事が現実になろうとしている。

 今まで黒い霧におおわれていたのは村や町だった。

 それも次第に大きくなってきていたが。

 それでも、ギルドや管理している都市などの努力で今まではほとんど犠牲を出さずにすんでいた。

 だが、国や大都市がおおわれた場合の事はまだ対応が協議中のはずだ。


 真珠国はいずれ狙われるだろうとは思っていた。

 運命神が認めない、《ことわり》をはずれたもの達が造った国なのだから。

 お稲荷さんにも忠告はしてはいる。

 だが。


「早すぎる……」


 このままのペースでは神様達は間に合わない……!

 いや、落ち着け。

 私は今までと同じように。

 今、出来る事をするだけだ。


「ラーラ、農耕神様にその事を伝えてくれる?」


 私の言葉にラーラはこくりと頷いた。

 私はスマホを取り出し、女神様に連絡した。


「というわけだから、ほかの神様達にも伝えておいて」


『わ、分かりました』


「あと、火の神様にサナ達を応援によこしてほしいって言っておいて」


『はい。エルフさん達にも伝えておきますね』


「うん、お願い」


『…………』


 女神様が一瞬黙り込んだ。

 

『つかささん、気をつけてくださいね』


 ……どうした?


『つかささんがいなくなったら、猫さん達はどうなるんですか!?』


「…………」


 いや、うん。それでこそ女神様だ。

 さて、行きますか。


「キング、〈空間転移〉!」




 真珠国に移動すると、すでに真っ黒な霧で国全体がおおわれていた。

 あまりに黒く、中の様子は全く見えなかった。

 真珠国に行商に来ていたらしいキャラバンや商会の馬車などが、中に入れずに立ち尽くしている。

 まずい。このままだと彼らが真っ先に魔物に襲われてしまう。


「福助、全力で〈風魔法〉」


「にゃ!」


 福助が張り切って鳴いた。

 その回りをきらきらしたものが踊るように跳ね回った。


「霧を吹き飛ばして!」


 ごおごおと音を立てながら、激しい風が黒い霧を消していく。


「よつば、〈解除〉!」


 よつばが前足をちょいちょいと動かすと、霧が消えた状態をキープする事ができた。


 やっぱり、うちの猫達、全体的に能力があがっているな。

 最近ずっと戦っていたからなぁ……。

 神様達の加護や精霊との契約ももちろん関係あるだろうが。

 おそらく、猫達が自分の能力の使い方を完全に理解できたのだ。

 これならいけるか?


 真珠国の門はまだ刻限ではないのに固く閉ざされていた。

 黒い霧が発生したら門を閉じる事にでもしていたのだろう。

 私達はともかく、キャラバンや商会の馬車は魔物がくる前に中に入れてしまわないと。


「開門して!」


「……駄目だ!」


 門の向こうから声が聞こえた。


「魔物がくるから、開けてはいけないとお稲荷さんが言ったんだ!」


「……」


 ちっ、お稲荷さんめ。

 いや、うん、国の守護者として正しい判断なのは分かるけどな。

 ……仕方がない。

 私はさらに声を張り上げた。


「《竜殺し》が来た! 門を開けろ!」


 自分で言うのは死ぬほど恥ずかしい。


「《竜殺し》………、御神体を取り戻してくれた……!?」


「そうだ! 応援にきた!」


「……」


 しばらくの沈黙のあと、ぎぎいっと重い音を立てながら門が開いた。

 門番は私の顔と福助達を交互に見た。


「助けに、きてくれたんですか……?」


「そうだよ。でも、その前にキャラバンや馬車を中に入れて!」


 早くしないと間に合わなくなる!


「わ、分かりました!」


「ほかの門は?」


「全部閉めています」


 一時的に全部開けさせなくては。

 何人かがほかの門へと走った。


 魔物が襲ってきた時に、うちの猫達が救助や回復を優先させるような事態になったらまず勝てないだろう。

 真珠国は高い塀に囲まれているのだから、それを利用すれば魔物を防ぎながら攻撃できるはずだ。

 ……いや、待て。

 マズい。

 この国には、港がある!

 急いでお社に向かう。


「お稲荷さん!」


 中に入ると、お稲荷さんがぐったりとした様子でうずくまっていた。


「大丈夫!?」


 慌てて駆け寄り、お稲荷さんを抱き起こした。


「つかさ、さん……?」


「助けにきたよ」


「ありが……とう、ございま……す」


 ……なんだ?

 お稲荷さんの身体がひどく軽い。

 いや、それだけではない。

 輪郭がぼやけ、うっすらとしている。

 まさか存在が消えかけているのか?


「私の力……では、これが、精一杯……」


 ほろりと、お稲荷さんの目から涙がこぼれた。


「留守居役も、果たせず……、くやしや……」


「お稲荷さん、しっかりして!」


 ダメだ、このままだと消えてしまう!

 不意に、キャットハウスからチャビが出てきた。

 ごろごろと喉を鳴らしながら、お稲荷さんの顔をぺろっとなめた。


「!」


 腕の中に重さが戻ってきた。

 輪郭がくっきりしてくる。

 お稲荷さんは驚いたように目を開けて起き上がった。


「戻った……?」


「大丈夫? どこか苦しいとかない?」


 お稲荷さんが慌てて首を振った。


「むしろ、力がみなぎるようです」


 チャビが満足そうに、お稲荷さんに頭をこすりつけた。

 チャビの〈回復〉は農耕神様にも効果があったみたいし、まぁ、お稲荷さんに効いても不思議ではないか。

 しかし、消えかけた存在を復活させるとはな。


「黒い霧は国の中には入り込んでいない?」


「はい、大丈夫です」


 私の言葉に、お稲荷さんはきっぱりと言いきった。


「私の全ての力で防いでいましたから」


 やはり、それで力を使い果たしたのか。


「港も大丈夫?」


 お稲荷さんのふさふさのしっぽが小さく揺れた。


「今は大丈夫ですが、魔物が来たら防ぎようがありません……」


「そっちは私達が対応する」


 霧の犠牲者がいないのなら、キャラバンの護衛についてきた冒険者達にも協力してもらおう。

 門を閉ざして、塀の上で迎え撃つのが今のところ最良か。

 それなら空からくる魔物を警戒すればいいしな。

 だが、港には門も塀もないから絶対に通すわけにはいかない。

 うちの猫達が討ちもらした場合を考えて、信頼できるバックがほしい。

 ひょい、とせりがキャットハウスから顔を出した。

 嬉しそうに「にゃあ!」と鳴いた。


「つかさ、来たよ」


「……」


 紅い穂先の槍を肩にかついだサナと、無言でせりに近づくナルシがお社に入ってきた。


「つかさ!」


 エルフの遊撃部隊も間に合ったようだ。


「私達は港に」


「あいよ」


「お稲荷さんは冒険者達に指示を出して」


「……はい」


 よし、行こう!




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