第四十七話 第九の猫、参上……?
女神様との連絡用のスマホが鳴った。
人のいない所に移動してかけ直す。
「どうしたの? 何かあった!?」
『いえ、今回の件で神同士でも話し合う事になりまして』
まぁ、この騒ぎなら仕方ないか。
『そこに、つかささんも同席してほしいという話になったんです』
「…………は!?」
いや、待て。
何で神様同士の話し合いに、私達が行かなきゃいけないんだよ!
何!?
自分達の国の専属にしようとか、そういう話し合いなのか!?
だったら断る!
神様の言うことだとしても聞いてやるもんか!!
『そうじゃなくて……』
女神様が慌てて言った。
今起きている事について、説明がしたいのだと言われたらしい。
「神様達は何か知っているってこと?」
『私は分かりませんが、火の神や海神は事情を知っているようです』
火の神様達は原初から存在している、いわゆるふるき神々だ。
『私の神殿に集まる事になっています』
「……分かった」
事情が分かるなら行ってみる事にしようか。
理不尽な事を言われたら、くぅに一発かましてもらって逃げ出せばいい。
まぁ、そうなったら本格的に魔王ルート突入なわけだが……。
「キング、女神様の神殿に〈空間転移〉」
神殿に行くと女神様が出迎えてくれた。
「りゅうたろうちゃん、キングさん、大丈夫でしたか!?」
「……」
うん、まぁ、いつも通りである意味安心したわ。
「ほかの神様達は?」
「泉の所に集まっています。まだの方もいますけど」
聖域のはずの泉も今やすっかりお馴染みの場所だ。
「お、来たか」
「元気でおったか?」
「神を待たせるとはの」
海神様、農耕神様、火の神様。
知り合い(?)の神様しかいない。
んー?
何か、思っていたのと違う面倒事を押し付けられそうな気がしてきた……。
「すまない、遅くなったようだねぇ」
「?」
ほかにも誰か……。
振り返ると、キジトラ白の小柄な猫がいた。
え、ミーコさん……?
いや、違うな。
だって、ミーコさんにしっぽ八本もなかったし!
いや、二股ぐらいなら別れていても驚かないけどな!
「どこ行ってたんだよ、猫神」
「ちょいと、野暮用でねぇ」
猫神様!?
「あ、あの、ラーラ達の事を知りませんか!?」
思わず神様達の会話に割って入ってしまった。
あまりいい事ではないのは分かっているが、ラーラ達が無事かどうかを確かめたかった。
「あの子達ならあたしが保護しているよ」
狙われていたからねぇ、と猫神様が呟く。
そうか、無事なら良かった。
「それにしても」
猫神様が目を細める。
「あの泣き虫が大きくなったもんだねぇ、つかさ」
「…………」
やっぱりミーコさんなの!?
いや、でも、さっき猫神って……。
どっちだ!?
「え、えーと、ミーコさん……?」
「ああ、こっちで会うのは初めてだったかい?」
ころころと猫神様(ミーコさん?)が笑う。
「時折、様子はのぞいていたんだけどねぇ」
「……やっぱり猫神様なの?」
「まぁ、そうだけど、ミーコでいいよ」
気に入っていた名前だったし、と本人(本猫? 本神様?)が言うので、ミーコさんと呼ばせてもらう事にした。
「まずは、あたしの事から話しておこうか」
違う世界を気まぐれに行き来するミーコさんは、十数年前にたまたま私の家にいたらしい。
まぁ、神様には一休みするくらいの事だったらしいが。
確かに、少しというか、だいぶ猫離れした猫ではあったが、まさか神様だったとは……。
あれ?
「こっちの世界に転生させてくれたのって、ミーコさんなんだよね?」
「ああ、そうだよ」
目の前で猫をかばって車にはねられたのがあの時の子供だったとはねぇ、とミーコさんはやれやれという風にため息をついた。
「……運命かと思ったよ、皮肉な事に」
「あいつが聞いたら複雑だろうな」
海神様が笑って言った。
「?」
何の話だ?
