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一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがヤバすぎた。改訂版  作者: たまご
第六章 消えた村。

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第四十四話 消えた村。

 こうなったら力ずくだ。


「福助、全力で〈風魔法〉!」


「にゃ!」


 吹き飛ばしてやる。

 だが、風で吹き飛ばしたはずの霧は一瞬薄くなるだけで、またすぐに元の状態に戻ってしまう。


「福助、もう一度〈風魔法〉!」


「にゃ!」


「よつば、〈解除〉!」


 霧が薄くなった一瞬によつばに指示を出す。

 よつばが前足をちょいちょいと動かすと、霧は薄くなったままの状態をキープした。


「完全には消せないのか……」


 だが、何とか通り抜けられそうだ。

 念のため福助達をキャットハウスに戻し、私は布で口と鼻を覆った。

 霧の中を一気に駆け抜ける。

 霧に触れた瞬間、ねっとりとした嫌な感じがした。

 おぞましいとさえ感じるほどだった。


 霧を抜けると、そこはごく普通の光景だった。

 ただ、人の姿だけが見当たらない。

 畑仕事の途中だったのだろうか、農具が乱暴に放り出されている。

 近くの家をのぞくと切りかけの野菜があり、テーブルには食器が並べられていた。


「せり、〈気配察知〉」


 りゅうたろうにも大きくなってもらい、何かあった時に備える。

 せりはぴくぴくとひげを動かしていたが、やがてしょんぼりとしっぽをたれた。


「誰もいないの?」


 荒らされた様子もない。

 魔物に襲われたわけでもなさそうだ。


 長老の家ものぞいてみよう。

 女神様の加護がある猫の置物は長老の家にあると聞いている。

 だが、長老の家もほかと同じだった。

 荒らされているわけでもなく、ただ、人だけがいない。


 奥の棚の前でせりが立ち止まった。

 とんとん、と地面を叩いて私を振り返る。


「どうしたの?」


 のぞき込むと、粉々になった何かの破片が散らばっていた。

 これ、まさか、猫の置物……?

 そうだとすれば、やはり何かあったのだ。

 女神様に助けを求める間もなく。


 村人はどこに消えた?

 あの霧はいったい何だ?


「にゃあ!」


 せりが珍しく大きな声で鳴いた。

 ん?

 せりの前に小さな動物の足跡があった。

 これは、猫の足跡……?

 りゅうたろうは大きくなっているし、見つけたものはせりの足跡よりも小さい。


 この村には家畜の鳥はいても猫はいなかったはずだ。

 結界があるから動物が迷い込む事もない。

 そして、せりが反応したという事は。


「この足跡が関係ある……?」


 いや、待て。

 あの時、この村の人は何て言っていた?

 ラーラの予言は確か……。


 《九つの猫の魂が救ってくれる》


 うちの子達は八匹だったから違うと言ったけど、なら、これが九匹目の猫……?

 だとしたら。


「ラーラ達は無事かもしれない」


 もう一匹の猫が助けにきた可能性が出てきた。


「せり、この猫の気配わかる?」


 せりはふんふんと足跡の匂いをかいだ。

 しつこいくらいにかいで、それから首を傾げた。

 なんだか不思議そうな表情をしている。


「……?」


 どういう意味だ?

 ただ、気配を追う事は出来ないようだった。

 んー?

 せりが無理なら……。


 その前に女神様に連絡しないと。

 心配してるだろうし。




『誰もいないんですか……』


 私の話を聞き、女神様は言葉を失った。


『私の結界も加護も意味がなかった……?』


 泣きそうな声だった。


「落ち着いて!」


『でも……』


 ラーラ達は無事でいる可能性がある。

 あの足跡の持ち主が助けに来たのなら。


「女神様の力があったから、それまで持ちこたえのかもしれないでしょ!」


『つかささん……』


「これから翡翠の森に行ってくる」


 エルフ達が住む翡翠の森。

 その長の娘であり、〈とおみ〉の力を持つみうなら何か分かるかもしれない。


「何か分かったら連絡する」


『はい……』


 いつもの元気がない。

 ……この先、もし、彼女の守護するクリスタルの人々に何かあった時、女神様は耐えられるのだろうか。


 オパール王国で会った農耕神様の事を思い出した。

 海神様や火の神様はふるき神らしいから、色々な事を見てきただろう。

 だが、それらを全て飲み込んで神様達は笑ってみせるのだ。


「……」


 私が口を出すべき事ではない。


「キング、翡翠の森へ〈空間転移〉」


 私が今しなければならないのは、ラーラ達を探す事だ。






「つかさ、どうしたの? 今日は遊べるの?」


 突然きた私達に驚きながらも、みうは喜んでくれた。


「ごめん。今日は頼みがあって……」


 不意にキャットハウスからせりが出てきた。

 耳を伏せ、毛を逆立て、牙をむいている。

 〈気配察知〉だ。

 しかも、最大級の警戒をしている。


「何、これ……」


 せりと同じ方向を向いていたみうが顔をしかめた。

 深い緑色をしていたはずのみうの瞳が、金色に光っている。

 もしかして、これが〈とおみ〉の力なのか?


