第四十九話 ラスボス誕生。
「大変な事になったねぇ……」
テントを張り、久しぶりに猫達とまったり過ごしている。
ギルドの職員さん達が頑張ってくれているおかげで、前より連絡の途絶えた村や町が少なくなってきたのだ。
「世界を救う、か」
いや、やることは今までと変わらないのだろうが。
運命神が書きかえてしまった《ことわり》とやらが具体的に何かも分からない以上、こちら側から動くわけにもいかないだろう。
猫達に好きに暴れさせればいいのかとも思ったが。
「そうすると、うちの猫達が世界を滅ぼしそうだしな……」
世界の半分どころではすまない事態になりそうだ。
私の隠しスキル〈猫ばか〉により、猫達のステータスは大幅に上がってしまった。
おこんの〈引っ掻き〉による麻痺やよつばの〈魅了〉は、確率が100パーセントになっている。
全員に物理耐性がつき、元から物理耐性を持っていたくぅにいたっては物理無効だ。
魔法無効、物理無効、精霊の加護。
おまけに魔力の底上げだ。
ゲームのラスボスで出てきたら絶望しかないやつだ。
神と対立する魔王か……。
勇者とかに倒されそうだな。
いや、くぅを倒すとか無理ゲーすぎるだろうけど。
んー?
そういや、小細工していたのは誰だ?
《ことわり》を書きかえたのは運命神だとして、それとは別に実行犯がいるはずだ。
クラーケンに古代神語による呪いの杭を刺して操ったもの。
地下迷宮の魔方陣を壊したもの。
あの時、盗賊は謎の新入りがいたと言っていた。
まさか、運命神自ら動くわけがないしな……。
どういう理由でかは分からないが、運命神の考えに従って動いているものがいるのは確かだ。
神様の事は神様達でケリをつけてもらうとして。
しかし、人がやった事は人がどうにかしないとねぇ……。
ガチャンっという音に振り返ると、猫達がじゃれあっているうちに水の入った容器をひっくり返してしまったようだ。
「ったく、もう」
自分達のした事に驚いて、一瞬固まっていた猫達はまた追いかけっこを再開した。
ああ、うん。
猫のした事は人がどうにかしますよ……。
とりあえず、黒い霧と魔物の対応をしながら小細工したやつを探しだそう。
んー?
少なくとも古代神語が分かるやつだよな。
だけど、魔導の塔の連中はチャビの暴走で子供に戻ってしまったから話を聞く事は出来ない。
「……」
情報が少なすぎるし、私一人では手が足りないよな。
猫の手も借りたい……。
つい、目の前にあったよつばの肉球をぷにぷにしたら嫌がられてしまった。
いや、真面目に考えよう。
普通ならギルドに頼るところだが、元凶が神様となると難しいところだ。
おまけに運命神が誰を滅ぼそうとしているかもハッキリしない。
違う世界からきたものを、《ことわり》をはずれたものとして排除しようとしている事は分かっているのだが。
誰がそうなのか、という事はもはや本人達にも分からないくらい、この世界に馴染んでしまっているのだとミーコさん達が言っていた。
だとすると。
ルーツがハッキリしている人達に忠告がてら協力を求めてみるか。
んー?
まずは、サナとナルシ。
魔導の塔の出身の父親と、火の神の娘の末裔の血を引いている。
この二人がいなくなると地下迷宮の魔方陣は無力化され、火山が噴火してしまうらしい。
多分、火の神様からある程度事情も聞かされているだろうし腕のたつ冒険者だ。
二人の養い親であるナロクもドワーフだから無関係ではないし、協力してくれるだろう。
それと、エルフ達だな。
〈とおみ〉の力を持つみうなら、何か分かるかもしれないし。
虹雲の卵の事で私達に恩義を感じてくれているようだし、頼めば翡翠の森全体が協力してくれるはずだ。
なにより、一度黒い霧に覆われているからこちらの話も信じてもらえるだろうし。
問題はエルフ達が意外と頭に血がのぼりやすい事なんだよな……。
事情を知ったら運命神に直接殴り込みをかけそうだが、まぁ、そうなったら、うちの魔王様に(力ずくで)止めてもらうとするか。
あとは、真珠国か。
エルフやドワーフ達と違って、この世界の誰もが真珠国が違う世界からきたという事を知っている。
私もこちらの世界の絵本を読んで、真珠国の歴史を知った。
エルフやドワーフ、こちらの世界に馴染んだ人達と比べれば真珠国は比較的新しいのだ。
それに、真珠国はまだ黒い霧に覆われていない。
さすがに国レベルを私達だけで守るのは無理がある。
私達が滅ぼす側なら数時間もあれば十分なんだろうけどな……。
すやすやと眠るくぅとチャビを見ながら、私はため息をついた。




