第四十八話 結果オーライ。
「運命にさえ囚われない、気まぐれで、自分勝手なものが、この世界には必要だったのさ」
それで猫なわけか……。
ん? ちょっと待て。
「この世界の猫じゃダメだったの?」
「ああ、こっちの猫は生まれた時、いや、その前から《ことわり》に組み込まれてしまっているからねぇ」
それを書きかえるだけの影響力がなかったのさ、と言うとミーコさんはやれやれという風にため息をついた。
たまたま目の前で事故にあったのが、個性豊かな猫達と暮らしていた私だった。
それが、昔ミーコさんと一緒に暮らしていた子供だったのは偶然だった。
そして、こちらの世界に猫達と一緒に私を転生させたという事か。
なるほど。
もしかして、猫神が色んな世界を行き来していたのは《ことわり》を書きかえられる猫を探していた……?
ん?
そういや、さっきから女神様は一言も話してないな。
ちらりと見ると、女神様はぽかんとした様子で話を聞いていた。
……この様子だと女神様は何も知らされていなかったようだ。
「何で、私達の世話を女神様がする事になったの?」
自分の話だと気づいて、女神様がはっとした顔になった。
「ああ、幸運の女神はなんというか……」
ミーコさんが言葉を濁した。
「いや、あちらの世界でいうところのドジっ子というか……」
「……」
女神様、神様達の中でもポンコツ扱いされていたのか……。
「ただ、不思議と全てがうまくいくようになっていての」
「そこが幸運の女神たる所以じゃからのう」
火の神様達が笑って言う。
「実際そうなっただろ?」
海神様が私を見て言った。
「え?」
「猫達が逃げ出したから、つかさは元の姿と記憶を持ってこの世界に転生する事になったんだしねぇ」
そのおかげで、《ことわり》の影響を受けずにすんだという事らしい。
それどころか、逃げた猫達がやらかしたからこそ、この世界の《ことわり》を書きかえ始める事が出来たのだそうだ。
言われてみれば……。
よつばがオパール王国の食糧を食い荒らしたから、魔物の大発生を未然に防げている。
それだけではない。
ドラゴンちゃんやクラーケンが襲ってきた現場に居合わせたのも、猫達を探していたからだ。
ラーラ達の住むラピスラズリに行ったのも、キングが逃げ回っていたから。
そして、くぅが狙われていたから魔導の塔にも行き、〈とおみ〉の力を持つエルフのみうを救う事が出来た。
つまり、女神様のやらかしと猫達の気まぐれで、この世界は運命神の書きかえてしまった《ことわり》からはずれる事が出来たのか。
「そのあとの事も全てそうさ」
真珠国の御神体を取り戻した事も。
エルフの虹雲が無事に孵った事も。
地下迷宮で火山の噴火を止めた事も。
フラーの大群を退治した事も。
確かに、最初に猫達が逃げ出していなければ起きなかったはずの出来事だ。
「……それで、私達はこのあとどうしたらいいの?」
「今のままでかまわないさ」
そう言ってミーコさんはころころと笑った。
「猫がしたい事をどうこう出来るわけもないしさ」
確かに。
一応、テイマーである私の指示はきいてくれるけど、それだってやりたくない事はやらないだろうしな。
「まぁ、霧と魔物の対応をしてくれると助かるけどな」
守護している場所が多いから手が回らないんだよな、と海神様がため息をつく。
「わらわ達はほかの神とも話しおうて、運命神の対応を決めねばならんのでの」
「この世界を守ってはくれんかのう」
「……」
別に、神様に頼まれたからではない。
今までと同じようにしていればいいのなら。
「頑張ります」
私の言葉に神様達が顔をほころばせた。
「それじゃ、あんたの隠しスキルを使えるようにしておこうか」
「え?」
「転生させる時に、あたしがスキルを与えておいたのさ」
そういや、私の転生は女神様ではなく猫神がさせたんだったな。
ミーコさんが八本のうちのしっぽを一本だけゆらゆらと振った。
しっぽ、ばらばらに動かせるんだ……。
ふわっと私の体が光った。
「!」
「確認してごらんよ」
どれどれ?
〈猫ばか〉 レベル∞
…………。
いや、隠れてないが?
まぁ、いいか。
で、効果は……?
〈猫ばか〉 猫達のステータス大幅アップ。及び、猫達のスキル効果倍増。
……………………。
猫かよ!
この世界の神様はどこまでもぶれないな!!
「つかさ、猫達を頼むよ」
ミーコさんが優しい顔をしてそう言った。
まぁ、ミーコさんは本来猫の神様だからな。
「当たり前でしょ」
私の返事にミーコさんがころころと笑う。
猫達の事は絶対に私が守る。
ついでに、この世界も守ろうか。
第6章 完。