 みうの父親であるエルフの長が走ってきた。


「精霊達が騒いでいる。みう、何が見える?」


「真っ黒な何かが、《よくないもの》が、ここに来ようとしている……」


 真っ黒って、まさか……。

 ほんの一瞬の出来事だった。

 翡翠の森を真っ黒な霧が覆った。


「あれに触っちゃダメ!」


 私が叫ぶと、みう達は驚いたように振り返った。


「何か知っているのか?」


「何かは分かりません。ただ、《よくないもの》だとしか……」


 福助やよつばのスキルで薄くなった霧でさえ、ひどく嫌なものだった。


「うん、あれは危ない」


 みうが頷く。

 それから、私を見て笑った。


「大丈夫だよ。この森は精霊達に護られているから、悪いものは入ってこれないの」


 それで、黒い霧は翡翠の森を取り囲むようになっているのか。

 ……もしかして、ラピスラズリは女神様の結界があったから。


 そこまで考えて、はっとした。

 なら、女神様の結界も精霊の加護もない場所はどうなった?

 連絡の途絶えた村は?

 ほかの冒険者達が、魔物に襲われて村が全滅したようだと報告していたが。

 もし、黒い霧に飲み込まれたのだとしたら?

 しまった。

 ほかの冒険者達の報告書も確認しておくべきだった。


「虹雲がもう少し育っていればよかったのだが」


 長の言葉に我に返った。


「どういう意味ですか?」


「虹雲の降らす雨は《よくないもの》を浄化できる」


 しかし、まだ孵ったばかりの虹雲にそこまでの力はないらしい。


「なら、猫達に霧を薄くしてもらえば何とかなりますか?」


「おそらく」


 長が頷いた。


「猫達はすごいんだよ!」


 みうが目をきらきらさせて言った。


「だから、大丈夫」


 せりを見ながら、みうがにっこりと笑った。

 福助のまわりを何かきらきらしたものが漂っている。


「風の精霊達も力を貸してくれるようだ」


 なら、おもいっきりいこうか。


「福助、全力で〈風魔法〉! 霧を吹き飛ばして!!」


「にゃ!」


 福助が張り切って鳴いた。

 ごおごおと音を立てて風が巻き上がる。

 精霊達の力を借りているせいか、いつもよりさらに激しい。

 森を覆っていた霧が吹き飛ばされていく。


「よつば、〈解除〉!」


 タイミングを合わせて、よつばに指示を出す。

 よつばが前足をちょいちょいと動かすと、黒い霧はほとんど消えてうっすらと残っている程度だった。


 そして、虹色に輝く雲が森に雨を降らせた。

 雨に当たった霧は溶けるように消えていった。  

 空気が爽やかだ。

 気分もすっきりしている。

 ……マイナスイオンみたいな効果もあるのかな。


 長の話では虹雲は徐々に成長し、やがて森全部を覆うくらい大きくなるのだそうだ。

 そうなると、《よくないもの》は近付く事すら出来なくなるらしい。

 ただ、そこまで大きくなるのにはあと百年近くかかるという事だった。


「そういえば、頼みって?」


 みうの言葉に、ここに来た本来の目的を思い出した。

 状況を説明し、ラーラ達の行方を探してほしいと頼んだ。


「今、見てみるね」


 みうの瞳が金色に光った。

 やがて目を閉じ、みうは小さく首を振った。


「ダメ。見つからない」


「……」


「普通なら残っている気配くらい見えるんだけど……」


 せりの〈気配察知〉でも、みうの〈とおみ〉でも、気配さえ追えないという事か。

 ラーラ達はどこに消えた?

 手がかりは猫の足跡だけだ。

 ……猫神様を探すか?

 猫がからんでいるなら、それが一番確実だが。


「つかさ」


 長に声をかけられ、我に返った。


「風の精霊達が、福助と共に行きたいと言っている」


 …………え?


「気に入ったらしい」


「精霊達は、気に入ったエルフや人間と契約を交わすんだよ」


 みうがにこにこして言った。


「え、えーと、契約するとどうなる、のかな……?」


「魔力が増幅され、精霊達が常に力を貸してくれるようになる」


「…………」


 いや、いや、いや。

 今でさえ、あの威力ですよ!?

 これ以上はムリ! 

 だって、福助だし!!

 それこそ、うっかり世界を滅ぼす未来しか見えん!


 きらきらしたものが福助を包み込み、まばゆい光を放った。

 風の精霊達は勝手に福助と契約を結んでしまったようだ。

 人の話を聞かんか、バカ者!

 魔王ルートが増えてしまった……。

 ラーラ達を探さないといけないのに、何でこうなるんだよ!?





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