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一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがヤバすぎた。改訂版  作者: たまご
第六章 消えた村。

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第四十五話 霧と魔物。

 仕方ない。

 福助の事はいったん置いておくとして。


 ほかの冒険者の報告書を確認するため、私達はターコイズのギルドに戻った。

 よし、久しぶりの事務処理スキル発動!

 ……。

 …………。 


「これは……」


 そこには、目を覆いたくなるほどの惨状が記されていた。

 破壊された家。

 踏み荒らされた畑。

 食い散らかされた死体。


 ほかの冒険者達が向かった村はそのほとんどが全滅していた。

 数少ない無事だった村は盗賊に襲われていたので、冒険者達が退治したという事だった。

 つまり、魔物に襲われた村は全滅しているという事だ。


「……?」


 私が調査に向かった村は全て無事だった。

 何が違う?


 肩乗りサイズのりゅうたろうが、報告書の端にちょいちょいとじゃれ始めた。

 退屈してきたらしい。


「りゅうたろう、ダメだよ」


 ……そうか、猫だ。

 私達とほかの冒険者では、移動速度が違う!

 最近はキングの〈空間転移〉ばかり使っていたから忘れていた。

 普通は馬車などで移動して、そのあとは徒歩で移動する。

 私達は依頼を受けたその日に村まで移動できる。


 ……ほかの冒険者達は間に合わなかったのか。

 いや、待て。

 どうして私達は間に合った……?


 移動速度の事はともかく、依頼が出るまで時間がかかったはずだ。

 その間に魔物が襲ってこなかったとは考えにくい。

 実際、私達が最初に調査に向かった村は大勢の怪我人が出ていた。

 冒険者でさえ手こずるような魔物の群れに、村人が数週間も持ちこたえられるか……?


 確認してみるか。

 報告書を片付け、ギルドを出た。

 入り口で調査の依頼から帰ってきたらしい冒険者達とすれ違った。

 みんな、疲れきった表情を浮かべていた。


「……」


 この様子では、また、間に合わなかったのか。

 全ての国や都市で同じような事が起こっている。

 ラーラ達の行方も分からない。

 ……落ち着け。

 一度に全てを解決するのは無理だ。


「キング、〈空間転移〉」


 今、出来る事をしなければ。






「あ、《竜殺し》の……」


 私達を見ると村の人は笑顔になった。


「……」


 猫の人の方がましだったと思う日が来るとはな。

 まぁ、いい。


「魔物の件で確認したい事がありまして」


 人を集めてほしいとお願いした。

 すると村の人達が声を掛け合ってくれ、狩りや近くの街の市場に商売で出かけている人達をのぞいて、ほとんどの人が集まってくれた。


「お聞きになりたい事とは何でしょう?」


「魔物が出たのはいつ頃ですか?」


「えーと、あれは確か……」

 

 村の人達が顔を見合わせる。


「最初に見かけたのは、あなたが来てくれた日より二日くらい前です」


 なるほど。

 二日くらいなら、この村には柵があるし持ちこたえられても不思議ではない。


「連絡が取れなくなったのはもっと前ですよね?」


「それは霧が出て村の外に出られなくなったせいで、魔物が理由ではなかったので……」


 やはり霧が出ていたのか!

 詳しく話を聞くと、霧が出たのは魔物が出る数週間前の事だったらしい。

 触れた村人が寝込むようになり、みんな村の外に出られなくなった。

 霧がようやく消えてほかの町に救助を求めに行こうとしたら、魔物の群れが村を取り囲んでいたという事だった。

 やはり、あの霧は《よくないもの》だったか。

 そういえば寝込んでいる人達もいたな。


 んー?

 よつばが〈解除〉出来なかったのに、霧に触れて具合の悪くなった人にはチャビの〈回復〉は効果があった。

 霧そのものには、そこまで人を害する力はないという事なのか?

 霧は魔物をおびき寄せるためのもの……?


「霧は村の中には入ってこなかったんですか?」


「ああ、それはオババのおかげです」

「一昨年亡くなった呪い師のオババが、自分がいなくなったあともこの村を守れるようにと」


 村をぐるりと囲むように、まじないをかけてくれたのだそうだ。

 柵は元々そのまじないを守るために作ったものだったらしい。


「そのおかげで、霧は村の中には入ってきませんでした」

「助けが来るまで魔物も防げましたし、オババには感謝しています」


「……」


「もちろん、あなたにも大変感謝しています」


 黙りこんだ私に、村人達は慌てて言った。


 そのオババがどのくらい力のある呪い師だったかは分からないが。

 少なくとも、あの霧は結界のようなものがあるところには入ってこれないという事だ。

 ラピスラズリや翡翠の森との事を合わせて考えれば、ほぼ間違いないだろう。


 やはり、霧そのものにはそれほど力はないのかもしれない。

 ただし消す方法は限られているという事か。

 そして、触れたものは寝込み、霧が消えた頃に魔物が現れる。

 ……つまり、魔物に襲われた村はなすすべもなく蹂躙されたという事か。


「……」


 ギルドに早く報告しなくては。

 霧が出る限り犠牲者が増え続ける!




 ターコイズのギルドに戻って報告すると、受付のお姉さんは顔色を変えた。


「黒い霧が魔物を引き寄せる……?」


「多分だけど」


 私が調査に向かった村以外は確認が取れないが、おそらく間違いないだろう。


「ギルドマスターに報告を……」


「大丈夫だ。聞いていた」


 ここのギルドマスターはいかついおっさんだ。

 現役冒険者の頃は巨大な斧をぶんまわして戦っていたらしい。


「職員に徹底通知! 非番の連中も呼び出せ!」


 ギルドマスターの言葉に、職員さん達が動き出す。


「よそのギルドに至急連絡を!」

「転移魔方陣、使用できます!」

「近くの町には早馬を使え!」

「緊急以外の依頼、一時差し止めします!」

「村の調査を優先させろ!」


 私はあっけに取られて、職員さん達の仕事ぶりを眺めていた。

 ギルドマスターはにかっと笑ってみせた。


「これは俺達の仕事だ。まかせろ」


 振り返って指示を続ける。


「結界を張れるやつに声をかけておけ!」

「治癒師、手配します!」


 さすがに大陸一規模の大きいギルドだ。

 無駄な動きをしている人は誰もいなかった。

 もっとも、それだけこのような事態に慣れているという事でもあるが。


 何かあった時のために、私達はしばらく待機しておいた方がいいだろう。

 ……そうだ。

 今のうちに猫神様の神殿に行っておくか。

 ターコイズには確か小さな神殿があったはずだ。

 ギルドの職員さんに一声かけ、私達はその場を離れた。


 街の中心部から少し離れた場所に猫神様の神殿があった。

 ここでもやはり、猫の置物がたくさん供えられていた。

 私は小さな猫の絵をお供えした。

 屋台で見かけて、昔飼っていたミーコさんに似ていたから、つい買ってしまったものだ。

 売っていたお兄さんが猫神様の加護があるよ、と笑いながら言っていた。


 ラーラ達が無事でいますように。

 それから。


「ラーラ達の行方を知っていたら教えてください」


 そう言ってぺこりと頭を下げた。

 気まぐれに違う世界を行き来しているという猫神様が、この世界にいてくれればいいが。

 たくさんの祈りの中から、私の声が届く事を祈るしかない。




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