ちらりと女神様を見ると、私と同じように首を傾げていた。
「説明をした方がいいじゃろう、猫神」
「ここまできたら、知っておくべきではないかの」
「そうだねぇ」
ミーコさんはじっと私の顔を見た。
「まずは、この世界について話しておこう」
「あ、うん」
「この世界のほかにもいくつもの世界があって、それが並び、絡み合い、互いに影響を及ぼしあっているんだよ」
んー?
つまり、あっちやこの世界のほかにも別の世界があるというわけだな。
まぁ、猫神は色々な世界を行き来しているって事だったし、不思議な話でもないか。
「この世界は特に影響を受けやすくてねぇ、別の世界から迷い込んでくるもの達もいるのさ」
ああ、真珠国とかか。
「エルフやドワーフも、元は違う世界の住人だったのじゃ」
「それと、魔導の塔の連中もだな」
…………は?
いや、エルフとかは分かるような気もするけど。
魔導の塔が異世界から来ていた!?
「最初は元の世界に戻るための方法を探していたらしいんだがな……」
海神様がため息をつく。
「いつの間にか、手段や目的が歪んでしまったらしい」
ぽかんとしているところをみると、女神様も知らなかったようだ。
ふるき神々しか知らないという事か。
「わらわは違う世界のもの達を面白いと思ったが」
火の神様はドワーフ達の住む火山都市ガーネットに本殿があるし、そう言うのも分かる気がする。
「だが、それが気にくわんという神もおるのじゃ」
「……」
みんな好きで来たわけでもなさそうだし、そんな風に思われても困るだろう。
まぁ、神様にはこっちの気持ちとかはどうでもいいんだろうけど。
「今回の騒ぎも、元はそれが原因での」
「!」
まさか、黒い霧はどこかの神様のせいだったのか!?
「全てを、元に戻したいらしい」
そう言って、ミーコさんはやれやれという風にため息をついた。
「それ、誰なんですか……?」
一瞬、神様達は目を合わせた。
「運命神だよ」
運命神……って、確か、山岳都市オニキスにさびれた神殿があったよな?
何だっけ……。
「『全て、運命だと思って受け入れろ』……?」
いやいや、言っている事とやっている事が違いすぎやしませんかね!?
しかも、元に戻すって言いながら村を魔物に襲わせてどうするんだよ!
「暴走していると言えば分かりやすいかのぅ」
農耕神様が困ったような表情を浮かべている。
「言っている事は前から変わっておらんのじゃが、手段を選ばんようになってしもうた」
……まさかとは思うが。
「真珠国の御神体や、エルフ達の虹雲の卵が盗まれたのは……」
「あやつがそそのかしたんじゃろうな」
やっている事がメチャクチャだろ!
いや、待て。
守護するものを奪ってから、黒い霧で魔物をおびき寄せるつもりだったのか?
じゃあ、何で普通の村が魔物に襲われた……?
「今じゃ、この世界の半分は異世界にルーツを持っていてねぇ」
まさか、それを全滅させるつもりだった……!?
「すでに、やつは《ことわり》を書きかえてしもうたようじゃからな」
そう言って、火の神様はため息をついた。
「《ことわり》って何の事ですか?」
「分かりやすく言えば、運命神の書いた筋書きってところだな」
私の質問に海神様が答えてくれた。
んー?
運命神にはこの世界の未来を決める事が出来る、という力がある。
そして、世界の半分を滅ぼそうとしている……。
うん、分かった。ここまでは理解した。
多分、前にラーラ達が言っていた「《ことわり》をはずれたもの」とは、運命神にとって滅ぼすべきものという意味なのだろう。
おそらく、ラーラ達の村は違う世界にルーツを持つのだ。
〈さきみ〉の力を持っているラーラには未来が見える。
だから隠れて住んでいたのか。
「神様達でどうにか出来ないんですか?」
私の言葉にミーコさんは顔をしかめた。
「運命神が書きかえてしまったようだからねぇ」
「神同士が干渉すると、力が大きすぎての」
「ほかの世界ごと消滅しかねんのじゃよ」
つまり、手の出しようがない……?
「だから必要だったのさ」
そう言って、ミーコさんはじぃっと私の方を見た。
いや、ミーコさんだけではない。
海神様も農耕神様も火の神様も、みんな私の方を見ている。
まさか……。
「猫が」
……………………。
やっぱり、メインは猫だったのかよ!!




